匂いのいい花束。ANNEXE。

孤独のメッセージ……Sting。

e0044929_6562467.jpg
拝啓

朝夕スッカリ肌寒くなりましたね。Rさん、その後お元気ですか?
先日は長時間のお付き合いどうもありがとう。
別に旅行前に無理矢理、会う必要もないのだけれど、人間、何だか変なもので、
何か決まった事があると、それを基準に考える習性があるようですね。
特に年末の忘年会とかね(笑)でも、本当に楽しかったです!

さて、先日も大いに盛り上がりました、プリティッシュ・ロック!
Rさんと僕が仲良くなる切っ掛けはブリティッシュ・ロック(笑)
今はどこかに消えちゃったY君のガールフレンドだったRさんと僕の友情の懸け橋です。

Rさんはその昔、ロンドンに留学していたんですものね。
ユダヤ人の家族のところでしたっけ?例の「バンド・エイド」の頃。
僕は一睡もせずに家でビデオを録画しながらテレビに噛り付いていましたが、
Rさんは羨ましい事にウェンブリー・アリーナで観たんでしたっけ?
あの頃はいい時期でしたねぇ。Rさんは色々なバンドを聴いていたみたいだけれど、
僕は他には目もくれず「The Police」一辺倒だったんですよ。
特に、リード・ボーカルでベースのスティングだけ追い掛けていました。

スティング……ゴードン・マシュー・サムナー。
今ではスッカリ大御所ですが、当時はツンツンの髪の毛を金髪に染め、
ハスキーで擦れそうに甲高く伸びる声が売り物でしたね。
当時、台頭して来たパンクにレゲエとスカの要素をふんだんに取り入れ、
ステュワート・コープランドの特徴あるドラミングとアンディー・サマーズの刻むようなギター。
タイトな演奏と疾走感溢れる楽曲は非常に魅力的でした。
作詞、作曲は殆どスティングが担当していました。

僕が「The Police」に見事にハマったのは、スティングが作る曲の独特の世界観。
デビュー当時はスバリ一言で「孤独」を歌っていました。一人では生きられない淋しさ、
どうしょうもない寂寥感、大勢の中に居乍らひしひしと感じる孤独を
色々なシチュエーションで描きだす才能に随分とビックリしたものです。
当時、友達が一人もいないと思い込んでいた僕はスッカリ惚れ込み、
明けても暮れてもスティング一色、どこか斜に構えてシニカルなスティング、
これは僕の映画監督の好みとかも一緒で、ビリー・ワイルダーや市川崑など、
都会的な外見の影に隠された毒、皮肉なものの見方に惹かれる所に繋がります。
勿論、人間は一人では生きられないし、知らず知らずの内に誰かに助けられ、
また自分も誰かに必要とされています。だけど思春期の多感な年頃(一応ね!)
自分の殻の中に閉じ籠もっていた頃の僕にはスティングの世界観は強烈でした。

所がある日、「孤独のメッセージ」の歌詞を眺めていて愕然としたんです。

無人島にたった一人漂着し、孤独で孤独で、淋しくて堪らない主人公が
空き瓶にSOSを書いたメッセージを入れて海に投げます。
暫らくして、身も心も孤独に苛まれてボロボロになった頃、
ある日、海岸に行ってみると何千、何百万と言う「孤独のメッセージ」が入った瓶が
海岸に漂着していたと言う歌……孤独なのは君だけじゃないよと言うメッセージ。

何と絵画的なんでしょう!まるで映画のワン・シーンを観るように
現代人の心理を見事に突いた曲に思えました。

以降、スティングと共に成長し(した積もり)レコード、CD、映画、
コンサート……出来る限りで追い掛けて、この目で聴き、体験し、
目で見て来たスティングも昨日で55才。相変わらず少し尖った緊張感を漂わせています。
小雨が降りしきるお台場で初めてスティングのソロを観た時の事は一生忘れないでしょう。
全身、鳥肌もの、何しろ、今の僕を形作ったスティングが目の前にいるんですから。

今日の写真は少し前のスティングの傑作「Fields of Gold」に因んで。
パリから近郊線に乗って終点まで40分、そこからバスかタクシーで20分、
若しくは森の中を散歩がてらに2時間のポール・ロワイヤル・デ・シャン。
ここには広々とした小麦畑と森の中の美術館、修道院跡があるだけです。
「小鳥達のさえずリ」と言う意味の美味しいレストランが一軒ポツリ。
17世紀、イエスズ会と対立した事から教皇に異端扱いされたジャンセニスム。
この神学思想運動ジャンセニスムの中心地だったポール・ロワイヤル修道院。
今は国立の美術館になっている修道院を弾圧し、修道女達を迫害、追放したのは
太陽王と国民に愛され、ブノワ・マジメルが「王は踊る」で見事に演じた
ルイ14世です。美術館入り口付近の小麦色に輝く大地は雨で濡れていました。
7月の収穫前にたわわに実った小麦、小さな赤いポピー……。
傘を差して撮影しながら聞こえてくるスティングの「Fields of Gold」のイントロ。
幸せな内容の曲なのに、どこか寂しげで切ない曲調は
孤独の歌ばかりを歌って来たスティングの面目躍如と言う所でしょうか。

先日、発売された最新作「Songs from the Labyrinth」の完成度の高さ。
一つここにスティングのキャリアの頂点を見る思いです。


敬具

2006年10月2日


ブノワ。


[Sting (1951~ )]
[Message in a Bottle/孤独のメッセージ (1979)]
[Fields of Gold/フィールズ・オブ・ゴールド (1993)]
[Songs from the Labyrinth・ラビリンス (2006)]
[Stewart Copeland (1952~ )]
[Andy Summers (1942~ )]
[Benoit Magimel (1974~ )]
[王は踊る/Le Roi Dance (2001)]
[Louis XIV de France (1638~1715)]
[Billy Wilder (1906~2002)]
[市川崑/Kon Ichikawa (1915~ )]
[PR]
by raindropsonroses | 2006-10-02 07:14 | Sound of music。