綺麗は汚い、汚いは綺麗……。
毎日毎日梅雨らしいどんよりした天気が続きます。
それほど雨は降りませんがが一時の気休めでしょうか?
これから長い梅雨です、Bさん、その後、如何お過ごしですか?
僕は春の薔薇が咲き終わった後、今年は真面目に薔薇の手入れをしています。
雑草取り、お礼肥をあげたり植え替えをしたり害虫を駆除したり……。
やる積りになれば山のように作業はあります(笑)
さて、以前の手紙に、薔薇はいつの状態を見ても綺麗だと書きました。
同じく、濃い色の薔薇が好きな事はBさんもご存じの通りなんですが、
他の色と違って濃い色の薔薇には枯れた後の楽しみがあるんです。
今日、同封した写真はイングリッシュ・ローズの「Othello」です。
かなり前(20年前)の品種で、あまりポピュラーじゃないかもしれません。
今年お迎えし、見事に大輪の花を咲かせました。花が終わった後も、
脇芽をグングン伸ばし、2番花の蕾も膨らみつつあります。
花瓶に差したままスッカリ放って置いたんですが、昨日の夜遅く帰宅。
フと見ると、葉っぱはカリカリに乾燥しドライ状態、
花はそのままの姿でスッカリ紫色に変色しオレンジ色の斑点が出ていました。
もうビックリ!なんて美しいのでしょう!えっ?綺麗じゃないって?(笑)
そうっと持ち上げて匂いを嗅ぐと、既にドライの薔薇特有のすえたような匂い……。
でも、匂いはこの際どうでもよくて、この美しい姿を写真に納めなければ!
傷んだ薔薇、枯れた薔薇を撮る。それが今年のテーマです。
散らないように祈るような気持ちで早起きして撮ったのが一連の写真です。
濃いピンクの花がそのまま紫に退色、撮影されるのを待っていたかのように、
ひとしきり撮り終わるとハラハラ落ちる花弁、その朽ちた姿の美しいこと!
この楽しみは濃い薔薇だけのもの、淡い薔薇はただただ汚くなってしまいますから。
撮影中、呪文のように唱えた「マクベス」に出て来る3人の魔女の台詞、
「綺麗は汚い、汚いは綺麗……」
この場合の「汚い」は「穢い」をあてた方がピッタリだと思うんですが、
主役以外の登場人物の台詞で、これほど有名なものもないけれど、
まさに魔女が愛でる薔薇とはこのような薔薇でしょうか?
大きな鍋にトカゲの尻尾や蛇の目、ヒキガエルの舌、クモの巣などと一緒に
グツグツ煮込むのに似付かわしい薔薇でしょうか?(笑)
または、クリクリと可愛らしい姿が、水を掛けると異常繁殖するギズモ、
変身後のグレムリンの身体の模様みたいにも見えますね(笑)
撮影を終了した途端、バッサリと花弁が全部落ちてしまいました。
こういう瞬間を見られるのもまた薔薇を家で育てる楽しみの一つです。
一番最初の写真が本来の美しい「Othello」です。
どうですか、枯れたものの方が綺麗に見ない事もないでしょう?(笑)
敬具
2006年6月14日
ブノワ。
[Othello (ER) Austin, 1986]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
[William Shakespeare (1564~1616)]
[Othello/オセロ (1603)]
[Macbeth/マクベス ( 1606)]
[Gremlins/グレムリン (1984)]