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匂いのいい花束。ANNEXE。

薔薇に求められるもう一つの条件。

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拝啓

この時期には珍しい台風直撃となりました。Tさん、その後、如何お過ごしですか。
外は激しい雨ですが、僕は猫を膝に乗せてこの手紙を書いています。

さて、薔薇もそろそろ2番花が終わり、早いものは3番花の蕾が上がって来ました。
さすがにこれ以上は樹を疲れさせるだけですし、どうせ咲いても綺麗な花は望めません。
せっせせっせと摘蕾をしている毎日です。こうして樹に力を蓄えさせて
8月下旬の軽い剪定のあと、一気に秋の花の時期を迎える訳です。
Tさんは疑問に思っていらっしゃるようですが、秋の剪定はした方がいいと思いますよ。
春の1番花のあと、それぞれのペースになっていた伸び方を一度ここでリセット、
そうする事によって、少しは秋の花が咲く時期が揃うと言う訳です。

そうそう、夏のバルコニーで作業していて思ったことなんですが、
先日のギヨー氏の言葉にもあった通り、最近の薔薇に求められているものって、
先ず、匂いですよね。そして、花の形、色、耐病性、繰り返し咲き性なのでしょう。
僕、ここで思ったんですけど、あまり言われませんが、それに加えて
花が房になって咲くって言うことがとても高ポイント、非常に求められているのではないかと……。

特に最近のイングリッシュ・ローズ、
これらは日本では「イングリッシュ・ローズ」として括られていますが、
世界的には「モダン・シュラブ」と言う括弧で括られています。
殆どのイングリッシュ・ローズが房になって咲きますよね。
1本の枝に沢山の花を付ける事によって、より華やかな感じに見せる。
一番最初の花が終わってから、順次、脇の蕾が花開き花の時期が非常に長いです。
最近流行のフランスの薔薇、ギヨーもデルバールもメイヤンも、それぞれに房咲きが主流です。
ハイブリッド・ティーに分類されるものも殆どが房になって咲きます。
ハイブリッド・ティー=一枝に一輪だけ咲く……この括りが崩れつつあります。

同封しました何枚かの写真、どうですか、これでたった1本の枝から咲いた花なんですよ。
1本に1つの花の薔薇と比べて圧倒的に花の数が違って来ますよね。
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1枚目はここ数年で最も色鮮やかなイングリッシュ・ローズの「Summer Song」
名前が「Summer Song」なのに夏に弱いと言われていますが(笑)
兎に角、一番の特徴はその色でしょう。今までのイングリッシュ・ローズにはない色、そして芳醇な匂い。
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2枚目は今の所、最新品種の中の1本「Lichefield Angel」です。
この薔薇は典型的なティーの匂いに少しフルーツの匂いが混ざります。
多い時には5輪くらいの房咲きになりますが、写真をご覧になって分かるように、
完全に全ての蕾が開き切ります。枝振りはしっかりしていますが、
頭が重くなりますからあらかじめ支柱などを立てておくといいかもしれませんね。
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3枚目はチョッと前のイングリッシュ・ローズ「Radio Times」です。
僕は写真だけだと何種類か混同してしまう薔薇があるんですが、
中輪ながら非常に良く繰り返し咲く薔薇で、樹自体もそれほど大きくならないと思います。
花の色は、どちらかと言うと少し暖かみのあるピンク。
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4枚目は白花が少ないと言われているイングリッシュ・ローズの中から銘花「Fair Bianca」。
シェークスピアの「じゃじゃ馬ならし」からの命名ですね。
「Eliane Gillet」もそうですが、蕾のうちは真っ赤なイチゴを思わせる風情で、
花が開くと純白になります。蕾と花が1本の枝に付く様は可憐そのもの。
非常に人気がある品種で、非常に強いミルラの匂いがあります。
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5枚目の写真は、これまた最近大人気のギヨーの薔薇「Agnes Schilliger」です。
この薔薇は1番花と2番花、さらには秋の花で随分と表情が違うみたいですが、
写真の一番花は本来の姿に一番近く撮れたのではないかと思っています。
生姜、フランボワーズ、イチゴ、シナモン等、強香が売り物みたいですが、
僕が試した所それほど強い匂いではなかった……もうチョッと観察が必要です。
何れにせよ、このヒラヒラの花弁は凄いです。まるで鶏頭の花が丸く咲いたよう。
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6枚目の写真は僕が最近、注目して意識的に収集している、
約20年前くらいのイングリッシュ・ローズの中から「Symphony」。
今では殆ど育てている人がいないんじゃないでしょうか。
結構、しっかりと固めの茎に3〜5輪ほど房咲きになります。
匂いは強烈なティーの匂い、理想的で典型的なティーの匂いです。
この薔薇のいい所は、時間が経って退色しても、あまり白くならない所。
一房で黄色の美しいグラデーションが楽しめます。
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7枚目の写真は、今年迎えた中で一番遅い開花だった「Comtesse de Segur」です。
パリに旅立つギリギリに撮影する事が出来ました。
大輪が房になって咲く様は豪華絢爛、どの蕾もキチンと花開きます。
匂いも大変に素晴らしく、一言で何の匂いと言うのは不可能。
朝や昼、夕方にはそれぞれに匂いを変え僕等を楽しませてくれます。
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8枚目の写真はチョッとブームが一段落の「Rhapsody in Blue」です。
チョッと前までは世界で一番青い薔薇として随分もてはやされましたね。
青と言うよりも紫、完全な紫のグラデーションが一枝で楽しめます。
写真を見てお分かりの通り、赤紫から咲き始め最後には淡いグレー・ラベンダーに退色。
黄金色の蕊とのコントラストが大変に美しいです。
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9枚目の写真は何だとお思いになりますか?これ、咲き進んだ「Eliane Gillet」なんですよ。
丁度、満開の純白の写真しか紹介されませんが、こうして時間とともに赤みを帯びます。
深紅の苺のような蕾が純白の花へと開花し、さらにピンクに退色する……。
この薔薇も蕾が全部花開きますから一株で物凄く華麗な姿になります。

どうですか、どれも1本の枝に咲いた薔薇とは思えないでしょう。
これらがどんどん繰り返して花咲くんですから、庭は大変な事になるハズです。
そうそう、一番最初の大きな写真はギヨー作出の「Paul Bocuse」です。
ギヨーさんの古くからの親友であるポール・ボキューズの名前を冠した薔薇、
この写真で枝はたったの2本です!完全なラウンドになって開く花はそれは見事です。
どうですか、1本だけ切って花嫁のブーケで持っても何ら遜色ないと思いませんか。
ここ数年、薔薇の姿がどんどん変わって来ていますね。
一輪だけでもその部分だけ明るくなるのです、これが数輪の房咲きになったら……。
考えるだけでも素敵なことだと思いませんか。


敬具

2007年7月16日 


ブノワ。


[Summer Song (ER) Austin, 2005]
[Lichefield Angel (ER) Austin, 2006]
[Radio Times (ER) Austin, 1994]
[Fair Bianca (ER) Austin, 1983]
[Agnes Schilliger (S) Guillot, 2002]
[Symphony (ER) Austin, 1986]
[Comtesse de Segur (S) Derbard, 1994]
[Rhapsody in Blue (S) Frank R. Cowlishaw, 1999]
[Eliane Gillet (S) Guillot, 1998]
[Paul Bocuse (S) Guillot, 1997]

[William Shakespeare (1564~1616)]
[Taming of the Shrew/じゃじゃ馬ならし (1594)]

[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
[Guillot]
[Delbard]
[Meilland Richardier Meilland International]

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by raindropsonroses | 2007-07-16 00:00 | 薔薇の名前。