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匂いのいい花束。ANNEXE。

夢にまで見た三水館。

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 「そこのモデルみたいに綺麗なおねえさん!」

千本桜祭りで賑わう上田城址公園に若い男の声が響き渡った。
ここで振り向くと、まるで僕に向かって言われたと勘違いされても困るので(笑)
その声から想像するだけなのだが、お好み焼き、金魚すくい、綿飴……。
出店の若い威勢のいいテキ屋のお兄さんだろうか……。
その掛け声に、一瞬、僕ら一行の時間が止まる……僅か1/2秒ほど、
息を飲んだり眉がピクリと上がったり、分かる人にしか分からないほんの一瞬の出来事……。



チラリと横目でBMを伺う……。
しっかりと耳に響いたその台詞に形のいい小鼻がピクリと膨らむ。
彼女は名家のお嬢……タクシーを拾い、住んでいる街と名字を告げると、
ピタリと玄関先に車が横付けになるほどの名家だ。
お茶、ヴァイオリンを嗜み、社交ダンス界の華と謳われ、
居並ぶジジイを転がしまくったとか転がさなかったとか(笑)
かの国の喜び組の面々が、束になって掛かって来ても敵わない美貌です。
このパリで知り合ったBM、知らない内に「Gメン75」の藤田美保子か中島はるみばりの、
ツバ広の黒い帽子を冠り、全身黒づくめの衣裳で満開の桜と妍を競っています。
薄墨と黒……完璧に計算され尽くしたファッション。


そっと前を歩いていたKFの後ろ姿を観察する……。
勿論、その台詞が自分に向けられたことは重々承知の上で完全無視(笑)だっていつものことだから。
いつもピンとしている背筋が、若干、さらに伸びたような気がする……。
後ろ姿で確認は出来ないものの、向かって右側の眉がピクリと上がっていたハズだ。
彼女とは長い付き合いだ。かれこれ25年以上にもなるだろうか。
ミレニアムのパリにも一緒に行ったし、いつどこに行くにもいつも一緒。
スラリと背が高く、雰囲気のある美貌は、外国でも日本でも常に男性陣の注目の的。
彼女を見る男たちの釘づけの視線……まるで「エクソシスト」の悪魔に取り憑かれた、
リーガンになったのではないかと思うほど彼女を追って首だけ回る(笑)
期待に満ちた視線、そして、隣にいる僕を見ると熱いガン見の眼差しが一気に冷め、
萎んでいくのを見るのはなかなか楽しいものです(笑)


2人は何事もなかったように歩を進めます。

 「ホラ、2人のことを言っているんじゃない?」僕の問い掛けにも、

 「えぇ〜何のことですかぁ?あぁ、さっきの?イヤだ、違いますよ!
  きっとBMさんのことよ!」
 「違いますよ、KFさんのことに決まってますよ!」
 「それとも他の方のことじゃありませんか?」

当然、自分達のことと意識しつつもお決まりの会話を楽しんでみる(笑)
隣には僕の他、28年来の大親友、恵比寿で美容室を経営するTTが、
一連の出来事を面白そうに観察している。お互いに全く気を遣わない大事な友達です。
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美女2人と大親友、そして僕の4人で信州は鹿教湯温泉の「三水館」を訪れました……。
パリで知り合っただとか、25年も一緒と書くと、何やら曰くありげな関係に聞こえますが、
何のことはない、何でも言える気のおけない大親友なのです。
ただ、傍から見ると2組の仲睦まじい夫婦にしか見えないかもしれません(笑)

憧れだった「三水館」、夢にまで見た「三水館」……。
ご主人にいつのことか確かめたのですが、かれこれ11年前の旅番組を偶然に見た僕は、
宿の佇まいと料理に大感激して携帯電話に名前と電話番号を控えたのでした。

 「三水館に行きたい三水館に行きたい……。」

呪文のように唱えること11年(笑)漸く念願叶っての旅でした。
上田まで新幹線、そこからはレンタカーを借り、
BMがレーサー並のハンドルさばきで早春の信州を飛ばします。
先ずは丁度、見頃の上田城の千本桜を見学に……。
そこで、常日頃、これ以上ないほど舞い上がっている彼女達の、
自尊心をさらに満足させるテキ屋のお兄さんの台詞になる訳です(笑)
それぞれ自分のことと頑なに信じ込み、ウキウキの彼女達と僕&TTを乗せた車は、
昼食の蕎麦屋を探しながら一路、三水館へ。
途中、一か八か入ってみた蕎麦屋「車屋」で美味しい蕎麦を堪能。
さすが信州、蕎麦どころ。青木村の農産物を扱う道の駅で、
クレソン、山葵、長葱、ドライトマト、行者にんにく醤油……。
それから猫へのお土産の高級煮干しを買います。
新鮮な野菜と、美しさを讃えられ、自尊心が満たされた女子2名&僕らを乗せた車は、
喜びでパンパンに膨らみ山間のクネクネ道を抜けて宿に到着です。
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少し早い到着だったにもかかわらず通して戴いた離れの「蔵」の部屋……。
松本の古い蔵を移築したお部屋だそうですが、1階が居間、2階が寝室に改装されています。
古き良き日本家屋とモダンな意匠が微妙にマッチした素敵な部屋でした。
ハァ……11年間、思い続けて良かったぁ(笑)
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暖かな日ざしを浴びて鹿教湯温泉郷を散策し、
それぞれ一風呂浴びた後は冷たく冷えたビールで乾杯です。
夕飯の少し前にロビーに下り、小布施ワイナリーのキンキンに冷えた白ワインでさらに乾杯。
程よく酔いが回った頃、待望の夕飯の時間になりました。
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11年前に偶然見たテレビ番組で一目惚れした理由の内の一つは、
宿の佇まいと書きましたが、もう一つの理由がこれ、春の草鍋なんです。
芹、行者にんにく、韮、片栗、分葱、クレソン、三ッ葉……。
数えきれない程の野の山菜や新鮮な地の野菜。豆腐と一緒に鶏鍋をしてくださいます。
つみれを丸く作って鍋に入れるのは僕の役目。総合鍋奉行はいつもマメマメしいTTの役目です。
お料理はどれも薄味で素材の味を生かした調理法、
草鍋でお腹一杯と溜め息をつきますが、さらに、ミモザ・サラダ、
信濃雪鱒のお造りや焼き物、季節の揚げ物、最後は雑炊……立ち上がれない程沢山出てきます。
食後はロビーでデザートを戴きます。部屋に戻ると日頃の疲れが出たのかバタンキュー(笑)

翌朝は5時に起き、宿の周りを散策、一風呂浴びた後は朝食の時間です。
ご飯を4杯おかわりし(笑)後ろ髪を引かれる思いで宿を後にします。
車を飛ばして玉村豊男さんのヴィラ・デストへ。
庭を散策、ランチを戴いて帰りの新幹線へと車を走らせるのでした。
信州の春は遅いです。まだまだ桜が残る山間はとても素敵でした。
次は秋?秋の名物はキノコの鍋だそうです……。
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最後の写真は超美猫のポートレート。三水館には可愛い猫が3匹います。
柱の傷……いい味を出しています(笑)


2013年4月21日


ブノワ。


 鹿教湯 三水館
 〒386−0322 長野県上田市西内1866-2(信州 鹿教湯温泉)
 Tel:0268(44)2731 Fax:0268(44)2733


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by raindropsonroses | 2013-04-21 00:00 | 旅の栞。