匂いのいい花束。ANNEXE。

匂いたつ……フランス軍中尉の女。

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僕がブログを始めて随分になります……。
まだブログなんて言うものがない頃、
漠然と薔薇のホーム・ページを作りたいと思っていました。
コンピューターを嫌悪し、仕事では仕方なかったけれど、
極力コンピューターから遠ざかって生きていました(笑)

そんな僕がヒョンなことからPCを買う事になり、
気が付けば、友人に後押しされてブログなどと言うものを始めることに……。
自分の性格は自分が一番良く知っていますからね。
書きたい時に書いていたのでは、何れは止めてしまうのは必定、
毎日更新を心掛け、幾つかの記事を書き溜めておく癖がつきました。
キッカケが欲しくて、その日に誕生日を迎えた人にまつわることなど、
「日付」に重点を置き、そこに薔薇の話しを絡めて行く……。
今ではそんな手助けも要らないほどに創作意欲満々(笑)
泉が溢れるようにして記事を書いています(記事のストック3週間分!)

もう一つ、ブログに書きたいこと、書いて皆さまに伝えたいことが幾つかありました。
それは僕の敬愛する女優、杉村春子さんのことだったり、
わが青春の山口百恵のことだったり、今までに観た映画で感動した作品や、
お気に入りの女優や男優のことなど。これまでに十分に書いて来た積もりですが、
矢張り、今日この日、6月22日に書いておきたい事があります。
映画史上に燦然と輝く大女優、メリル・ストリープに関してです。

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メリル・ストリープ……言わずと知れた映画史上始まって以来、最も偉大な女優の一人。
昔の大スターが私生活をオブラートに包み、イメージを大事に死守して築き上げて来たスター性。
それとは全く違う位置に存在する、素のままの女性としての上に成り立つスター性を持つ人。
ハリウッドでは珍しいくらいに長い結婚生活と恵まれた子宝、
安定した生活の上に成り立った、ごくごく普通の家庭の主婦のイメージと、
演じる悲劇のキャラクターのギャップも面白いです。
家庭をとても大事にする……長期間拘束される舞台を諦め、
手料理を楽しみ、ニューヨークに越して来てからは普通に地下鉄に乗るそうです。

メリル・ストリープが演じる女性像はエキセントリックな役が多いと言われています。
彼女自身、インタビューに答えています。
 
 「興味がある役に出会うと、その女性は必ずと言っていいほど
     精神的に何らかの宿命を背負っていたのです……。」……と。

ごくごく普通の女性としての幸せに裏打ちされていたからこそ演じられた数々のキャラクター。
不幸のどん底の女性を演じるにあたっては、
その正反対の幸せの絶頂を知らずして演じることは出来ないのです。
美しい物を語るには、醜い物を知らなくては語れず、
恐ろしく歪んだ心根を演じるには、
真っさらな天使のような純心を持っていなくては演じられないのです。
バランスの良さ、それがメリル・ストリープの最大の特徴でしょうか。

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「ジュリア」で共演したジェーン・フォンダが、

 「あの子は売れるわよ……。」と、周囲に漏らした慧眼。

どの俳優にも売れるキッカケ、後に振り返った時に、
ターニング・ポイントとなる作品が必ずあります。
メリル・ストリープのそれは、助演を経て主演級の女優として活躍し出した第一歩、
ジョン・ファウルズ原作、ハロルド・ピンター脚色、
カレル・ライス監督の傑作「フランス軍中尉の女」ではないでしょうか。

この「フランス軍中尉の女」は面白い多重構造を持っています。
先ず、アメリカ女優のメリル・ストリープが、同じくアメリカ女優のアンナを演じ、
そのアンナは現在撮影中の映画でサラを演じている。
そのサラは劇中で周囲を偽り自分の人生を「フランス軍中尉の女」として生きている。
つまり、処女の身でありながら、嵐で漂流したフランス軍中尉に弄ばれ捨てられ、
その帰りを今でも防波堤の先で、遥か遠くフランスを見つめながら待っている女を、
階級制度が最も厳しいイギリスの田舎町で、周囲の厳しい蔑みの視線を一身に浴び、
常に人々に見られることを意識して暮らしているサラ。

由緒正しい婚約者がいながら、そのサラに一目惚れ、
彼女の嘘、彼女が演じている「フランス軍中尉の女の世界」にドップリ騙され、
婚約破棄までして彼女を追い求めてしまうチャールズをジェレミー・アイアンズが演じます。

実際に映画で共演しているマイクとアンナも不倫中の間柄、
夫がいるアンナはお遊び程度だが、マイクは可成り夢中の様子。
そんな、映画撮影中と言う現実と、劇中の虚構が上手く編集されて絶妙の世界感を生み出しています。
ハロルド・ピンターの脚色と言うことで、非常に演劇色が強いのもこの作品の大きな特徴です。
主演の2人が撮影に使われている温室でリハーサルをするシーン、
カメラがサッと切り替わって実際に映画のシーンになったりします。

ビクトリア朝時代の1876年、厳しい階級制度のイギリスで、
自らを「フランス軍中尉の女」と蔑み、甘んじて周囲の厳しい視線と噂の中に身を置くサラ。
その彼女の嘘としたたかな奸知にまんまとのめり込むチャールズ。
チャールズが婚約を破棄し、完全に彼女の「フランス軍中尉」になった時点で姿を消すサラ……。

物語のラストも実際の撮影現場の恋愛騒動もあっけなく終わりますが、
初主演にして堂々たる風格のメリル・ストリープとジェレミー・アイアンズのバランスの良さ、
風光明媚なイギリスの景色と時代色、充実の共演陣を迎えて、
メリル・ストリープが真の大女優のスタートラインに立った記念の1本です

先日のこと、アメリカの友人が自分で編集したメリル・ストリープのDVDを送ってくれました。
その中にはセザール賞とゴールデングローブ賞の受賞スピーチ(セザール賞は流暢なフランス語で!)
そして、AFI(アメリカ映画協会)の名誉賞を受賞した時の様子が入っていました。
驚くのはメリル・ストリープのスピーチの上手さでしょうか。
決して気取らず、こみ上げる喜びの発露は自然と場内の人々を笑顔にします。
ウィットに富み、後ろに流れる音楽に合わせて感謝の言葉を、
アドリブでメロディーに合わせて歌ったりします。
「プラダを着た悪魔」でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受けた時には、
感謝の言葉の最後を映画の中の名台詞「That's all !」で結ぶ心憎い演出をしたりします。
弱冠40歳を過ぎる頃からハリウッドの役者達から尊敬を一身に集めたメリル・ストリープ。
「フランス軍中尉の女」で華々しく主演級に躍り出てから四半世紀、
これからさらに円熟の度合いを増し、第二の絶頂期に入ろうとしています。

かのソフィア・ローレンは「人々を泣かせるよりも笑わせる方が難しい」と言いました。
僕はメリル・ストリープの神髄は喜劇にあると思っています。
「ハリウッドにくちづけ」でアカデミー賞のノミネートを受けてから、
実は少しコメディー路線に走り、回り道をし失敗した感がありますが、
この先「マンマ・ミーア!」と「Doubt」で喜劇と悲劇の両極端を
絶妙のコントラストで見せてくれることでしょう。

今日の1枚は僕のオリジナルの薔薇……。
本来は純白からヴァニラ・アイスクリーム色になるのですが、
春先の気温の低い日にはこのように花弁がほんのりピンクがかることがあります。
そんな様子は、メリル・ストリープが瞬時に頬を染める様子に似ています。
花保ちの良さは彼女自身のキャリアの長さを連想させ、
また、この薔薇の素晴らしいフルーツの匂いは、彼女の豊かな表現力を感じさせます。

僕が最も尊敬する大女優メリル・ストリープ……一体どんな花が好きなのでしょう。
もしも、薔薇が好きだとしたら何色の薔薇?どんな形の薔薇がお好きなのかな……。
一度お目に掛かって直接お聞きしたいような気もします。


草々

2008年6月22日


ブノワ。


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[The French Lieutenant's Woman/フランス軍中尉の女 (1981)]
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by raindropsonroses | 2008-06-22 00:00 | 女優の時代。