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匂いのいい花束。ANNEXE。

今年はまさに……沈黙の春。

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拝啓

Yくん、すっかりご無沙汰していますが元気にしていますか。
パリはどんな感じ?さすがに春らしくなって来たんじゃないですか。
2年前に始めて体験した春のパリが懐かしいです。

さて、その時お土産に持って行ったレイチェル・カーソンの「沈黙の春」。
Yくんは一晩で読んじゃったんですよね(笑)日本語に飢えているとは言え
あまりに読むのが早いのでビックリした覚えがあります。
実は僕も、Yくんにプレゼントするために行った本屋で自分の分も含めて
2冊買っておいたんです。先日、それをようやく読み終えました。
化学薬品、農薬が自然界に及ぼす影響を書いたこの「沈黙の春」、
薔薇を育てている僕には非常に重要な本なんですよ。
ご存知の通り、薔薇には数え切れないほどの害虫が付き、罹る病気も数知れません。
今では、減農薬、無農薬の運動が活発になって来ましたが、
一昔前には、薔薇栽培=薬剤散布と言うのが当たり前でした。
僕はどんな育て方をしているかと言うと、以前は必要に応じて
最低限の薬を散布していましたが、ここ数年はスッカリやめてしまいました。
一番大きな理由は、ウチには可愛い猫3匹がいると言う事。
季節が良くなると、バルコニーで一日中自由に遊び回っている猫達。
小さな身体です、薬剤散布の影響は計り知れないですものね。
バルコニーの端っこに真っ直ぐに延びる排水用の溝に溜った水、
お園なんかは、これをピチャピチャ飲みますからね!

かと言って、全く何もしないで害虫や病気を防げる訳ではありません。
皆さん、色々と研究して無農薬で頑張っているみたいですが、
生憎、僕は横着者が面倒臭がりの豪華衣装を着て歩いているようなもの(笑)
もっぱら、害虫を見付けては捕まえては、家の前を走る大通りにポイっ!
直接触るのはイヤですから、くっ付いている葉っぱを最小限に切って
葉っぱごと大通りにポイっ!常に決して自分の手は汚さないのです(笑)
幸いな事に、ウチは物凄く日照時間が長く、オマケに風通しがいいのです。
そんな訳で、ウドン粉病などの被害は比較的少ないみたいです。
同じく薔薇を育てている友人が薔薇を見に来て先ずビックリするのは、
ウチの薔薇がウドン粉病にあまり罹っていないと言うのです。
それでも、品種によっては、毎年、毎年決まって同じ病気に罹るものがあります。
色々と試してみましたが、矢張りどの方法も帯に短し襷に長し、
これと言う決定打は見付かっていません。マメに薔薇を見回り
放って置かずにスグに対処する、この方法が一番いいみたいです。

「沈黙の春」は、一冊丸々、農薬が自然界に及ぼす破壊的な影響について
詳細な実験データを元に厳しく言及しています。
一つ、分かりやすい例を挙げると、日本から渡来したマメコガネを駆除するために
空から飛行機で農薬を散布、その結果、ありとあらゆるものに影響が出て
最後には人間が死ぬケースも出て来た事例が挙げられています。
目に見えないミジンコが化学薬品に汚染され、それを食べた小魚に毒が蓄積され
さらに、大きな魚、さらに大きな魚、最後にそれを食べた人間がどうなるか……。
微生物に蓄積された化学薬品が、自然界の摂理によって、次から次へと
濃く、さらに強力になって動物の体内に蓄積されて行く様は
実験によって立証されていますね。地上に撒かれた化学薬品は、
やがて雨水で流され川に入り、それが最終的には海に流れ込み
それを食べる微生物、それを食べる小魚、さらにそれを食べる魚……。
自然界の連鎖はどこをとっても切り離せるものではなく、
密接に一つの糸で繋がっているのです。夥しい症例を持って告発する「沈黙の春」、
読んでしまったら簡単には薔薇を消毒出来ないじゃないですか。
今の所、僕の対策は、薔薇をマメに観察する事、それしかありません。

今日の写真は、去年の「第7回 国際バラとガーデニングショウ」で撮った一枚。
この時はシンボル・ガーデンに並んでようやく入り、さて写真を……、
そう思った時にオバサマ攻撃にあったと言う訳です。
後ろからどつかれる、足はしこたま踏まれる、カメラを構えていると
さぁ〜ッとカメラの前に立ちふさがる、シャッターを切る瞬間に
ドォ〜んと後ろから押される……怒りのあまり、こめかみに血管が浮き上がり
鼻から熱い怒りの溜め息が出て来ましたが、そこは我慢、我慢、我慢。
皆さん綺麗なものを見ようとなりふり構わず必死なのです。
それならばと、いっその事、撮る瞬間にカメラを動かして撮ったのがこのシリーズ。
ピンボケのアンディー・ウォーホールみたいな一枚です。

ウチの薔薇は花が終わり、これから夏の管理に入って行きます。
飛来するコガネムシ、ウドン粉病はそれほどでもないけれど、
夏の終わりから蔓延する黒星病……これだけは何とかしたいですね。
市販されている薬の中には決定的に効くものはありません。
それならば、いっその事、薬は撒かず、自然に育てようと思うこの頃です。
天候不順で薔薇が思うように咲かず……意味は違うけれど、
今年もある意味で「沈黙の春」でしたね。


敬具

2006年5月27日


ブノワ。


[Rachel Carson (1907~1964)]
[Silent Spring/沈黙の春 (1962)]
[Andy Warhal (1928~1987)]
by raindropsonroses | 2006-05-27 00:00 | 書架の片隅。