「ほっ」と。キャンペーン

匂いのいい花束。ANNEXE。

カテゴリ:書架の片隅。( 15 )

リスベット・サランデル。

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………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 「読んでから見るか、見てから読むか。」

確か角川書店の宣伝コピーでしたか。
皆さんはどっち派ですか?僕は出来れば読んでから見る方です。
主人公が映画化されてどのように描かれているか確認したいタイプなんです。
読んじゃったらストーリーが分かっちゃって面白くないでしょう?
そう言う人もいますが、僕は全然平気。
監督が原作をどう料理しているかを見るのが楽しいです。

 「原作と映画は別物だよ!」

そう声高に言う人もいます……そりゃぁそうだ。
でもね、僕は思うんです。原作を元に作っている以上、
そのファンの動員を当てにして作っている訳で、原作のファンの意見は無視出来ないし、
作家としての自分の表現をどこら辺まで曲げ、そして迎合して原作と向き合うか。
凄く面白いと思うんです。原作の映画化で成功した例は少ないですしね。
そこにこだわるならオリジナル・ストリーで勝負すればいい。
件の台詞を平然と言い放つ作家は原作を自在に料理出来る力量がないから遠吠えするんですね(笑)
原作物を映画化するには絶対に逃れられない宿命があります。



さて、この所チョッピリ惚けています……。
正月に纏め買いした「ミレニアム」シリーズ全6冊。
本当は単行本で揃えたかったんですが、一番最初が欠品で泣く泣く文庫本です。
もうね、一気ね(笑)アッと言う間に読み終わっちゃったの。
最近、これだけ集中的に読破したのは珍しいです。
思い出してみても「風と共に去りぬ」「細雪」「薔薇の名前」くらいでしょうか……。
夢中になって深夜までページをペラペラペラペラ、
前の巻が終わるとすかさず次の巻を手にしたのは。
スウェーデンの登場人物の名前が覚えにくいのにもかかわらず、
サラサラとページを捲ることが出来ました。

先ずね、映画を観たいと思ったのね。
スエーデン版のオリジナルは何故か食指が動かなかったのだけれど、
今回のハリウッドのリメイク版は主役2人が魅力的だったことと、
監督がデヴィッド・フィンチャーだったことが決め手でした。
デヴィド・フィンチャーは好きな監督なのね、スタイルがあるから。
だから先ず、映画を観る前に原作を読みたいと思った訳です。
僕、ミステリーの大ファンでもあるしね。

さて、「ミレニアム/ドラゴンタトゥーの女」の主人公、
リスベット・サランデル……近年稀に見る魅力的なヒロイン登場です。
主人公はジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストなんですけどね、
気が付くとリスベット・サランデルの魅力に首ったけでした。
人と、社会と全く関わり合えない孤独の天才ハッカー……。
こんなに寂しくて可愛らしくて守ってあげたい主人公がいたでしょうか?



どこで読んだのか定かではありませんが、
敬愛するメリル・ストリープの言葉に、

 「私が興味を持って演じた女性たち、後で考えてみると、
      必ずと言っていいほど精神に問題を抱えていました。」

と、言うのがありました。

映画に限らず、小説の主人公たち……。
魅力的な人物は必ずと言っていいほど人間的には問題を抱えています。
アル中だったり犯罪者だったり社会の鼻つまみだったり……。
例えばスカーレット・オハラ……絶世の美女だけど、
考えてみればあれほどイヤな女はいません。気性が激しく我儘勝手。
金のためなら妹の恋人を寝取ります。

実際は正統派の美女のルーニー・マーラがどうリスベットを演じるか?
はたまた、膨大な原作をフィンチャーがどう料理しているか?
大変に楽しみであります。映画は明日、公開!勿論、初日に駆け付ける予定です!
映画の感想はまた日を改めて今度……。
どうぞ毒吐かなくてもいいように……(笑)


草々

2012年2月9日


ブノワ。


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ジェフリー・ディーヴァーを読む。

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…………………………………………………………………………………………………………………………

僕の好きな店…………。

街角にひっそりとたたずむアンティークショップ、
季節の素晴らしい花で溢れるセンスのいい花屋、
手作りケーキと丁寧に淹れたコーヒーと、
趣味のいい器が心地よい幾つかのお気に入りのカフェ……と、
色々あるけれど、僕が一番好きなのは本屋。

本屋は本当にいい。
刷りたてのインクの匂いと紙の匂い……。
都心の巨大な本屋もいいけれど、古本屋はもっと素敵です(笑)
古本屋に行くと、まずするのは大きな深呼吸……かな(笑)



さて、本屋に行くといつも焦るのは、これだけの夥しい数の本……。
生涯で果たしてどれだけ読むことが出来るのかと言うことです。
殆ど無に等しいと言っても過言じゃないでしょうね……。

最近は忙しいことに加え、絶対に避けて通ろうと思っていたパソコンが、
今や当たり前のように生活の中に入り込み、
一日の中で可成の時間を占めるようになりました。
活字離れが言われるようになって久しいです。
一日24時間、何かに費やす時間が増えれば何かが減る……。
身体は一つですもんね。仕方ないです。

この所、チョッと思うことがあって、
心して読書をするようにしています。
先ず手始めに随分前に買って最初の数ページを読んだまま放り投げてあった、
ジェフリー・ディーヴァーの「スリーピング・ドール」から。
好きなんです、ジェフリー・ディーヴァー。
えげつない、強引、あり得ない……色々と言う人もいますが、
何でしょう……登場人物が魅力的なのかな。

クリスティーや横溝正史になど代表される、
所謂、「Who done it /犯人探し」は大方トリックが出尽くし、
今は、犯人の異常心理を描く作品が大半を占めています。
ミネット・ウォルタース、ルース・レンデル……僕の大好きな作家たち。
こうして推理小説界を見回してみると女流作家が多いですね。しかも英国。
アメリカのパトリシア・コーンウェルは、
デヴュー作で決してやってはならない掟破りをしたから、
それ以降、全然、読んでいません。
あんな反則が許されるなら誰にだって推理小説は書けるもの。
でも、こうして生き残っている所を見るとファンは多いのかな?

映画以上に映画的といわれるジェフリー・ディーバーの作品。
映画化に関しては最悪の配役で大いにズッコケた「ボーン・コレクター」。
あれ以降、映画化はとんと聞きませんが、
ディーヴァー自身は次々と趣向を凝らした作品を連発です。
リンカーン・ライムの「ウォッチメーカー」に登場したキネシクス捜査官、
(キネシクス=人の言動からその心理を読み解く捜査方法)
キャサリン・ダンスが主人公の「スリーピング・ドール」。
読み始めるとアッと言う間のエンディングでした。

矢張り本はいいですねぇ……真新しい紙、
カッチリ断裁された新しいページを捲る、インクの匂い……。
さてさて、次は何を読もうかな?
買ったままの本が山積みなのだけれど、
先日、偶然に寄った本屋にはディーヴァーの最新作、
しかも、ダンス・シリーズ「ロードサイド・クロス」が、
平積みになっていました。早速、手に取り会計に並ぶ僕。
これでまた秋の夜長の楽しみが一つ増えました。

…………………………………………………………………………………………………………………………

今日の写真は数年前に一人で訪れたフランス一美しい村の一つ、
リヨンス・ラ・フォレで撮った1枚。
村を散歩していてこう言う光景に出くわすと、
それだけで何だか嬉しい気持ちになります。
わざわざ車を飛ばしてやって来て良かったなぁ……って。
リヨンス・ラ・フォレは小一時間で廻れてしまう小さな村。
ルーアンから車で40分。薔薇の村としても有名です。
窓辺に飾られた人形たち……左右の窓からこんにちはです。


草々

2010年11月10日


ブノワ。


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著者近影。

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Photographed by Mutsuko Kudo


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おねぎですっ!(興奮冷めやらぬ裏返った声で。)

久しぶりの感動です!
凄い!凄い!美しすぎる!
こんなに素晴らしくも美しいモノがこの世のなかにあったなんて!
読み終わったあと、溢れる涙で前が見えませんでした!
もう一生分の涙が涸れるほどの感動!
ページを捲る手が震えるほどの感動です!
アナタも見なさい!読まなきゃダメッ!
読み終わったあと、アナタは感動で席を立てなくなります!
そして、この感動を友人に伝えたくなる伝えたくなる……んガガガガっ!

兎に角、今年最高の一冊!
そこのアナタ、味噌汁なんか作っている場合じゃない!
スグに本屋に走るのよっ!(笑)

…………………………………………………………………………………………………………………………

著者近影です!(笑)

ことの次第、顛末はこちら……。

撮影は25年来の大親友の工藤睦子さん。
ハッセルブラッドのカメラで撮影後、
わざわざ手焼きで味わい深い印画紙にプリントしてくれました。
一生の宝物……そうだ!遺影にも使おうかな(笑)


草々

2009年9月16日


ブノワ。


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香水 ある人殺しの物語。

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拝啓

早いもので2月ももうスグ終わり……Gさん、その後、如何お過ごしですか。
最近お仕事の方が忙しいみたいですね。もう新年会と言うには遅過ぎますが、
近々、一杯やりたい物です。お時間、作って下さいね。

さて、来月早々に公開の映画「パフューム ある人殺しの物語」に合わせて
原作の「香水 ある人殺しの物語」を再読してみました。Gさんも既に読んでいる本ですから、
今更内容には触れませんが、今季読み返してみて面白いなぁと思ったのは、
この本の中には夥しい数の「匂い」と言う単語が出て来ます。
もう、殆ど一行置き(笑)凄い時には一行の中に3回も出て来る事があります。
この原作、およそありとあらゆる匂いをもつ物の名前が羅列されていますが、
読むにあたってはそれらの匂いを知っているに越した事はありませんね。
知っている数が多ければ多いほどこの本を楽しめる。決して感情移入は出来ないし、
共感する事の難しい主人公ですが、そんな世にも稀な主人公の事を知る手掛かりにはなります。
自らの体臭を全く持たない稀代の殺人鬼、ジャン・バティスト・グルヌイユの物語り……。

匂いと香りの違いに関しては、確か前にもお話しした事がありますが、
匂いに関しては、それこそ数え切れないほどの思い出があります。
旅先での様々な経験、その土地土地でも違いますし、同じ土地でも季節によって全然変わって来る。
その物が発する匂い、例えば、大自然の海の匂い、燦々と降り注ぐ太陽の匂い、
そぞろ歩く森の中の鬱蒼とした匂い……太陽の匂いなんかは直接ではなく、
例えば、日向ぼっこしている猫のお腹の匂いとかで間接的に分かります。
だけど、人工的な匂いに関しては圧倒的にパリですね。僕の中では、パリ=香水の街なんです。
「香水 ある人殺しの物語」にもあるように、18世紀のパリの街の悪臭は
想像を絶する物があったようです。人間の死体すらそのまま街中に放置され、
乞食も貴婦人も分け隔てなく放つ悪臭。窓からばら撒かれる汚物、
一雨降れば路ですら汚物が流れる川と化し、「運び屋」と言われる
人をおぶって汚穢の中を運ぶ職業が流行ったそうです。セーヌも汚水の流れ、淀みと化し、
ヴェルサイユ宮殿でも貴人達はその場でしゃがんで用を足したそう……。
そんなフランスの事です、香水の発達は必然だったのでしょうね。

あれは初めてのパリを旅した時の事、友人に土産を乞われるままパリでも有名な香水店に行きました。
店に入るやいなや、鼻を突く強烈な香水の匂い……まるで匂いのバリアを張り巡らせたかのよう。
目も開けていられないほどの匂いは、やがて息苦しさを伴い、目は涙目に……。
友人ご所望の薔薇の香水を小さな小瓶に詰めて貰って早々に退散したのでした(笑)
僕の後から入って来た豪華マダムのバッチリと引かれたリキッドのアイライン、
店の匂いに負けじとばかりタップリと身に振りかけられた香水、
マダムが買って行った匂い石鹸とおぼしき球形の物体が放つ鼻も曲がらんばかりの匂い……。

パリに住む日本人女性の友人は、恋人にするなら絶対に日本人と声高に宣言します。
何故なら日本人は体臭がないから、あるいは少ないからだそうです。
欧米人は体臭がキツくて敵わない、友達になる事すら絶対に無理と言い放ちました。
その時、季節は真夏の7月。僕は旅行でパリを訪れていて、
朝から一日中、郊外の街を歩いて来て、夕方に仕事帰りの友人とカフェで待ち合わせたのです。
段々、熱く語り始める友人を前に、居心地が悪くなって来る僕(笑)
当然、真夏の炎天下を一日中歩いたのです、汗をビッショリ掻き、
自分でも気になるくらい汗臭かった……「その体臭って友人になる事もままならないの?」と、聞く僕に、
大きくコックリと頷く友人(笑)これはこの子と友達になるのは難しいかも……。
フと、そう思いつつも現在に至る訳ですが、欧米人の方が体臭がキツいって言うのは間違いで、
かえってアジアの人の方が基本的に体臭はキツいのではないでしょうか。
ただ、入浴方法や風呂を使う頻度、諸々の関係であまり匂わないのだと思います。

僕は清潔でさえあれば汗の匂いなんてあまり気になりません。
但し不潔なのは困っちゃいますけどね(笑)誰だって汗を掻いて一日経てば匂います。
全く体臭を持たない主人公のジャン・バティスト・グルヌイユじゃないんですから。
最近はスッカリ香水には興味をなくし、殆ど身に着ける事がなくなりました。
その昔は洗面所には20種類の香水が並ぶほ好きだったのに……。
身に纏う匂いより、そのものが発する匂いに興味が移ったせいでしょうか。
人の好みは変わる物ですね。勿体無いから風呂で使ったりしていますけれど……。
写真は匂いを抽出する植物としては非常にポピュラーなラベンダー……気分を沈める効果があるとか。
随分前の夏、パリから遥か離れたレ島を訪れた時に撮りました。
小さな街には、このようにラベンダーやタチアオイが自生していて風情満点。
夜は10時まで明るい夏のフランス、食事前の散歩の時に写した1枚です。

映画は公開されたらスグに観に行きたいです。どんな出来でしょうね。
感想はまた今度にでも、出来たら一緒に観に行きたいですね!


敬具

2006年2月24日


ブノワ。


[香水 ある人殺しの物語/Das Parfum, Die Geschichte eines Morders (1985)
/Patrick Suskind 著、池内 紀 訳、文芸春秋 刊]

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by raindropsonroses | 2007-02-24 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(23)

カポーティ……白バラ。

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前略

早いもので今年も2月……M.N.さん、お元気ですか。
年末に素敵なワイン・バーに連れて行って戴いてから随分時間が経ちました。
その後、お変わりありませんか。僕は冬の薔薇の作業が一段落し、
ようやく自由になる時間が出来たところです。

ワイン・バーで教えて戴いたトルーマン・カポーティの短篇集、「ロール・カラー/観察日記」
家の本棚にこの短編が収録されている「犬は吠える」がありましたので読み直してみました。
M.N.さんが僕にって勧めてくれた「白バラ」、あれ短いですね。
文庫本だと確か8ページくらでしたか……アッと言う間に読んでしまいましたが、
心は1947年6月の夕方4時のパリ、パレ・ロワイヤルの中庭にタイム・スリップしていました……。

まだ「遠い声 遠い部屋」一冊しか出版していない駆け出しのカポーティが、
フランス文壇の錚々たるビッグ・ネーム、ジャン・ジュネ、カミュ、ジッドを無視し、
そして、ジャン・コクトー当の本人を目の前にして傲慢にも言った一言、

 「フランスの文壇で唯一、尊敬出来るのはコレットだけ……」

コクトーの方が一回りも二回りも臈長け、人間的にも寛大だった事から
コレットの自宅のお茶に招待されると言う幸運に見舞われたカポーティ。

このフランス文壇の伝説の女流作家との邂逅、一種、異様な状況下は、
まるで舞台装置か映画のセットのような豪奢な調度品、絹貼りの壁、
ビロードのカーテンから漏れる6月の光、灰色の猫、オレンジ、薔薇、麝香、ライム、
おそらくは当の女主人の体臭まで交じった強烈な匂い……。
圧倒的な女主人の存在と、カポーティの目を釘付けにしたのは、
別れ際にコレットからプレゼントされたコレクター垂涎の一品。
大きく目を見張るこの世の物とは思えない骨董品のフランス文鎮の煌めき。
野球のボール大のバカラ製のクリスタルの文鎮の底には
グリーンの葉を付けた白い薔薇のオブジェが沈んでいました……。

 「ねぇ、あなた、自分でも大切なものじゃないと贈り物としてさしあげてもしようがないでしょう。」

コレットの一言と共に自らもフランス文鎮の収集者になってしまったカポーティの姿が
ユーモラスに描かれていましたね。前に一度、読んでいるハズなんですが、
再読して新たに新鮮な印象を持ちました。きっと、実際にフランスに行き、
自分のこの足でパレ・ロワイヤルの中庭に立ってみたからでしょうか。
M.N.さんにはいつも色々教えて戴いちゃって感謝の言葉もありません。

今日はお礼に僕が撮ったパレ・ロワイヤルの中庭の白い薔薇とプラム色の薔薇の写真。
この中庭にはこの2種類が随分前から植えられています。
名前は分かりませんが、秋にも大輪の花を沢山咲かせる優良種、
プラム色の薔薇は、まるでコレットの部屋を思い起こさせるのような強烈な匂い。
白い薔薇は一番花が終わり、赤い新梢を伸ばしています。
カポーティの見た風景とは違うでしょうけれど、彼がこの場所に立って
コレットのアパートの窓を見上げていたかと思うと感慨深いものがありますね。

近々、例のワイン・バーにまた行きませんか。
クスクスの炒飯、また食べたいです(笑)ではでは、長くなりました、お元気で!


草々

2007年2月10日


ブノワ。


[Truman Garcia Capote (1924~1984)]
[白バラ(The White Rose)/トルーマン・カポーティ 著 (1970)]
[犬は吠える(The Dogs Bark, Public People and Private Places)
/トルーマン・カポーティ 著/小田島雄志 訳/早川書房 (1973)]
[Sidonie-Gabrielle Collette (1873~1954)]
[Jean Cocteau (1889~1963)]
[Jean Genet (1910~1986)]
[Albert Camus (1913~1960)]
[Andre Paul Guillaume Gide (1869~1951)]
[Baccarat]

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by raindropsonroses | 2007-02-10 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(10)

スーツケースに一冊……危険な関係。

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拝啓

11月だと言うのに昼間は随分と気温が高いですね。
Uさん、その後、お変わりありませんか?出張はどうでしたか?
僕は相変わらず、平々凡々、十年一日のような生活を送っています。
旅の疲れもぼちぼち取れ普通の生活に戻ったところです。

さて、秋は何と言っても食欲の秋、そして読書の秋!
別に秋の夜長じゃなくても読書は出来るけど、気候的にも秋が一番なのでしょう。
僕は旅行、特にパリに一人で行く時、必ず本を一冊持参します。
昼間歩き疲れて夜遊びの類は一切しない僕、ワインなどを飲みながら
持参した本を読むんです。個人のアパートを借りた場合などは、
その部屋に置いてある蔵書をパラパラやるのもいいものです。

今回の旅に僕が持参したのはラクロの「危険な関係」です。
この本、大好きなんですよ。そのまま映画化されたハリウッド版「危険な関係」も
グレン・クローズとジョン・マルコヴィッチの好演で傑作だったけど、
ジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ主演の現代版や
韓国版、日本版、翻案された作品も枚挙にいとまがありません。
現在ではスッカリ死語となった、「悪徳」「貞淑」等の言葉が持つ響き、
書簡集と言う体裁、この作品を魅力的、傑作にしている要因は沢山あります。
小説の舞台はパリですが、ラクロが軍人としてグルノーブルに
7年間滞在していた時に収集した資料を元に編纂された「危険な関係」。
奸知に長けたメルトイユ侯爵夫人と、まるで惑星と恒星のように
付かず離れ悪巧みに乗る似た物同士のヴァルモン子爵。
二人にチェスの駒のように操られる娘、セシル・ヴォーランジェとダンスニー騎士、
二人のゲームの標的になるトゥルーヴェル法院長夫人。
絡まった糸のような関係が解きほぐされると同時に訪れる悲劇、
悪辣なゲームの先に残された物は?書簡集と言う体裁なので、
各々の心の内がそれぞれの言葉で語られます。擦れ違う解釈、合致しない思惑、
文庫本で上下2冊ですけれど、非常に読み応えのある作品です。

ワインやシャンパンのグラスを傾けながら秋の夜長にパリで読む「危険な関係」、
一日の疲れで眠りに落ちるまでの読書、なかなか乙なものですよ。
今日の写真は昨年の秋に訪れたパリの「郵便博物館」で撮った一枚。
昔はペンとインクで流麗に手紙をしたためていたんですよねぇ。
封筒と言うより、分厚い手透きの紙に書いた手紙を折畳み、糊付の代わりに
熱したワックスを垂らしてスタンプをドンっ!何とも優雅な習慣じゃありませんか。
僕も形だけは真似するんですが、いかんせん内容がねぇ(笑)

今日は「危険な関係」を真似てペンを取ってみました。
返事は結構ですからね。近々、ご飯でもしましょうか。Uさんもお元気で!


敬具

2006年11月15日


ブノワ。


[Pierre Choderlos de Laclos (1741~1803)]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1782)]

[Dangerous Liaisons/危険な関係 (1988)]
[Glenn Close (1947~ )]
[John Malkovich (1953~ )]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1959)]
[Jeanne Moreau (1928~ )]
[Gerard Philipe (1922~1959)]

[La Musee de la Poste]
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by raindropsonroses | 2006-11-15 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(16)

今年はまさに……沈黙の春。

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拝啓

Yくん、すっかりご無沙汰していますが元気にしていますか。
パリはどんな感じ?さすがに春らしくなって来たんじゃないですか。
2年前に始めて体験した春のパリが懐かしいです。

さて、その時お土産に持って行ったレイチェル・カーソンの「沈黙の春」。
Yくんは一晩で読んじゃったんですよね(笑)日本語に飢えているとは言え
あまりに読むのが早いのでビックリした覚えがあります。
実は僕も、Yくんにプレゼントするために行った本屋で自分の分も含めて
2冊買っておいたんです。先日、それをようやく読み終えました。
化学薬品、農薬が自然界に及ぼす影響を書いたこの「沈黙の春」、
薔薇を育てている僕には非常に重要な本なんですよ。
ご存知の通り、薔薇には数え切れないほどの害虫が付き、罹る病気も数知れません。
今では、減農薬、無農薬の運動が活発になって来ましたが、
一昔前には、薔薇栽培=薬剤散布と言うのが当たり前でした。
僕はどんな育て方をしているかと言うと、以前は必要に応じて
最低限の薬を散布していましたが、ここ数年はスッカリやめてしまいました。
一番大きな理由は、ウチには可愛い猫3匹がいると言う事。
季節が良くなると、バルコニーで一日中自由に遊び回っている猫達。
小さな身体です、薬剤散布の影響は計り知れないですものね。
バルコニーの端っこに真っ直ぐに延びる排水用の溝に溜った水、
お園なんかは、これをピチャピチャ飲みますからね!

かと言って、全く何もしないで害虫や病気を防げる訳ではありません。
皆さん、色々と研究して無農薬で頑張っているみたいですが、
生憎、僕は横着者が面倒臭がりの豪華衣装を着て歩いているようなもの(笑)
もっぱら、害虫を見付けては捕まえては、家の前を走る大通りにポイっ!
直接触るのはイヤですから、くっ付いている葉っぱを最小限に切って
葉っぱごと大通りにポイっ!常に決して自分の手は汚さないのです(笑)
幸いな事に、ウチは物凄く日照時間が長く、オマケに風通しがいいのです。
そんな訳で、ウドン粉病などの被害は比較的少ないみたいです。
同じく薔薇を育てている友人が薔薇を見に来て先ずビックリするのは、
ウチの薔薇がウドン粉病にあまり罹っていないと言うのです。
それでも、品種によっては、毎年、毎年決まって同じ病気に罹るものがあります。
色々と試してみましたが、矢張りどの方法も帯に短し襷に長し、
これと言う決定打は見付かっていません。マメに薔薇を見回り
放って置かずにスグに対処する、この方法が一番いいみたいです。

「沈黙の春」は、一冊丸々、農薬が自然界に及ぼす破壊的な影響について
詳細な実験データを元に厳しく言及しています。
一つ、分かりやすい例を挙げると、日本から渡来したマメコガネを駆除するために
空から飛行機で農薬を散布、その結果、ありとあらゆるものに影響が出て
最後には人間が死ぬケースも出て来た事例が挙げられています。
目に見えないミジンコが化学薬品に汚染され、それを食べた小魚に毒が蓄積され
さらに、大きな魚、さらに大きな魚、最後にそれを食べた人間がどうなるか……。
微生物に蓄積された化学薬品が、自然界の摂理によって、次から次へと
濃く、さらに強力になって動物の体内に蓄積されて行く様は
実験によって立証されていますね。地上に撒かれた化学薬品は、
やがて雨水で流され川に入り、それが最終的には海に流れ込み
それを食べる微生物、それを食べる小魚、さらにそれを食べる魚……。
自然界の連鎖はどこをとっても切り離せるものではなく、
密接に一つの糸で繋がっているのです。夥しい症例を持って告発する「沈黙の春」、
読んでしまったら簡単には薔薇を消毒出来ないじゃないですか。
今の所、僕の対策は、薔薇をマメに観察する事、それしかありません。

今日の写真は、去年の「第7回 国際バラとガーデニングショウ」で撮った一枚。
この時はシンボル・ガーデンに並んでようやく入り、さて写真を……、
そう思った時にオバサマ攻撃にあったと言う訳です。
後ろからどつかれる、足はしこたま踏まれる、カメラを構えていると
さぁ〜ッとカメラの前に立ちふさがる、シャッターを切る瞬間に
ドォ〜んと後ろから押される……怒りのあまり、こめかみに血管が浮き上がり
鼻から熱い怒りの溜め息が出て来ましたが、そこは我慢、我慢、我慢。
皆さん綺麗なものを見ようとなりふり構わず必死なのです。
それならばと、いっその事、撮る瞬間にカメラを動かして撮ったのがこのシリーズ。
ピンボケのアンディー・ウォーホールみたいな一枚です。

ウチの薔薇は花が終わり、これから夏の管理に入って行きます。
飛来するコガネムシ、ウドン粉病はそれほどでもないけれど、
夏の終わりから蔓延する黒星病……これだけは何とかしたいですね。
市販されている薬の中には決定的に効くものはありません。
それならば、いっその事、薬は撒かず、自然に育てようと思うこの頃です。
天候不順で薔薇が思うように咲かず……意味は違うけれど、
今年もある意味で「沈黙の春」でしたね。


敬具

2006年5月27日


ブノワ。


[Rachel Carson (1907~1964)]
[Silent Spring/沈黙の春 (1962)]
[Andy Warhal (1928~1987)]
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by raindropsonroses | 2006-05-27 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(20)

夢を見ているのかい?……ブロークバック・マウンテン。

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拝啓

4月に入り、本当に暖かくなって来ました。昨日の強風は玉に瑕だけど、
休日にはバルコニーで過ごす事が多くなり、少し日焼けです。
Kuroちゃん、その後、如何お過ごしでしょうか。
あなたには会えなくなってしまいましたが、折々にあなたの事はを想いだします。
特に、いい映画や芝居を観た時、素晴しい本を読んだ時……。
20年間、あなたには、本当に色々な事を教えて貰いましたから。
今日は素晴しい映画の原作に出会えたのでペンを取ってみました。

先日、地元のシネコンで「ブロークバック・マウンテン」を観て来ました。
この時期になると、薔薇の作業が多くなりますし
映画館の暗闇に座っている場合じゃないんですけどね(笑)
実は今日で3回目なんです。ロードショーで3回も観るのは久し振りかなぁ。
学生時代に「エデンの東」と「ディア・ハンター」を観て以来でしょうか……。
映画は良く出来ているし、なぜここまで惹き付けられるのか、
その魅力を確認しに行きたかったんです。やっぱり、再度、感動して、
アニー・プルーの原作とパンフレットとサントラ盤を買っちゃいました。
さすがにポスターは買わなかったけれど、DVDは買うでしょうね(笑)
映画好きなKuroちゃんなら、そちらでとっくに観て興奮しているでしょうし、
原作も読んでいる事でしょう。どんな感想を持ったかとても知りたいです……。
是非、あなたの意見を聞いてみたい……。

映画は、これまでに存在した6つの芸術(文学、音楽、絵画、建築、彫刻、演劇)
に続いて「第7の芸術」と言われていますね(所説、色々ですが……)。
そうそう、パリ4区に、この名前が付いたホテルがありましたっけ……。
映画とは、「音が出る動く絵」です。映画が他の芸術と大きく違っている所は、
他の芸術では、殆どの部分を受け取る側が、頭の中、心の襞で想像して
補いながら一つの世界を作るのに対し、映画は、絵が動き、
音楽が情感を高め、台詞で状況や主題や感情を表現出来る、
何でも来いの最強の表現方法だと言う事。所がどっこい、そうは問屋が卸さない、
何でも出来るが故に、やり過ぎたり説明が多過ぎたりCGを使い過ぎたり
声高にテーマを台詞でペチャクチャ喋ったり……。

最近では、映像面のデジタル化が進み、
殆ど表現出来ないものはない所まで技術が進んで来ています。
考えようによっちゃ、何でも表現出来る訳です。そう、「何でも描ける」。
最近のCG、特に、「僕達、こんな事も出来るんだよ!」的な
過剰なまでの特撮にはウンザリです。技巧に溺れてしまい、
本来、描かなければならない事がスッポリと抜け落ちてしまっている。
所謂、「人間が描かれていない」って奴ですね。悲しいくらいに薄っぺらな人間像。
そんな中、この「ブロークバック・マウンテン」は、久し振りに
しっかりと人間が描かれていました。登場人物、全員の人生が描かれている。
美しい画面に、最小限の音楽、台詞は必要最小限タイトに削り取られ、
観客は優れた文学の行間を読み取るかのように、自分の感性で
作品に参加出来る不思議な感覚。言葉にならない登場人物の台詞を
自分の頭に中で言ってみる。自由に想像する余地が残っている映画でした。
アニー・プルーの原作とは微妙に違う所もあるけれど、それはそれ、
原作は、「匂い」と言うキーワードが非常に上手に使われていて
短編ながら、読者を1963年、2人が出会った夏にトリップさせてくれます。
とてつもなく技巧的な作品、女性でしか描けない描写も沢山あります。

さて、映画は、今日が誕生日のヒース・レジャー演ずるイニス・デルマーと
ジェイク・ジレンホール演ずるジャック・ツィストの数少ない台詞以外にも、
特筆すべきは2人の絡み合わない視線が多くの事を雄弁に物語っている事。
普通は、視線は絡み合って初めて物を言うものだけれど、この作品では
絡み合わない視線が何よりも雄弁に2人の心の移り変わりを物語り、
さらには当時の同性愛の非常に厳しい社会的位置を物語っています。
反対に、ラスト近くでジャックの母とイニスの間で交わされる視線の暗黙の理解。
ジャックの母は、自分の愛する息子が選び、帰って来る度に顔を輝かせて話し、
愛した人(男!)を、初対面で理解し受け入れ、自分もまた愛する……。
「もし良かったらまた会いに来て……」。これは、帰り際の母親の台詞。
まさに「絵で見せる」映画のならではの醍醐味ではないでしょうか。

2人が炎を囲みながら回し飲みするウィスキー……「Old Rose」。
チョッと検索してみたんですが、「Old Rose・Bourbon」「Old Rose・Scotch」
「Old Rose・Whisky」何れで検索しても、薔薇の名前がダァ〜っと出て来ます。
薔薇の種類には「Bourbon」「Scotch」両方ともあるからなんです(笑)
また、「Whisky Mac」と言う黄色いモダン・ローズもありますし、
映画で使われた「Old Rose」と言うウィスキーが果たして本当にあるのか
または、映画の中のオリジナルなのかはチョッと調べが付きませんでした。
Kuroちゃん、お酒の仕事をしていたあなたです、
何かこのウイスキーに付いて知っているんじゃありませんか?

オールド・ローズで僕が大好きな薔薇に
「Belle de Crecy」と「Belle Isis」と言う大変に似た薔薇があります。
この薔薇は両方ともガリカと言う種類に属し、強烈な匂いに可憐な姿。
同じ時期に咲きますから我家では並べて置いてあるんですよ。

炎の前に立つジャックを後ろからしっかりと抱き締めたイニス……。
決して恵まれた少年時代を送ったとは言えないお互いが、
初めて他人に心開き、2人の呼吸が一つになった瞬間、
2人の心臓の鼓動が同調する瞬間、イニスに抱かれながら立ちすくみ
静かに静かに訪れた嘘偽りのない魔法のような幸福の瞬間……。
この写真は、何だかそんな2人に見えて仕方ありません。
この映画がキッカケで結婚したヒース・レジャーとミシェル・ウィリアムス。
2人の間に出来た子供の名付け親にジェイク・ジレンホールがなったそう。
祝福された赤ちゃんの名前は、Matilda Rose……。

「自分で解決出来ないのなら、それは我慢するしかないのだ……」

アニー・プルーがよく使う格言めいた言葉。
クローゼットを締め、心の中にジャックを閉じ込め、
自らも厳しい運命に甘んじる選択をした瞬間……そして、例の台詞。
しかし、それはイニスにとって天上の幸せなのでしょう。
ラスト近く、迫る夕闇の中で2人で焚火を囲みながら
イニスがジャックに言う台詞……「天国を見ているのかい?」
Kuroちゃん、その時、あなたの事を少し思い出しました……。


敬具

2006年4月4日


ブノワ。 


[Brokeback Mountain/ブロークバック・マウンテン (2005)]
[Annie Proulx (1935~ )]
[Heath Ledger (1979~ )]
[Jake Gyllenhaal (1980~ )]
[Michelle Williams (1980~ )]

[Belle Isis (G) Parmantier, 1845]
[Belle de Crecy (G) Roeser, pre-1836]
[Whisky Mac (HT) Tantau, 1967]
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by raindropsonroses | 2006-04-04 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(27)

どこまで手を加えますか?……よみがえる名画のために。

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拝啓

M君、その後、如何お過ごしですか?
フィレンツェはクリスマス一色でしょうか?
東京の花屋はポインセチアで埋め尽くされ、街はクリスマスソングが溢れ
狂ったようなイルミネーションにクリスマスツリー乱立です(笑)

さて、先日の一時帰国の時は、ゆっくりと話す事が出来て良かったです。
その時、話しに出た本、「よみがえる名画のために」を
改めて本棚から引っ張りだしてパラパラ捲ってみました。
僕がこの本と出会ったのは街の小さな古本屋でした。
タイトルに惹かれて買い求めましたが、実は、僕も素人の真似事ながら
色々な物の修理、修復(大袈裟かな?)をするのが趣味なんです。
パリの蚤の市で買い求めたボロボロの油絵を再生したり
木彫の折れた箇所や虫食いの部分を修繕したり、彩色したり。
また、太陽光線で焼けてしまい色褪せた本を元通りの色にしたり
果ては、着物の虫食いを修繕したり、額縁の掛けた部分を補修したり。
まぁ、腕はいい方だと思いますが(そう思わないとやっていられない……)
要するに、何でも屋ですね(笑)僕の趣味の一つなんです。

この「よみがえる名画のために」が大好きな理由は、
著者の黒江光彦さんが、単身パリに修復師修行に訪れた貴重な時間の記録
確かに、現在の修復と言う観点から見れば、少々大時代的な所もあるかもしれません
ただ、修復のパイオニア的存在の黒江さんの修業時代の様子が
当時(1964年12月)のパリの様子とともに克明に記されています。
弟子入りした師匠のマレシャル氏と母親のマレシャル夫人。
夫人の亡き夫はクラシック好きには懐かしいチェリストのモーリス・マレシャル氏。
銀座の山野楽器から出ている「モーリス・マレシャル全集」を持っている
チェロ好きの僕には何とも興味津々の本なんです。

最初の写真は、10月に訪れたトロワの美術館で撮影しました、
「Les Fils Prodigue Chez les Courtisanes」の部分です。
修復中の作品が何故展示されているのかは謎ですが(笑)
絵具が剥がれ落ちそうな箇所を日本の和紙で仮止めしてあります。
手前に立てかけてある楽器は、チェロではありませんが、
ヴィオラ・ダ・ガンバかヴィオールでモーリス・マレシャル氏と縁深いです。
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この美しいオールド・ローズの写真は、6月に訪れた
Varengeville-sur-Mer、ヴァランジュヴィル・シュル・メールで撮影しました。
黒江さんが修復したゴッホの作品、今は、国立西洋美術館の一階の
常設展示の部屋を入った所、スグを左後ろに振り返った所に飾ってある
小さな小さな薔薇の絵に似ています。

所で100人の人間に、ミロのヴィーナスの欠けた両腕を再現しなさいと課題を出し
万歳をした恰好に両手を上げて修復する人は一人もいないと思いますが、
絵画の場合、剥がれ落ちた絵具の層を糊で貼り付けたり
後年、画家本人以外の誰かが描き足した部分を洗浄したり
虫が喰った支持体(木のパネルやキャンバス)を修復したりはいいでしょう。
ミケランジェロの「最後の審判」や、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のように
徹底的な科学の力での分析、そして、洗浄、加筆……出来上がった
眩いばかりの新しいミケランジェロとダ・ヴィンチ……M君はどう思いますか?
僕は、これらの作品は、既に全く違う別の作品、
巨匠が描いた作品とは別のものになってしまったと思うんです。
どれだけ学術的に正しくても、偉い先生が筆をとっても僭越至極。
どこまで加筆するか?経年劣化ではいけないのか?今後、何千年もの間
同じ状態で保存しなければならないのか?僕には大きな疑問符が一つ、
これは、僕達現代人の奢りと慢心に思えて仕方がないのですが……。
そんな訳で、僕は「最後の審判」も「最後の晩餐」も見ることはないでしょう。
M君の仕事とは相反する僕の意見、でも、チョッと分かってくれますよね?


敬具

2005年12月23日


ブノワ。


[よみがえる名画のために/黒江光彦 (1935~ ) 著]
[Maurice Marechal (1892~1964)]
[Les Fils Prodigue Chez les Courtisanes 部分/
Hiemonymms Janssens (1624~1693)]
[Vincent van Gogh (1853~1890)]
[Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni (1475~1564)]
[Leonardo da Vinci (1452~1519)]
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by raindropsonroses | 2005-12-23 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(10)

本当に青いと思いますか?

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拝啓

Aさま、先日はすっかりご馳走になってしまいました。
今日はお礼に、僕の愛読書、最相葉月さんの「青いバラ」と
僕が作ったオリジナルの薔薇の写真をお送りしますね。
最相葉月さんの本は、「絶対音感」を読んだのが初めでした。
それはそれは面白く、貪るように読んでしまったものです。
その次の作品が、この「青いバラ」なんです。
この「青いバラ」は、最相葉月さんが綿密なリサーチで書き上げた傑作で、
日本の薔薇の父と言われている鈴木省三さんのインタビューを縦糸に、
薔薇の歴史の様々なエピソード、バイオの興味深い事情までを横糸に綴った作品で、
例えば、どのページを捲ってみても非常に読み応えがある一冊に仕上がっています。
行間から、最相葉月さんのバイオに対するスタンスも見えて来ます。
「青いバラ」の冒頭に、鈴木省三さんの言葉が載っています。

「青い薔薇があったとして、あなたは綺麗だと思いますか?」

Aさんはどうお思いですか?僕は……多分、いえ、絶対に綺麗だと思います。
濃いビロードのような紺色に淡いグリーンの葉、
若しくは、青空のようなブルーに濃い緑色の葉……。
さぞかし綺麗だと思います……でも、どうだろう、やっぱり分かりません。
ただ、「青い薔薇=不可能」この言い伝えの通り
青い薔薇は絶対に出来ないと思っていますし、
言い切ってしまえば、出来ない方が良いとさえ思っています。
いいじゃないですか、薔薇に青い薔薇がなくっても。

現在、巨大洋酒メーカーがバイオ・テクノロジーの力を使い
長い月日と巨額の資金を投入し「青い」と称される薔薇を作りました。
Aさんはこの「青い」と称される薔薇を見てどう思われますか?
青いと思いますか?どう見てもピンクがかったラベンダーですよね?
この辺の、青くもない花を「青い」と言ってしまう傲慢さは大いに疑問です。
世の中の薔薇愛好家の非常に冷たい反応も頷けると言うものです。
先人達が交配で苦労して作り上げた「青い薔薇」の数々、
それらはどれも魅力的で、現在もそれぞれ人気を誇っています。
そんなに無理をしてまで「青い薔薇」と言う必要がありますか?
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僕が今、一番青に近いと思っているのは、この二枚目の写真の「青竜」です。
青いと言うよりは、一番、赤味が少ない薔薇っていう事でしょうか……。
非常にか弱い薔薇ですが、意外にしっかりと花を付けてくれます。
匂いは殆どなし、葉も花弁も艶が無く、どちらかと言うとカサカサした肌触りです。
チョッと斑が入るかな……少なくともウチの「青竜」はそんな感じです。
小林さんが長年苦心して作った「青竜」…こう言うのを「青い薔薇」と言うのです。

大分前になりますが、朝のニュースの番組で
「青い薔薇が出来ました!」との報道!台所にいた僕は
慌ててテレビの前に来てみれば、どこかの薔薇園(薔薇生産業)の女性が
誇らしげな面持ちで青い薔薇を持っています。
その薔薇は、本当に目が覚めるように青く、赤味は全くありませんでした。
正真正銘の「青」……暫し、ポカーンと眺めていましたが
何と、この「青い薔薇」は白い薔薇にインクを吸わせて作ったものだったのです。
驚くと共に、これを「青い薔薇」を言い切ってしまう生産者に二度ビックリ。
半分怒りのような気持ちだったのかもしれません。

そんなことを言うなら、この最初の大きい写真、僕が作ったオリジナルの薔薇だって
立派な「青い薔薇」と言えると思いませんか?
交配をやって、たった3年でこんなラベンダーの薔薇が出来る事もあるんです。
全ては神のみぞ知る……でも、僕はこれを「青い薔薇」とは呼びません。
だって、全然、青くはないし、植物に関わる者は傲慢ではいけませんから。


敬具

2005年12月21日


ブノワ。


[青いバラ/最相葉月 著 (2001)]
[Seiryu/青竜 (HT) Kobayashi, 1992]
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by raindropsonroses | 2005-12-21 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(27)