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匂いのいい花束。ANNEXE。

あなたならどうする。

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随分と時間が経ってしまいましたが、
去年の12月のクリスマス前のことでした。

その日の僕は神奈川県の中央部で用事があり、早めに終わったので、
次の目的地に向かうためにJRで川崎に出てそれからバスで……。
そんなプランを頭の中で立てて横浜線の中でウトウトまどろんでいる時、
新横浜から二人の男性が乗って来ました。
一人が僕の隣に座ったので目が覚め、聞くとはなしに会話が耳に入って来ました。

どうやら、その二人は知り合いではなく、
隣に座った人は目が不自由らしいのです。もう一人が親切に案内したようです。
その人も途中駅で降り、やがて電車は東神奈川へ到着。

 「東神奈川ですよ、終点だから下りて乗り換えないけませんよ。」

と、膝を軽く叩いて教えて上げました。

乗り換えのホームに案内する道すがら話しをしてみると、
何と名古屋から川崎にライブを聴きに来ているのだとか!
チョッと驚きましたが、それならばと、川崎まで一緒に行くことに……。
実は僕、目が不自由な方と歩くのは初めてです。
何でも遠慮なく聞いちゃう僕のこと、相手に僕の腕を掴まらせるのがいいのか、
それとも肩を貸すのがいいのか、僕が相手の腕を取るのがいいのか、
右に立つのがいいのか左がいいのか、歩くスピードは今のままでいいのかどうか……。
根掘り葉掘り、色々と聞いていざスタートです(笑)

東神奈川から川崎までの幾つかの駅の途中で分かったことは、
夕方から始まるライブを聴いて新幹線の終電で名古屋に帰るのだとか……。
どうやら川崎にライブに来るのは2度目なのだそうです。
でも、来たのは随分前のこと、川崎も随分と変わりましたからね。
小森のおばちゃま並みに心配性のブノワ。さん、
段々と心配が膨らみ、不安がムクムクと頭をもたげて来ました。
このクリスマス商戦で賑わう川崎の街を、人でごった返した街を、
果たして目の不自由な人が一人でライブハウスまで辿り着けるだろうか……。

ご存知のように、川崎には数年前に駅に直結した巨大なショッピング・モールが出来、
改札から続くコンコースは一年を通して人で賑わっています。
しかも、クリスマス前……一面黒い頭が埋め尽くしています。
決して時間に余裕があった訳ではないし、
その日は重たい荷物をガラガラ引っ張っていた僕……。
クラブは駅の反対側……でもいいや!

 「僕がクラブまで一緒に行きましょう。入口まで案内しますね。」と、僕。

相手はしきりに恐縮するモノの、どこかホッとした表情でした。
階段の上りや曲がり角、障害物があるたびに声を掛け、
歩道に貼られている点字ブロックの上を歩いた方がいいものかどうか、
このままライブが終わっても一人で新幹線の終電までに品川まで辿り着けるか……。
そんなこんなが頭を過りながら、クラブの前に到着。
丁度、既に長い列が場内に少しずつ動き出している所でした。
蛇行して進む列、

 「あぁ、これじゃ一人じゃ無理だな……。」

そこで最後尾に並んでいた若い真面目そうな男の子に事情を説明して、
中に入って席に着くまで(多分、スタンディングの自由席でしょうけど……。)
その人と一緒に行動してくれるように頼んでみました。
快く引き受けてくれた男の子、何度も何度も頭を下げ、
お礼を言いながら手を振るその人を背に、僕は次の予定地に向かったのでした。

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チョッと経験したからと言って、
今頃、偉そうにこんな事を書くのはどうかと思いますが、
僕等が住む世界って身体に不自由がある人にとっては非常に住み辛いですよね。

改札を出て、

 「じゃぁね、気を付けて!」と、

人混みに放り出す訳には行きませんでした。
携帯電話を見ながら前も見ないで歩いている女、
自分の行く先が遮られるとガンを飛ばして睨みつけます(苦笑)
点字ブロックの上にビッシリと駐輪された自転車、
自転車ならいざ知らず、点字ブロックの上に座り込んだ頭の悪い学生たち、
公共の場所を我もの顔で嬌声を上げながら走り回る行儀の悪い子供たち。
それを放置しているもっとタチの悪い親たち……。
その他、自分がもし目が不自由だったら……と、想像すると、
とてもじゃないけれど恐くて歩けない街。
バリア・フリーを謳って、最近では公共施設の設備も充実して来ているけれど、
設備の問題じゃなくて人の心のありようにも問題があるように思います。
自分の事で精一杯?「I love me」的な自己中心の考え方。
不自由があろうとなかろうと、相手のことには全く関心がない人と人の繋がりが希薄な今。
貼られている点字ブロックも、果たしてここに貼ってあっていいの?
ここの部分、剥がれているじゃない……そんな光景もチラホラ……。

初めて僕の肘に触れたその人の震える手の感触……。
次第にそれが信頼に変わって行くのがハッキリと分かるんです。
全く見ず知らずの人に安全を委ねる訳ですからね、恐いと思います。

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思わず人助け?約束の時間にはチョッと遅れるけれど、
清々しい気分の僕の背中に届いた最後の一言。

 「オジサン、どうもありがとう!」!!!!!!

こらぁっ!こらこらぁ!
人に親切をして貰ったら「オジさん」じゃなくて「オニイさん」と呼びなさい!(笑)
こんなに若くて素敵なブノワ。さんなのだから(大爆笑)
でも、なぜオジサンと分かったのだろう……声が老けていた?加齢臭?(大爆笑)
暫しオジサンとバレた理由を考えてみましたが、
きっと僕の背中には巨大な「?」マークが浮かんでいたに違いありません。
困った人を目の前に、「あなたならどうする」……いしだあゆみの歌が耳に響きます(笑)


草々

2009年2月26日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-02-26 00:00 | いつも心に太陽を。