匂いのいい花束。ANNEXE。

プロの仕事。

e0044929_223721100.jpg
拝啓……Eちゃんへ。

その後、ご機嫌如何ですか。そろそろGWのウィーン行きが間近ですね。
Eちゃんの事です、準備万端、既に荷物もまとまっている事と思いますが、
卒業旅行から帰って来たら念願叶ってレストランへの就職。
色々と心配もあるだろうけど、きっと、あれもしたい、これもしたい
胸膨らませる事も沢山ある事でしょうね。僕としては何とも羨ましい限りです。

Eちゃんはお菓子の学校にも行ったくらいですから
将来の最終的な夢はパティシエかな。Eちゃんならセンスもいいし
きっと素晴しいパティシエになる事でしょう。陰ながら応援していますからね!

今回の旅行、ウィーンだけじゃなくて幾つもの街を回るそうですね。
美味しい物を沢山食べて、美術館を観て歩き、地元の人と触れて来ればいいです。
Eちゃんは写真が好きだから、沢山撮って来て僕にも見せて下さいね。
この前の餞別はね、美味しい物を沢山食べられるようにと思ってです。
お土産は一切要りません。もし、気持ちがあるんだったら絵葉書を一枚下さい。
それで充分、大事な旅行の時間をお土産探しで台無しにする事はありません。
それから、一つ、ヨーロッパで見て来るといい物があります。
それは、カフェやレストランの本物の接客の仕方です。
勿論、全部の店が素晴しい訳ではありません。中にはヒドい所もあります。
でもね、優れた接客って何物にも代え難いものなんです。
是非、それを、サービス業一年生のEちゃんに見て来て欲しいんです。

同封した写真は、去年の秋にパリに行った時に泊まったアパートのすぐ近く、
9区の ギャラリー・ラファイエットの間の道、rue de Mogadorを
入ってスグの右側にあるカフェです。非常に清潔なカフェで、
出掛ける際、朝なんかによくカフェを飲んだり簡単な朝食を摂ったり……。
結構、頻繁に使いましたが、後ろ姿の眼鏡のムッシュ、非常にプロなんですよ。
先ず感じがいいのは当たり前。目が合うと軽く微笑む加減も丁度良く
トイレに立った時や、帰る時には必ず一声かけて来ます。
それが何とも自然な感じなんです。日本のファミレスみたいな
マニュアル通りの、それもかなりいい加減でヒドいマニュアル君じゃなくって、
自然に自分の言葉が出て来る……だから、コワいのは人間性も出ちゃいますね。
その時々で、客に合わせて言葉を選ぶ事が出来る……なかなか難しいです。
自分が豊かな生き方をして来た人じゃないと絶対に出来ない事です。
沢山の引き出しの中から、お客、お客に合ったサービスをする……。

それから、前に友人のお父さまに連れて行って貰ったブラッセリーの給仕さん。
僕等5人がそれぞれに頼んだものをメモしながら、しかも、
しっかり、そのテーブルの「今日の金主さん」を意識し、顔を立てつつ、
一つ一つの注文に「それは美味しいですよ」とか「その組み合わせはトレ・ビアン」
「そう、ワインはそれが一番合いますね。さすが、素晴しい選択です」等々……。
別にニッコリとする訳ではないし、若くもないしハンサムでもない。
テキパキと進める作業の中にリズムと、微妙に客をいい気持ちにする
絶妙なテクニックが織り込まれているんです。

サービスに、決まりなんてないんですよ。
お客さんも千差万別、色々なお客がいますからね。
それに可能な限り合わせて最良のサービスをする……難しいですね、接客は。
Eちゃんもサービス業一年生です。本場の本物を体験して来るといいです。

帰って来たら御飯でもしましょうか。絵葉書、楽しみにしていますからね!
  

敬具

2006年4月25日


ブノワ。
[PR]
by raindropsonroses | 2006-04-25 00:00 | 旅の栞。