匂いのいい花束。ANNEXE。

孔雀の舌。

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 「料理とは真心と愛情、そして持て成す心である……。」

僕は常にそう思っている。多少、調理法が下手クソでも、
盛り付けが綺麗じゃなくても、味付けがヘンテコでも、
相手に美味しく食べて貰いたいと言う気持ち、
温かいものは熱々の内に、冷たいものは冷え冷えでサーブする。
その心意気が料理を一段美味しくすると思っています。

後は素材を良く知ること。
素材を知れば自ずと調理方法や火の通し方が分かってくるからです。

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京都には朝の10時30分に着きました。
ミスター・アイスクリームくん!友人との待ち合わせは12時だったけれど、
少し街を歩きたかったのと、一人の時間を楽しみたかったからです。
友人と約束のレストランに到着したのは12時丁度。
旅先でもどこでも時間厳守のクセは抜けません(笑)
この日、僕だけのために特別に開けてくれたレストラン、
テーブルに案内され、暫らくして聞こえて来た
シャンパーニュを抜栓する小さな「ポンっ!」と言う音。
瓶に詰められ息を潜めていたシャンパーニュが、
再び空気に触れ鼓動をし始める音。いつ聞いてもいい音です(笑)
広い店内を僕だけが独占、お忍びの映画スターか王侯貴族?
何やらチョッピリ面映く居心地も悪いのですが(笑)
シャンパーニュの心地よい酔いにすっかりリラックスし、
運ばれて来た前菜を見た途端に全神経が食欲に集中します(笑)

先ずは友人の自信作、「パテ・ド・カンパーニュ」……。
自家製のベーコンとピスタチオが入っています。
どうしても彩りが悪くなりがちなパテ、
添えてあるレッド・キャベツの赤とピスタチオのグリーンが彩りを添えます。
ナイフを入れ、口に持って行く瞬間に鼻孔を突く豚肉の豊潤な匂い。
今まで食べたどのパテよりも歯応えがあって、
一切れのパテの中に熟成された肉の部分と新鮮な肉の部分が絶妙に交ざり合うハーモニー。
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次の一皿は真鯛のロティ。
皮がパリっと焼き上げられた真鯛は身が引き締まってしかも柔らか。
蛋白になりやすい白身魚だけれど、丁寧に手を加えたトマトのピュレ、
いい塩梅に振られた塩胡椒が絶妙に真鯛の味を引き立てますです。
付け合わせのじゃが芋も、温度をかけて分離させたバターとチーズで丁寧に処理。
フランス語で大地の林檎と言われるジャガ芋、サッパリした真鯛を引き立てます。

そして今回のメイン・イベント……アイスクリーム!(笑)
幾つかのフレーバーを提示されましたが、わざわざアイスクリーム恋しさに、
京都まで出て来たことを友人に気取られてはいけません(笑)
今回はごくごく普通に、苺(右奥)チョコレート(手前)
そして、バナナ!バナナバナナバナナ!(左奥・笑)
このバナナが異様に素晴らしいのです……少しねっとりして、
今まで食べさせて貰ったどのアイスクリームよりも美味しかったです。
あぁ……溶けてお皿にくっ付いたアイスクリームが勿体ない!(笑)

そしてデザート2品目は、友人お手製のチョコレートケーキと、
友人のパパがお作りになったアンズのタルト!美味なアンズのタルト!
生地がサクサクっとしてサッパリ目のアンズのタルトは僕のお気に入りになってしまいました。
今度はアイスクリームとアンズのタルトを一緒に送って貰わなくては……。

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休みのレストランを僕だけのために開けてくれた友人の気持ち、
極上の料理、そして何よりも、僕だけのために調理してくれた友人の思いやりに感謝です。
常々、人のために料理をすることはあっても、
僕のためだけにに作って貰ったことは初めての経験。これ以上の幸せがあるでしょうか。

お礼に、僕を可愛がってくれている女優さんが譲ってくれた、
開高健の「孔雀の舌」をプレゼント……したいところなんですが、
この本は絶版ではないものの、既に手に入らなくなっている貴重な本。
古本屋で手に入ったら改めてプレゼントすると言うことで、
暫らく貸し出すということで勘弁して貰いましょうか(笑)

「孔雀の舌」……今から30年前に出版された、食に関するエッセイを集めた開高健の傑作。
1955年から1975年までの間に様々な媒体に書かれた食や酒、
珍しい外国旅行の紀行文などを集めたこの本は、
料理人の友人にに何らかの変化をもたらすと思うのです。
バブルの頃からフレンチ、イタリアン、和食と流行が巡って来て、
一通りのレベルのレストランがごくごく普通に街に点在し、
誰でも簡単に質のいいサービスと美味しい料理を食べられる今の時代。
レストランの戦国時代……食べることの原点、持て成す心のありようなど、
チョッとしたヒントがこの本に隠されているように思うのです。
食べるという行為とは如何に。人は何故、酒に酔うのか……。
作者の飽くなき探求心が僕等、読者の心を掴んで離しません。

極上の食事と持て成し、ヴーヴ・クリコにしとどに酔い、
京都の素晴らしい休日は幕を開けたのでした。


草々

2008年6月13日


ブノワ。


[開高 健/Takeshi Kaiko (1930~1989)]
[孔雀の舌/文芸春秋社 刊 (1977)]

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by raindropsonroses | 2008-06-13 00:00 | バベットの晩餐会。