匂いのいい花束。ANNEXE。

祝福の谷の修道院の中庭で思う事。

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拝啓……Aさま。

その後如何お過ごしですか?先日はどうもありがとう。
お互いに映画の話しになると止まらなくなってしまいますね。
後ろ髪を惹かれながらAさんが最後に残した質問をあれこれ考えてみました。

「ブノワ。さんはトリュフォーはお好きですか?」

答えは残念ながら「No」です。
幾つかの作品は非常に好きですし、僕の青春時代に観た宝物もあります。
僕のトリュフォーは「アメリカの夜」「終電車」「黒衣の花嫁」なんです。
僕は、所謂「ヌーヴェル・ヴァーグ」には興味がありません。
単に、映画を観始めた高校時代にトリュフォーの全盛期が重なっただけ。
当時、次々とトリュフォーの新作がロードショウ公開されました。
そんな中で観た「アデルの恋の物語」は強烈でした。
次第に狂気へと彷徨って行くイザベル・アジャーニも好演でしたが、
丁度、映画の魅力に取り憑かれ、年間に250本の映画を観まくってた頃です、
見る物全てが身に付くような柔軟性を持った年頃に観た「アデルの恋の物語」。
観終わった後、呆然と会場の「ガスホール」から出て来た覚えがあります。
以後、僕のトリュフォーは、彼のキャリアの後半を一緒に生きて来ました。
ですから、ヌーヴェル・ヴァーグとは全く接点がなく、
僕はDVDで映画を極力観ない方針なので、
今だにトリュフォーのベストは知らないと言う事になります。

かれこれ20年くらい前になるでしょうか、まだバブルの余韻がギリギリ残る頃、
友人と一緒に写真家ジャンルー・シーフのオリジナルプリントを買う時の事。
最後まで、どちらにしようかと迷ったのは、トリュフォーの肖像写真と、
悪戯少年が教室で先生に叱られている2枚の写真でした。
小雨降るシャンゼリゼーのベンチに腰掛け、黒い傘を差したトリュフォーが
煙草をくわえ、カメラを持ったジャンルー・シーフを斜め後ろに振り返る構図……。
結局、トリュフォーの肖像写真を選ばなかった理由は、
彼の事を取り立てて好きではないと言う一点のみでした。

今日はトリュフォーの忌日です。
これからの残りの人生は、少し昔を振り返って見て、映画の歴史、及び
トリュフォーの初期の作品を観てみるのもいいかもしれませんね。
DVDはイヤなので、どこかの名画座で特集してくれると有難いのですが……。
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そうそう、僕のイメージは書いた通りですが、
仲のいい友人で、トリュフォーと言えば「エッフェル塔」と言う変わり種がいます。
何でも、最後の作品「日曜日が待ち遠しい」で、
主演のファニー・アルダンがエッフェル塔で人を殴るシーンがあるそうなんです。
僕も「日曜日が待ち遠しい」を観ましたが全く覚えていず……。
人によって見る観点が違う物だと感心しきりですが、
以降、友人はエッフェル塔フェチ、狂気のコレクターと化し、
家中、大小のエッフェル塔が乱立しているそう(笑)
まぁ、パリのお土産を選ぶ時は簡単でいいんですけど、
お土産を開けた時の友人の奇声がとってもコワイです……。
セーヌを挟んだ対岸のシャイヨー宮から見たエッフェル塔。
標準レンズでは満月が入らず。苦肉の作でペンジュラムです(笑)

大きい赤い薔薇の写真は、今回のパリ旅行の時に足を伸ばした南仏は、
アヴィニヨンを河一本隔てた隣の小さな街、ヴィルヌーヴ・レザヴィニヨンにある
「祝福の谷の修道院」の小さな小さな中庭で撮影した一枚です。
赤い薔薇は「Victor Hugo」。ハイブリッド・パーペチュアルにも
同名の薔薇がありますが、こちらはメイヤン作出のハイブリッド・ティー。
「アデルの恋の物語」の原題「L'Histoire d'Adele H」の最後の「H」は、
アデルの父親であるヴィクトル・ユーゴーの頭文字「H」になります。
そんな訳で、ちょっとトリュフォーの事を思い出した南仏の午後でした。


敬具

2005年10月21日


ブノワ。


[Francois Truffaut (1934~1984)]
[La Nuit Americaine/映画に愛をこめて アメリカの夜 (1973)]
[Le Dernier Metro/終電車 (1980)]
[La Mariee etait en Noir/黒衣の花嫁 (1968)]
[L'Histoire d'Adele H/アデルの恋の物語 (1975)]
[Vivement Dimanche !/日曜日が待ち遠しい (1982)]
[Isabelle Adjani website Japan/Isabelle Adjani (1955~ )]
[Fanny Ardant (1949~ )]
[Jeanloup Sieef (1934~2000)]

[Victor Hugo (HT) Meilland, 1985]
[Victor Hugo (HP) J.Schwartz, 1884]

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by raindropsonroses | 2005-10-21 00:00 | 旅の栞。 | Comments(7)
Commented by Mco at 2005-10-21 02:13 x
ブノワさん、まずはお帰りなさい!・・・今日がトリュフォーの命日でしたか。(モンマルトルのお墓には、いつも赤いバラが手向けてあります。)彼の映画はストーリーは兎も角、わたしは余白や背景の“中流の日常”を垣間見入ってしまいます。「日曜日〜」のあのエッフェル・オブジェ、微妙な大きさと素材感はとても気になっていました(笑)。エッフェル塔が濫立しているブノワさんの友人宅、地震の際は気が気じゃないんでしょうねぇ。アルダン無しでも頭上に・・・
メインカットの古い修道院は石積みの古い塗壁の質感、この小じんまりした中庭、手を入れ過ぎていない赤と少々黄色いバラのクラシックな感じ、良いですね。これまた建物の名前も良です。
Commented by raindropsonroses at 2005-10-21 08:02
Mcoさんへ。
おはようございます。そして、ただいま!
そう言えば、Mcoさんはお墓が好きでしたね?(笑)友人宅のエッフェル塔倒壊は心配していないんですよ、だって、あれって据わりがいいでしょう?その代わり、友人本人が倒れた時につき刺さるのではないかと心配(笑)
戦争や争いが嫌いなトリュフォーは、愛の映画しか撮らないと公言したそうですが、僕にはちょっと女々しく感じられる事がります。その辺が苦手な原因かな……。
この手の石の建造物を見ると、木と紙を愛でる日本との国民性&パワーの違いを痛感します(笑)写真は広角レンズに変えてギリギリ後ろに下がって撮影。それほど小さな中庭でした。

ブノワ。
Commented by しん at 2005-10-21 18:56 x
ブノワ。さん
今頃、写真の整理で大変なのではありませんか?修道院の中庭は
ちょっと無造作な感じの雰囲気がなんだか質素な修道院に合ってますね。でも、名前が裕福の谷なのですね(笑)
Commented by raindropsonroses at 2005-10-21 19:47
しんさんへ。
その通り!ボチボチやって行く積りなんですが、早くやらないとPCが重くてたまりません(笑)この修道院は、創設当時の14世紀にはフランス一大きな修道院だったそうです……道理であんなに歩いた訳だ(涙)

ブノワ。
Commented by harry at 2005-10-25 09:54 x
ブノワ。さん、こんばんは。
昨日、ハリソン・フォードのことを思い出してたのは、こちらでトリュフォーについてブノワ。さんが書かれていたのを読んだせいなんですよ(笑
ワタクシはそれほど多くの映画を観るわけではないのですが、トリュフォーは時々曖昧に甘い感じを覚えます。前に書かれていたテスのポランスキーのように、女性への執着だけで一本映画を撮ってしまうような滅茶苦茶さの方が、好きなのです(笑)
なんてことを思って、ポランスキーの「フランティック」のことを思い出してたら、ハリソン・フォードへ...というわけで。
少しずつ歳をとって他人から「いつも落ち着いてますねぇ」なんて言われる割に、滅茶苦茶ななものに惹かれることが多くなってきた、っていうのはどういうわけなんでしょうね(苦笑
近いうちに、今回の旅行で撮られた写真の中でも「意味不明な一枚」(そういうの、ありませんか?)をピックアップしてみて下さいませ。
Commented by harry at 2005-10-25 09:57 x
あ、すっかり夜の延長のつもりで「今晩は」なんて書いちゃいました(笑
おてんとうさまが眩しいです。。
Commented by raindropsonroses at 2005-10-25 12:42
harryさんへ。
こんにちは!「こんばんは」のせいで、何度も時計を見てあれこれ考えちゃいました(笑)人って色々と連想の輪が広がる物ですねぇ……僕は、「フランティック」→「映画の中に出て来るクラブ、ブルー・パロット」→「パリのなくなっちゃった中華、ロータス・ブルー」で、スッカリ口の中が中華(笑)あぁ、お腹が空いた……。
トリュフォーは一時期、本当に女々しくてイヤでした。彼って、自作以外にも結構、映画に出ていて、容姿から来るイメージもあったんでしょうけどね。
harryさんが、滅茶苦茶な物に引かれるって言うのは、きっと、勿論、分別は持ち合わせているんだけど、どこかで「誰が何と言おうと、いい物はやっぱりいい!」と、言葉は悪いけど「尻を捲る事」が出来るようになったからではありませんか?僕もそう言う所があって、誰が何て言ったって自分の感覚が一番!って、変な自信が頭をもたげる事がありますもん(笑)
「意味不明な一枚」は探して見ます(笑)存在自体が意味不明なので、特に一枚って分けに行くかしら……。

ブノワ。