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匂いのいい花束。ANNEXE。

アンナ・カレーニナ。

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 「トルストイは女を分かっちゃいないわ!」

吐き捨てるように言い放ったのは、車椅子に乗り、
真夏だというのにヒーターに囲まれて豪奢な孤島の別荘で、
伝説の女優フェドーラと暮らすソブリヤンスキー伯爵夫人。
1978年制作、ビリー・ワイルダー監督作品「悲愁」の中の数ある名台詞の内の一つです。

尾羽打ち枯らした映画のプロデューサー、バリー・デトワイラーが、
引退してギリシャの孤島に隠遁している、往年の大女優フェドーラを尋ねて来ます。
何十年も前の昔の一夜のアバンチュールのよしみで、
フェドーラに出演して貰い、一発再起をかけようというのです。
ガードが固く、なかなかフェドーラに会えないバリー、
漸くフェドーラと再会したバリーが知る驚愕の真実と、
映画界の光と闇、名声と美貌に執着する大女優フェドーラの悲しみ……。

幾つもの名台詞が散りばめられ、
女性の心理の裏をかく手袋を使った素晴らしいトリックなど、
全盛時のぐいぐい観客を引っ張るパワーと迫力はないけれど、
ストーリー・テラー、ビリー・ワイルダー面目躍如。
ハリウッドの内幕を描いた「サンセット大通り」と並ぶ、
ワイルダー晩年の渾身の傑作です。

件の台詞は、バリーが漸く自分の脚本をフェドーラに渡すことに成功したのも束の間、
脚本はフェドーラの取り巻きの伯爵夫人に取り上げられてしまいます。
その伯爵夫人に島に呼び付けられ、クソ味噌に脚本の出来を貶されるシーンで、
伯爵夫人が嫌味タップリに言い放ちます。


トルストイは女心を分かっていない。
女が自分の美貌を傷付けるような死に方を選ぶハズがない、
列車に身を投げるハズがないと確信を持って言い放ちます。
バリーの脚本「Snows of Yesteryear」の元は、
トルストイの「アンナ・カレーニナ」だったのです。

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最新の「アンナ・カレーニナ」……観て参りました。
ブノワ。さん大の苦手なキーラ・ナイトレイ主演です。
どうしようかと思いましたが、 近所のシネコンは春休み仕様で、
ガキ相手のアニメとテレビドラマに毛が生えたような映画しかやっていません(苦笑)
チョッと調べたら大好きなジュード・ロウが出ているし、
今年度のアカデミー賞で衣裳デザイン賞も獲っているし……。

衣裳は思った通り素晴らしかったですが、いかんせん、モデルが悪い。
人生、是、全て舞台と言わんばかりの、演劇を意識した趣向を凝らした作り方……。
なかなか楽しめましたが、 ハッキリ言って、やっぱりダメだわ……キーラ・ナイトレイ。
彼女、笑顔が卑屈なのね。優雅じゃない。どの作品の演技も一緒に見える。
少なくとも帝政ロシアに生きた女性、社交界の花には見えないの……。
彼女の個性に合った作品も幾つかありますけどね。
「つぐない」とか「わたしを離さないで」とか。
イヤだイヤだと言いながら、結構、観ている(苦笑)「パイレーツ」シリーズ、
「プライドと偏見」「キング・アーサー」「ラブ・アクチュアリー」……。
でも、アンナ・カレーニナねぇ……チョッと無理じゃないかい?
その昔はガルボやヴィヴィアン・リー、ジャクリーン・ビセットだよ。
巻き髪を結い上げたヘアスタイルもただのグシャグシャの鳥の巣頭に見える(笑)
ジュード・ロウも何もあそこまでヘアスタイルを凝ることないのに。
今回も達者は分かっているんだけど、彼にはもっと華やかな役をやって欲しいなぁ。
ジュード・ロウがヴロンスキーを演ればいいのにね。まだまだイケるのに。数年前なら確実か?
エマニュエル・ベアールに似ているアーロン・テイラー・ジョンソンは、
先日の「アルバート氏の人生」に続く登場。
前作でのアイルランド訛りを駆使した野卑な上昇指向の青年から一転して、
今度は財産持ちのプレイボーイの将校役。
髪を黒髪から金髪に染め、なかなかの力演でした。

かのソフィア・ローレンが今でも心残りだと悔やんでいるのは、
この「アンナ・カレーニナ」と「バージニア・ウルフなんかこわくない」、
生涯、望んでも望んでも演じられなかったことだそう……。


最新の「アンナ・カレーニナ」より、
それを題材にした映画の方が語れるって……やっぱり好きなのね、「悲愁」が。
「アンナ・カレーニナ」の舞踏会のシーンを撮影しているところとか映るし。

 「伝説は続けられなければいけません。」

 「あご髭のガキどもがズームレンズを付けたハンディカメラで映画を撮っている。
  彼等は脚本を必要としないのさ。」

とか、当時の新進気鋭のスピルバーグやコッポラ、ルーカスを揶揄したワイルダーの映画感。
映画に対する愛情がたっぷり染み込んでいるからかなぁ……。
「劇場」という枠を借りて作られた今回の「アンナ・カレーニナ」。
「映画界」という虚構の世界の光と闇を描いた「悲愁」……。
この辺がどうやら僕のツボのようです(笑)


2013年4月3日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2013-04-03 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(4)
Commented by mChouette at 2013-04-03 10:13
おはようございます。
早速のメッセージありがとうございました。「アンナ・カレーニナ」それから「悲愁」持ってまいりました。
アーロン・テイラー・ジョンソン…予告編の時は、ちょっと軽くないかい?、キーラも貴族の気品には欠けるんではないかい?って思っていたけど、トルストイ原作テーマに回帰したとも言える本作では、だからこれぐらいでいいのねって納得。陶器のお人形で良かったですものね。ジュード・ロウは私は彼にはさほど華も色気も感じなかったから、シャーロックのワトソン役とか本作の彼なんかみていると一皮向けたジュード・ロウと好感持ってるし、これからの彼がどんな役を演じるのか楽しみでもあります。
「悲愁」でフェドーラが「映画が小さくなったのよ」「今じゃスターは存在しないわ」って言うセリフが印象的だったわ。美しい俳優は次々と現れるけど、その存在だけで観る者を魅了させ、銀幕を圧倒するほどのオーラがある俳優がほんといなくなりましたよねぇ。劇場に行くワクワク感が薄くなってるこの頃です。
では、では。
Commented by コビトカバ at 2013-04-03 15:42 x
CMで流れてるやつかな、キーラナイトレイが出てるから
映画自体に興味もってなかったです(笑)
どこか、「自分はとても美しいのよ」的な匂いのする人だから
嫌味な笑みに見えるのかもしれない~ブノアさんに一票(笑)
Commented by raindropsonroses at 2013-04-04 05:46
chouetteさんへ。
おはようございます。トラックバックとメッセージありがとう!トルストイの陰のテーマ……なかなか伝わりにくいと思いません?「風と共に去りぬ」は良く出来ていましたけど、主演を陰で支える助演の存在なのかなぁ……。ジュード・ロウはさほどではないんですね?(笑)僕ね、売れる名前って歴然とあると思うのです。彼の名前は大スターになる名前、いえいえ、大スターなんですが、今一華やかじゃない……イギリス人だからかしら?僕の考えでは彼がシャーロック・ホームズだしヴロンスキーなんです。「コールド・マウンテン」の時、そろそろ自分も主役でこういう役やってもいいかなって言っていたのが印象的です。アーロン・テイラ=ジョンソンってこの所売れていますねぇ……「サベージ」?楽しみにしているんですよ。映画ファンの心を鷲掴みに擦る台詞って沢山ありますね(笑)ビリー・ワイルダーの映画ってそんなセリフの宝庫。彼、シニカルですからそうなのかな?70年代から隣りのアンちゃんネーちゃんがバンバン映画に出るようになりましたもんね。映画スターは美男美女である必要がなくなった……無名の宝石を探し出して応援するのが僕の楽しみであります(笑)

ブノワ。
Commented by raindropsonroses at 2013-04-04 05:50
コビトカバさんへ。
おはようございます。好みは人それぞれですが、やっぱりなんで売れているか僕には全く理解不可能の役者が沢山います。ニコラス・ケイジとかね(笑)「アダプテーション」なんか地獄でした。メリル・ストリープを見に行ったのに、何と2役のニコラス・ケージが常にスクリーンに映っている(苦笑)ヒドい時はCGで同じ画面に2人のニコラス!死ぬかと思いました(怒)でも、先日、電車の中で小学生が「ニコラス・ケイジってカッコ良くね?」って……彼等の将来の美的感覚が心配です(爆)

ブノワ。