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匂いのいい花束。ANNEXE。

薔薇幻視……孔雀と薔薇と香りの杯。 その1

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拝啓……M・Nさま。

秋の虫の声が聞こえるようになった今日この頃、
如何お過ごしですか?仕事の方は相変わらず忙しいですか?

晩春の薔薇の頃、M・Nさんに思わずプレゼントして戴いた
中井英夫の「薔薇幻視」ですけど……何と言う偶然か、
まるで導かれるように、その後、直にパリに向け旅立つ事となりました。
季節は初夏、6月の薔薇の真っ盛りの頃です。
薔薇気違いの僕は、パリ郊外の薔薇園、植物園、庭園、
薔薇が沢山植えられている秘密の中庭……カメラを持って撮影して廻りました。
旅支度のカバンの片隅には M・Nさんに戴いた「薔薇幻視」。
一日中歩き回ってアパートに帰り、食事の後、ゆっくりと風呂に浸かり
ワインのグラスを傾けながらこの「薔薇幻視」のページを捲ったものです。
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ノルマンディー地方に小旅行のあと、いよいよ「バガテル庭園」です。
旅程の都合や、薔薇の開花状況で、仕方なく満開の日曜日に訪れました。
矢張り、想像していましたが、人、人、人……何処を見回しても人の山。
それでも、満開の薔薇を目の前にすると言葉が出て来ませんね。
夢中でシャッターを切り、匂いを嗅ぎ、名前を確認する……。

まるで、普段着では薔薇に失礼と言わんばかりに完璧に着飾った老紳士、
彼女とおぼしき女性に夢中で薔薇の説明をしているハンサムな男の子、
杖をつき、歩くのもやっとだけど、今日ばかりは踵に羽根が生えたかのように
軽やかな足取りの白髪の老婦人……皆さん、本当にし合わせそうな表情で、
目が合うと思わずどちらからともなくニッコリです。

生憎、僕には毎日〜の水遣りや病虫害の処理など現実問題が山積ですから、
著者の中井英夫のように薔薇に物語を感じたり、詩的な感情は浮かびません。
自らの住居に「流薔園・るそうえん」と名付けた中井英夫です。
彼なら、また違った思いをした事でしょうね……。


「なにがこの美を保たせているのか。答えはただひとつ”静けさ”の他にない。」

「薔薇幻視」中井英夫 著 より。


その2に続く…………………………………………………………………………………………………

2005年9月10日

ブノワ。


[中井英夫 (1922~1993)]
[薔薇幻視/「薔薇幻視」中井英夫 著 佐藤明 写真(1975)]

★皆さんご存知の「駒場バラ園」さんが今年一杯で規模を縮小されます。
 現在、近くの新公園予定地に「駒場バラ園」さんの貴重な薔薇を移植する
 署名運動が始まっています。HPを見て趣旨に賛同された方は、
 HP右側の「最新記事」の上から二番目に、是非、コメントを書き込んで下さい。
 ヨロシクお願いいたします。
[新・駒場バラ園を作る会]

ほっとけない 世界のまずしさ

http://hottokenai.jp/index.html
by raindropsonroses | 2005-09-10 00:00 | 旅の栞。