匂いのいい花束。ANNEXE。

2013年 05月 26日 ( 1 )

生きる。

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生死の問題に直面した時、生きたいと願い、
必死になるのは人間だけだと聞いたことがあります。
でも、果たして本当にそうでしょうか……。


カトリーヌは家に入れてから2ヵ月半でお星さまになってしまいました。
耳の奥の腫瘍は一向に良くなる気配はなく、と、言うよりは、不治の病と診断されましたし、
日に日に悪化していく様子を手をこまねいて見ている自分が歯痒くてなりませんでした。
毎日〜毎日、新しい発見があります。それも悪い方の発見……。
耳から出る膿は止まるどころか日に日に多くなって行きます。もう驚くくらいの量……。
こんなに小さな身体なのに、どこからこれだけの膿が……。
朝起きると僕のTシャツとシーツが膿だらけなんて言うことはざらでした。
ヴァン・ダインの「ベンソン殺人事件」の中にありましたよね。

 「こんな老人のどこにこれだけの大量の血が流れていたのか……。」って一節が。

ついついそれを思い出すくらいの膿……しかも、耳からです。
耳の穴にも詰まり、腫瘍は視神経を圧迫。アッと言う間に片目が潰れてしまいました。
舌も上手く動かせなくなり三度の食事もままなりません。
それでもカトリーヌは最期の最期まで物凄く食欲がありました。
ペロペロ舐めるだけで舐めても思うように飲み込めずにいるのだけど、
まるで食べることが生きている唯一の証であるかのように……。
気持ちだけはやる可哀想な姿を見るのは本当に忍びなかったです。
夜、僕がトイレに立つと、慌ててご飯のお皿が置いてあるキッチンの一角にヨロヨロ走って行き、
ちんまり座って僕の方を期待の籠もった目で見つめるカトリーヌ。

 「プシュ……。」

僕のベッドの上でどんなに熟睡していても、キッチンで猫缶を開ける音がすると、
ヒョロヒョロっと力なく首をもたげるカトリーヌ。
もう、ご飯、食べたくて食べたくて、でも、食べられなくて……。
4キロ近くあった体重は、あれよあれよと言う間に半分以下になってしまい、最期にはたったの1.6キロ。
木の葉のように軽いカトリーヌ……指に当たる肋骨の華奢なこと……。


天国へ旅立つ10日前のこと、仕事に出かけるのでカトリーヌを暫くケージに入れようとしました……。
耳に溜まった膿が気持ち悪かったのでしょう。ケージの中で首をプルプル振ったカトリーヌ。
その反動で倒れてしまいました。体重が軽過ぎて支えられなかったこともあるけれど、
それ程、消耗している証です。 パニックを起こし、ケージに必死にしがみつくカトリーヌ。
ビックリして身体を撫でてあげる僕……その僕を見上げるカトリーヌの真ん丸に見開いた目には恐怖の色が……。

カトリーヌはこの時、初めて自分の死を自覚したのかな?残り時間が少ないことに驚き、

 「生きたい!」

と、心の底から思ったのではないでしょうか。
あの恐怖に彩られた真ん丸の瞳……僕には何もしてあげられなかった。



あれから2週間。心に何だか大きな穴がポッカリ開いたような気分です。
病院の先生は、食べられているのなら夏まで……そう仰言いましたが、
僕は良くて5月一杯……そんな予感がしていました。
食欲は物凄かったけれど、実際に食べられている量は小指の先ほどもなかったですから。
悲しくないといえば嘘になります。涙だって出ます。でも、その涙や感情の揺れは、
虐待にもめげず最期まで頑張った天真爛漫のカトリーヌを哀れんでというよりは、
周りの無責任な住人たち、カトリーヌを取り巻く人間たちへの怒りに変わってしまいます。

先ずはカトリーヌを虐待した前の飼い主。ご飯もろくすっぽあげず、
多頭飼いで病気やノミ、シラミだらけになっても放置していたそうです。
家の外の通りすがりの人もノミとシラミの被害に遭うようになり、
この件は大騒ぎになって、保健所が出動したそうです(苦笑)

それから気紛れでご飯をあげていた僕の家の前のお母さん。しかも汚い器で。
あの冬の寒い日、カトリーヌとキク&こうちゃんの寝ぐらに棒を突っ込み

 「ホラ!出て行け!」って……。

その光景を見た衝撃は今でも忘れられません。鬼……そう、人の皮を被った鬼の所業です。

代わりに僕が面倒を見はじめた途端に諸々の責任を取れといい寄って来た病院長夫婦……。
庭をトイレ代わりにされて怒るのは当然だし、申し訳ないと思うけど、
その前にもっと庭の手入れをしましょうよ!裸同然の土が丸見えの庭。
猫が寄り付かないように何か植えればいいのです。



涙というより静かな怒りがふつふつと込み上げてきます。
カトリーヌだって何も望んで野良猫に生まれた訳じゃない。
必死に生きて、必死に子供を育てて……。

 「また産んじゃったみたいよ……。」

院長夫人と前の家のお母さんの立ち話しが聞こえてきます。
認識あったなら地域の猫のボランティアの人に相談すればいい。
地元には熱心に活動している方がいるんだから。
手をこまねいてカトリーヌに出産を繰り返させ、無為に何匹もの野良猫を作った罪は大きいです。
僕の責任を問う前に、己が責任と罪を認識すべき。無関心の罪は大きいです。
無責任な連中……カトリーヌの死を知ったらなんて思うでしょうね?何も思わないかな?

他からやって来た野良猫から身を挺して縄張りを守り、キク&こうちゃんを育て上げたカトリーヌ。
傷だらけになって闘いぬいたカトリーヌを思うと不憫だけれど誇らしいし気持ちで一杯です。
僕もカトリーヌの絶叫を聞き、何回、寒い真冬の深夜に飛び起きて、
箒を持って侵入猫を追い掛けたでしょう(笑)深夜に仁王立ちの怪しい猫オジサン(笑)
あれもこれも楽しい思い出となりました。ここに引っ越してきてから3年と言う短い時間でしたが、
カトリーヌと過ごした時間は何物にも替えられない大切な時間です。

ありがとうね、カトリーヌ!天国でお腹一杯、好きなご飯を食べなさい!
また生まれ変わったら僕のところに来るんだよ!


2013年5月26日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2013-05-26 00:00 | 猫が行方不明。 | Comments(16)