匂いのいい花束。ANNEXE。

薔薇幻視……孔雀と薔薇と香りの杯。 その2

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その1から続く………………………………………………………………………………………………

さて、写真を見て戴くとお分かりの通り、
その日、満開の薔薇園には全く人がいませんでした。

そう、この写真は、二回目にバガテル庭園を訪れた時に撮影したものです。
時は、6月16日(木)僕は友人に満開の薔薇園を見せようと
張り切って朝一番に駆けつけました。所が、何となく様子がおかしいのです。
時間になって門が開き、いつもの薔薇園に向かう道を行くと、
そこここに「薔薇園はあちら→」の標識があり、横道……薔薇の小径や野菜園、
アイリスのコーナーには柵が置いてあって入れないようになっているんです。
しかも、途中で、黒人女性の警備員に質問を受ける有様……。
どうやら、今日は薔薇園で何かあるらしい……「入り口でOKって言われた」と
警備員の女性を煙に巻き、何とか薔薇園に辿り着いてみると……。
入り口にはテントが張られ、何やら、全員、名前のチェックと
招待状のようなものを提出しているではありませんか。

何でもその日は年一回のバガテル国際薔薇コンクールの発表の日だったのです。

僕等二人は、どさくさに紛れて園内へ……しかし「メッシュぅ〜、シルヴプレっ!」
ってな訳で、まんまと連れ戻されちゃいました(笑)
コンクールの事は全く知らない訳だし、事情を説明しても「Non!」の一点張り。
執拗に食い下がる僕等に根負けし、次は薔薇コンクールの一番偉いムッシュー登場。
どうにもこうにも首を縦に振らないムッシュー「Non!」の一点張り。
「今日のこの日のために、満開の薔薇700本を置いてパリにやって来た。
昨日着いて、今日見学、明日には日本に帰るんだから……」と、嘘を並べ立て(笑)
漸く僕等の熱意が通じたのか、ニヤニヤし始めるムッシュー。
結局、一時間だけならって事で、誰もいない薔薇園に通して貰いました!
矢張り、僕等の熱意と必死の思いを理解してくれたのでしょうけど、
ムッシュの心を動かした一番の理由は、同じ「薔薇好き」の心じゃないでしょうか。
友人の粘りとフランス語のお陰で、人っ子一人いない満開の薔薇園を一時間も見学!
これこそ、薔薇好きには応えられない身に余る幸せでした。
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左の写真は、2005年51番の薔薇。僕が特に気に入った薔薇です。
まだ名前はありません。ご存知かもしれませんが、
バガテルのコンクールは、何年も庭園内で薔薇を育て、
耐病性、花付きなど、薔薇の特性を観察し、
漸く、その年になってから中心の薔薇園に移植されます。
コンクールが終わるまで全て通し番号で管理されています。

薔薇園の端にあるオランジェリーにはテントが張られ
中では、各国からやって来た審査員の人達が珈琲などを飲みながら歓談しています。
薔薇園には僕と友人と、そして、いつもは違う場所に放し飼いになっている
孔雀が2羽、「君たちは今日はここにいなさい!」ってな感じで連れて来られ
満開の薔薇に花を添えていました(笑)この孔雀、薔薇に負けてなるものかと
存在をアピールするように10分おきにちゃんと啼くんですよ!
薔薇園は満開のバラの香りでむせ返るようないい匂い、匂い、匂い……。
中井英夫の「薔薇幻視」に出て来る白い杖の盲目の女性はいませんでしたけど……。
M・N さんのお陰で、僕なりの「薔薇幻視」体験が出来ました。

コンクールの様子や詳細に付いては「薔薇幻視」に詳しいです。
僕等は、400枚の写真を撮り、二度とこんな幸運は訪れないと思いながら
後ろ髪を引かれつつ満開の薔薇園を後にしました。さっきの受付の女性は、
近付いて来る僕等の顔を見ると思わずニッコリ。
それほど、僕等の顔は幸せに輝いていたに違いありません……。


「盲目の夫人は白い杖をつき うす雲リの湿った空気の下をひっそりと歩いて行った
 薔薇たちはその時いっせいに揺れ動いた。
 この本当のクープ・ド・パルファン 香りの杯のために……」  

「薔薇幻視」中井英夫 著 より。


敬具

2005年9月11日


ブノワ。

[中井英夫 (1922~1993)]
[薔薇幻視/「薔薇幻視」中井英夫 著 佐藤明 写真(1975)]

★皆さんご存知の「駒場バラ園」さんが今年一杯で規模を縮小されます。
 現在、近くの新公園予定地に「駒場バラ園」さんの貴重な薔薇を移植する
 署名運動が始まっています。HPを見て趣旨に賛同された方は、
 HP右側の「最新記事」の上から二番目に、是非、コメントを書き込んで下さい。
 ヨロシクお願いいたします。
[新・駒場バラ園を作る会]

ほっとけない 世界のまずしさ

http://hottokenai.jp/index.html
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by raindropsonroses | 2005-09-11 00:00 | 旅の栞。 | Comments(20)
Commented by しん at 2005-09-11 00:37 x
薔薇園と孔雀!出来すぎの背景ですねぇ。誰もいない園内を巡ることができて、本当に至福でしたね。旅先のアクシデントが嬉しいハプニングになる旅の醍醐味。でも何よりもブノワ。さんの日頃の薔薇に対する愛情のお返しがあったんじゃないでしょうか?
Commented by raindropsonroses at 2005-09-11 06:25
しんさんへ。
そうなんです、出来過ぎなんです(笑)孔雀を見た時は「ありゃぁ……」でした。「アンタ達、いつもここにいないじゃん?」って。
僕って普段の行いもいいし、人柄もいいから(?)旅先のハプニングでイヤなめに会ったことないんです。飛行機も絶対に定刻だし、まぁ、ビックリすることも多々あるけど、驚きをいい方向に変えるワザは持っていますので……じゃないと、旅していても詰まらないじゃない?

ブノワ。
Commented by otoboke-ya at 2005-09-11 09:12
かっこよすぎです!! バガテル! 円錐形のトピアリーが花園を引き締めて、さらには気高そうなクジャクが背筋をぴんと張っていらっしゃる。
ホントウ、奇跡のような瞬間を体験したのですね。普段のおこないがいいからかぁ・・・。見習わなきゃです。51番の薔薇、花のくちゃっと加減&つやつやの葉っぱの組み合わせがグッときました。ワインみたいでおいしそう。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-11 09:26
otoboke-yaさんへ。
おはようございます。そうなんです、本当に奇跡だったんですよ。普段の行いは取り立てて良くないから(笑)多分、友人の押しと、後ろに控えていた僕の「ミ・セ・テ・!」って言う光線が恐かったんでしょう。あとで友人が「物凄くコワイ顔していた」って言っていましたから(笑)
バガテルは、ある意味で成形された庭園の最高峰ですね。でも、それほどキチキチにはやっていない……何事にも「加減」って大事なんですね。これから、自然派の最高峰「ターシャ・テューダー」を見ます!そうだ、録画、録画ッと(笑)

ブノワ。
Commented by at 2005-09-11 10:45 x
バガテル庭園を初めて知りました。孔雀も誂えたようにピッタリ場面に馴染んでいますね。
ブノワさまの美の世界観にクラクラいたしましたわ。
し・か・も、見に行った日が国際薔薇コンクールの日にあたる強運と、
実力で内覧を勝ち取るなんて凄すぎます・・・笑顔が目に浮かびました(笑)。
ブノワさまにあやかって、私も美のニューロンが成長致しますように。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-11 11:31
翠さま。
この薔薇園は「バガテル庭園」のごく一部なんですよ。広大な公園内には池や森、それに、アイリス園、色々あって、季節、季節に素晴しい景観を楽しませてくれます。春は、果てしない草原に一面のチューリップ!今度、一度ご一緒しましょうね。でも、「あら、ワタクシの方が綺麗!」なんて言わないようにね(笑)コンクール潜入は本当に強運だったと思います。何事も杓子定規な日本と違って、個人の裁量に任せる部分も持ち合わせているフランスならではかもしれません。でも、この日、怒髪天を突くエピソードもあったんですよ(笑)それはまた今度の機会に……。

ブノワ。
Commented by Brighton Rock at 2005-09-11 12:29 x
そうだったんですね~、人を消したわけじゃなかったのか(笑)。バラと孔雀、絶妙のコンビですね。51番のバラに早く名前がつきますように・・・
Commented by raindropsonroses at 2005-09-11 12:42
Brighton Rockさんへ。
僕にそんなワザがある訳ないでしょう?(笑)写真だって殆どデータをいじらないんだから……枚数多過ぎて時間が足りません。
検索の仕方が悪いのか、何番が今年のグランプリか分からないんですけど……

ブノワ。
Commented by ダヴィデ at 2005-09-11 14:26 x
孔雀と薔薇・・・なんて豪華なのでしょうか。しかも薔薇のコンテストで咲き乱れる薔薇たち。季節というものを改めて感じますね。花や動物は、季節によって変化していく・・・人間もそうかな。なんて考えさせられる綺麗な写真、ありがとうござます。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-11 14:49
ダヴィデさんへ。
孔雀、豪華&綺麗ですよねぇ……以前、この孔雀の写真を撮った時、カメラを向けると、まるで「撮って!撮って!」と言わんばかりにカメラの方に向かった羽根を広げるんです(笑)もう、自信満々(爆)
そうなんですよね、季節で変るのが普通?だったら人間は少しおかしいですね……無理して同じでいようと思っているもの。自然に見習えって事ですかね。

ブノワ。
Commented by アキ at 2005-09-11 21:54 x
バラの最盛期のバガテルにいらっしゃって羨ましい限りです。やっぱりブノワさんは心掛けが良いからですね。
河津のバガテルには私は2度行きましたが、一昨年の春は木も育っていてパリを知らない私には綺麗に思いました。でも、一度は本場のバガテルを見たいものです。

今日NHKテレビでターシャ チューダの庭を見て感激しました。美しい映像でまさにスローライフ、癒しそのものでしたね。天国のようなガーデンで、現代の生活で失ったものが大きいことを感じました。
またターシャさんの強い意志を持った暮らしぶりや含蓄のある言葉・・・感動しました。
Commented by G・d・D at 2005-09-11 21:59 x
ブノワ。さま

こんばんわ。
51番の薔薇。気になって仕方ありません(!)
まるで完熟期を迎えた果実のような色合い。
この薔薇は朽ちてゆく姿もきっと艶やかなのでしょうね。
ゆくゆくつけられるであろう名前も気になります。
ターシャ・テューダー・・・。残念無念。
観れません【泣】
彼女の庭、大好きなんですよ。
あんな風に芍薬をのびのびと咲かせる事ができたら!
Commented by 猫のおなか at 2005-09-11 22:12 x
ブノワさま。
今晩は。無粋な世事に追われてなかなかコメントできす、歯がゆい思いでいました。バガテル庭園の薔薇園、本当に孔雀と薔薇と香りに満ちた杯の中に引き込まれてしまいそうです・・・。
旅に本は欠かせませんよね。小編を何度もなぞる、長編の流れに身を委ねる、どんな読み方でも楽しいですが、日常の中では読みすごしてしまったかもしれない文章や言葉が、思いかけず心を揺さぶる、染み入ってくる・・・。ひょっとしたら、そのために旅に出るのかも知れませんね。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-12 00:22
アキさま。
こんばんは。満開のバガテル、アキさんだったら「あらぁ〜っ!」と、悲鳴をあげて一歩も前に歩けなくなる事必定です(笑)僕って、普段の心掛けも悪いですし、宝くじなんて全くかすりもしない弱運の持ち主なんですが、変な所は強運なんですよね(嬉)
河津は、もしかしたら11月に行ってみるかもしれません……薔薇は期待出来ませんが、近くまで行きますので……。
ターシャ・テューダー、感涙物でしたね。でも、美しい庭は決して一朝一夕では出来ないと言う事、心してこれからの薔薇作りに望みたいと思います。果たして、短気な僕に出来るでしょうか?(笑)

ブノワ。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-12 00:28
G・d・Dさま。
こんばんは。ねぇ、プラムみたいで素敵でしょう?今頃、バガテルに行けば何番がグランプリか、また、何番が香りの大賞か分かるでしょうね。正面にパネルが出ますので……。
ターシャ・テューダーは今度ビデオをお貸ししますよ。今まで、写真集でしか知らなかった庭が立体的に分かるようになりました。とても素敵!でも、決して真似出来ませんね。だけど、思ったんですけど、今からでも遅くないんですね……年齢的には……って言う意味ですけどね(笑)

ブノワ。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-12 00:48
猫のおなかさま。
こんばんは。お元気でしたか?満開のバガテルの想い出(エピソード)は一生の宝物になりました。驚いたのは、薔薇にも様々な香りがあり、色相、色味の違いがあります。でも、決してぶつかり合わず、いい具合に調和がとれているんです。言語道断、贅沢きわまりないんですが、「あぁ〜あ、これでシャンパンがあれば……」チョッと、イケナイ事を思ってしまいました(笑)旅先の読書ですが、最近はホテルではなくアパートを借りていますので、日本人のオーナーの時などは本棚が楽しみになるんです(笑)6月のパリでは、三嶋由紀夫の「サド公爵夫人」を再読、中村紘子の「ピアニストという蛮族がいる」を読破。結構、面白かったです。旅先では時間が貴重ですけど、心の余裕も必要ですもんね……。

ブノワ。
Commented by merino at 2005-09-13 14:45 x
はじめまして・・・バガテルの薔薇、貸切り状態だったのですか・・・それは凄いです。うらやましい。そして孔雀。孔雀は記憶を司る鳥ですね・・・。
中井英夫や三島の文字につられて、書込んでしまいました・・・。
Commented by フレグランス at 2005-09-13 18:11 x
写真とブノワさんの「語り口」でなんだかワタシも一緒にいたような臨場感でした。
幸せなひととき有難うございました。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-13 22:43
merinoさま。
はじめまして、ようこそいらっしゃいました!さっき、merinoさんのブログを覗いて来た所です。可愛らしい感じですが、随所に様々な「ワザ」が隠してあってビックリです。僕なんか、記事を書くだけ(笑)他の事はまだまだこれからです。
孔雀は記憶を司る鳥なんですか……一つ利口になりました、ありがとうございます。バガテルは本当に夢のような時間を過ごして来ました。矢張り、花好き通しの心が通じたのでしょうね。
merinoさんのブログ、今度ゆっくり遊びに行きますね。merinoさんも是非、また遊びに来て下さい!

ブノワ。
Commented by raindropsonroses at 2005-09-13 22:48
フレグランスさま。
こんばんは。こちらこそ、いつも貴重な情報やノウハウを教えて戴いて感謝しています。
この日、フレグランスさんと僕が一緒にバガテルに行ったら大変だったでしょうね(笑)二人とも行方不明、行ったっきり帰って来ないんじゃないかと……。フレグランスさんのスライドを見て、イギリス行きの欲望がムクムク沸き上がっている所です。何れにせよ、来年ですけど、その時は色々と教えて下さいね!

ブノワ。