匂いのいい花束。ANNEXE。

薔薇幻視……孔雀と薔薇と香りの杯。 その2

e0044929_16272323.jpg

その1から続く………………………………………………………………………………………………

さて、写真を見て戴くとお分かりの通り、
その日、満開の薔薇園には全く人がいませんでした。

そう、この写真は、二回目にバガテル庭園を訪れた時に撮影したものです。
時は、6月16日(木)僕は友人に満開の薔薇園を見せようと
張り切って朝一番に駆けつけました。所が、何となく様子がおかしいのです。
時間になって門が開き、いつもの薔薇園に向かう道を行くと、
そこここに「薔薇園はあちら→」の標識があり、横道……薔薇の小径や野菜園、
アイリスのコーナーには柵が置いてあって入れないようになっているんです。
しかも、途中で、黒人女性の警備員に質問を受ける有様……。
どうやら、今日は薔薇園で何かあるらしい……「入り口でOKって言われた」と
警備員の女性を煙に巻き、何とか薔薇園に辿り着いてみると……。
入り口にはテントが張られ、何やら、全員、名前のチェックと
招待状のようなものを提出しているではありませんか。

何でもその日は年一回のバガテル国際薔薇コンクールの発表の日だったのです。

僕等二人は、どさくさに紛れて園内へ……しかし「メッシュぅ〜、シルヴプレっ!」
ってな訳で、まんまと連れ戻されちゃいました(笑)
コンクールの事は全く知らない訳だし、事情を説明しても「Non!」の一点張り。
執拗に食い下がる僕等に根負けし、次は薔薇コンクールの一番偉いムッシュー登場。
どうにもこうにも首を縦に振らないムッシュー「Non!」の一点張り。
「今日のこの日のために、満開の薔薇700本を置いてパリにやって来た。
昨日着いて、今日見学、明日には日本に帰るんだから……」と、嘘を並べ立て(笑)
漸く僕等の熱意が通じたのか、ニヤニヤし始めるムッシュー。
結局、一時間だけならって事で、誰もいない薔薇園に通して貰いました!
矢張り、僕等の熱意と必死の思いを理解してくれたのでしょうけど、
ムッシュの心を動かした一番の理由は、同じ「薔薇好き」の心じゃないでしょうか。
友人の粘りとフランス語のお陰で、人っ子一人いない満開の薔薇園を一時間も見学!
これこそ、薔薇好きには応えられない身に余る幸せでした。
e0044929_16275264.jpg
左の写真は、2005年51番の薔薇。僕が特に気に入った薔薇です。
まだ名前はありません。ご存知かもしれませんが、
バガテルのコンクールは、何年も庭園内で薔薇を育て、
耐病性、花付きなど、薔薇の特性を観察し、
漸く、その年になってから中心の薔薇園に移植されます。
コンクールが終わるまで全て通し番号で管理されています。

薔薇園の端にあるオランジェリーにはテントが張られ
中では、各国からやって来た審査員の人達が珈琲などを飲みながら歓談しています。
薔薇園には僕と友人と、そして、いつもは違う場所に放し飼いになっている
孔雀が2羽、「君たちは今日はここにいなさい!」ってな感じで連れて来られ
満開の薔薇に花を添えていました(笑)この孔雀、薔薇に負けてなるものかと
存在をアピールするように10分おきにちゃんと啼くんですよ!
薔薇園は満開のバラの香りでむせ返るようないい匂い、匂い、匂い……。
中井英夫の「薔薇幻視」に出て来る白い杖の盲目の女性はいませんでしたけど……。
M・N さんのお陰で、僕なりの「薔薇幻視」体験が出来ました。

コンクールの様子や詳細に付いては「薔薇幻視」に詳しいです。
僕等は、400枚の写真を撮り、二度とこんな幸運は訪れないと思いながら
後ろ髪を引かれつつ満開の薔薇園を後にしました。さっきの受付の女性は、
近付いて来る僕等の顔を見ると思わずニッコリ。
それほど、僕等の顔は幸せに輝いていたに違いありません……。


「盲目の夫人は白い杖をつき うす雲リの湿った空気の下をひっそりと歩いて行った
 薔薇たちはその時いっせいに揺れ動いた。
 この本当のクープ・ド・パルファン 香りの杯のために……」  

「薔薇幻視」中井英夫 著 より。


敬具

2005年9月11日


ブノワ。

[中井英夫 (1922~1993)]
[薔薇幻視/「薔薇幻視」中井英夫 著 佐藤明 写真(1975)]

★皆さんご存知の「駒場バラ園」さんが今年一杯で規模を縮小されます。
 現在、近くの新公園予定地に「駒場バラ園」さんの貴重な薔薇を移植する
 署名運動が始まっています。HPを見て趣旨に賛同された方は、
 HP右側の「最新記事」の上から二番目に、是非、コメントを書き込んで下さい。
 ヨロシクお願いいたします。
[新・駒場バラ園を作る会]

ほっとけない 世界のまずしさ

http://hottokenai.jp/index.html
[PR]
by raindropsonroses | 2005-09-11 00:00 | 旅の栞。