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匂いのいい花束。ANNEXE。

スーツケースに一冊……危険な関係。

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拝啓

11月だと言うのに昼間は随分と気温が高いですね。
Uさん、その後、お変わりありませんか?出張はどうでしたか?
僕は相変わらず、平々凡々、十年一日のような生活を送っています。
旅の疲れもぼちぼち取れ普通の生活に戻ったところです。

さて、秋は何と言っても食欲の秋、そして読書の秋!
別に秋の夜長じゃなくても読書は出来るけど、気候的にも秋が一番なのでしょう。
僕は旅行、特にパリに一人で行く時、必ず本を一冊持参します。
昼間歩き疲れて夜遊びの類は一切しない僕、ワインなどを飲みながら
持参した本を読むんです。個人のアパートを借りた場合などは、
その部屋に置いてある蔵書をパラパラやるのもいいものです。

今回の旅に僕が持参したのはラクロの「危険な関係」です。
この本、大好きなんですよ。そのまま映画化されたハリウッド版「危険な関係」も
グレン・クローズとジョン・マルコヴィッチの好演で傑作だったけど、
ジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ主演の現代版や
韓国版、日本版、翻案された作品も枚挙にいとまがありません。
現在ではスッカリ死語となった、「悪徳」「貞淑」等の言葉が持つ響き、
書簡集と言う体裁、この作品を魅力的、傑作にしている要因は沢山あります。
小説の舞台はパリですが、ラクロが軍人としてグルノーブルに
7年間滞在していた時に収集した資料を元に編纂された「危険な関係」。
奸知に長けたメルトイユ侯爵夫人と、まるで惑星と恒星のように
付かず離れ悪巧みに乗る似た物同士のヴァルモン子爵。
二人にチェスの駒のように操られる娘、セシル・ヴォーランジェとダンスニー騎士、
二人のゲームの標的になるトゥルーヴェル法院長夫人。
絡まった糸のような関係が解きほぐされると同時に訪れる悲劇、
悪辣なゲームの先に残された物は?書簡集と言う体裁なので、
各々の心の内がそれぞれの言葉で語られます。擦れ違う解釈、合致しない思惑、
文庫本で上下2冊ですけれど、非常に読み応えのある作品です。

ワインやシャンパンのグラスを傾けながら秋の夜長にパリで読む「危険な関係」、
一日の疲れで眠りに落ちるまでの読書、なかなか乙なものですよ。
今日の写真は昨年の秋に訪れたパリの「郵便博物館」で撮った一枚。
昔はペンとインクで流麗に手紙をしたためていたんですよねぇ。
封筒と言うより、分厚い手透きの紙に書いた手紙を折畳み、糊付の代わりに
熱したワックスを垂らしてスタンプをドンっ!何とも優雅な習慣じゃありませんか。
僕も形だけは真似するんですが、いかんせん内容がねぇ(笑)

今日は「危険な関係」を真似てペンを取ってみました。
返事は結構ですからね。近々、ご飯でもしましょうか。Uさんもお元気で!


敬具

2006年11月15日


ブノワ。


[Pierre Choderlos de Laclos (1741~1803)]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1782)]

[Dangerous Liaisons/危険な関係 (1988)]
[Glenn Close (1947~ )]
[John Malkovich (1953~ )]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1959)]
[Jeanne Moreau (1928~ )]
[Gerard Philipe (1922~1959)]

[La Musee de la Poste]
by raindropsonroses | 2006-11-15 00:00 | 書架の片隅。