匂いのいい花束。ANNEXE。

カテゴリ:Sound of music。( 5 )

山口百恵はアルバム歌手である。

e0044929_23235413.jpg
拝啓

Eさん、梅雨も明け、いよいよ暑くなって来ました。
夏女のEさんの季節到来ですね。相変わらず日焼けで真っ黒ですか?(笑)
僕は薔薇と猫と共に秋になるのを大人しく待っている所です。

さて、先日はわざわざ素麺を送って下さり大変に恐縮しております。
夏は矢張りなんと言っても素麺ですもんね。

あの僕が自分で編集したCD、
この所、毎日〜パソコンに向う時は聴いているCDなんです。
そう、僕の永遠のアイドル、山口百恵のベストCD。
ベストCDと言ってもシングル盤は1曲も入っていない全53曲。
ここから一曲たりとも減らせません(笑)

僕は、山口百恵は歌手、女優、アイドルである以上にアルバム歌手だと思うんです。
シングル盤のヒット曲も沢山あるけれど、
なんと言っても素晴らしいのはアルバムに収録されている曲。
普通、当時のアイドル歌手は年に3〜4曲のシングル盤を出していました。
他の歌手はどうだか分からないけれど、
山口百恵の場合はシングル2曲出た時点でそれらを収録したアルバムが1枚……。
従って年に2枚のアルバムがリリースされる訳ですね。
確かそんなペースでしたっけ……。

山口百恵のアルバムを初めて手にしたのは、
友人に貰ったレコード券が手元にあったから。
買ったアルバムは「GOLDEN FLIGHT」でした。
これは山口百恵初の海外録音、ロンドンのスタジオで録音されました。
収録されているシングル盤は「イミテーション・ゴールド」、
新しくアレンジを変えたバージョンでした。

大体、アイドルのLPなんてやっつけ仕事的だと馬鹿にしていたのですが、
あまりの質の高さにビックリ、以降、引退宣言をした後の「春告鳥」まで、
少し遡って「百恵白書」まで全てのアルバムを買いました。
山口百恵のアルバムのベストはNHKの特別番組のために作られた
「A Face in a Vision」と「二十歳の記念碑・曼珠紗華」でしょうか。
前後、数作の驚異的なクォリティーの高さ……。

山口百恵は当時としては珍しくセルフ・プロデュースをしていました。
勿論、ディレクターはちゃんといましたが、自分の意見を可成り色濃く反映した曲作り、
宇崎竜童と阿木耀子夫妻をメインに据えた作曲陣、
彼等の創作の一番油が乗った時期に丁度ぶつかった幸運もあるけれど、
彼女自身、自分の中に密かに存在する「日本人の演歌心」の部分を重々承知していての選択、
松任谷由美でも中島みゆきでも阿久悠でもなく、
宇崎、阿木夫妻を指名した慧眼、彼等も演歌色が強いですもんね。
一曲一曲に籠められたドラマとカメレオン的に変幻自在な女性像、
よく「歌は3分間のドラマだ」と言われますが、
どの曲も男女の屈折した恋愛模様を、ギリギリの駆け引きを歌い、
「横須賀ストーリー」辺りから抜群の歌唱力を見せるようになった山口百恵が、
スクリーンでヒロインを演じるように歌い上げます。
「秋桜」辺りではまだ心もとなかったファルセット・ボイスも、
「愛染橋」辺りでは情感漂わせるようになり、
より一層、歌唱力に磨きがかかった山口百恵。
元々、音域が非常に狭いとされていた彼女ですが、
この頃から変幻自在な表現が出来るようになりました。
アルバムに収録されている曲は、それぞれ、
シングル盤にするようなキャッチで派手な曲作りではないものの、
ある時は少女の幼い恋を、またある時は成熟した大人の恋の駆け引きを巧みに歌います。

驚異的なのは、殺人的なスケジュールの中、
録音スタジオを押さえる時間は真夜中から朝方までの3〜4時間だったそうです。
正に分刻みのスケジュールの中、スタジオ入りした山口百恵は1曲につき、
ほんの数テイクで録音を終わらせていったそうです。
しかも、プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲のスタッフが驚くくらいに、
予想よりも高水準で……。

オリジナル・ベストのオープニングは、

  はらはらと散って行く、花びらの下で、年老いたその人は一日座ってる…………「マホガニー・モーニング」

ラストの曲は、

  修羅、修羅、阿修羅、修羅。無情、嫉妬、化身、許して、行かせて…………「夜へ…」

この2曲は絶対に動かせません……。

もうあんな歌手は二度と出ないでしょうね。
僕の日本の芸能界も山口百恵の引退……いや、恋人宣言で幕を閉じました。
以降は全く興味なし、僕の琴線に触れるスターも出て来ません……。
山口百恵を薔薇に例えるとどんな薔薇でしょうね。
写真は僕のオリジナルの薔薇。色は山口百恵のイメージに合っているかな?

また何かいい曲があったらCDに焼いてあげます。
楽しみにしていて下さいね。お元気で!


敬具

2008年7月25日


ブノワ。


[山口百恵/Momoe Yamaguchi (1959~ )]
[秋桜 (1977)]
[横須賀ストーリー (1976)]
[愛染橋 (1979)]
[アルバム A Face in a Vision (1979)]
[アルバム 二十才の記念碑 曼珠沙華 (1978)]
[アルバム 春告鳥 (1980)]
[アルバム 百恵白書 (1977)]
[マホガニー・モーニング (1979)]
[夜へ… (1979)]

[宇崎竜童/Ryuudou Uzaki (1946~ )]
[阿木燿子/Yoko Aki (1945~ )]
[阿久悠/Yu Aku (1937~2007)]
[松任谷由実/Yumi Matsutouya (1954~ )]
[中島みゆき/Miyuki Nakajima (1952~ )]


(01)マホガニー・モーニング/作詞: 阿木燿子、作曲: 芳野藤丸、編曲: 大谷和夫
(02)歌い継がれてゆく歌のように/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(03)オレンジ・ブロッサム・ブルース/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 矢野立美
(04)センチメンタル・ハリケーン/作詞: 山川啓介、作曲: 梅垣達志、編曲: B. Fasman
(05)I CAME FROM 横須賀/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(06)青い羊歯 -アジアンタム-/作詞: 北野弦、作曲: 北野弦、編曲: 船山基紀
(07)デイ・ドゥリーム/作詞: 山川啓介、作曲: 水谷公生、編曲: 萩田光雄
(08)十五の頃(紅梅集)/作詞: 山上路夫、作曲: 佐藤勝、編曲: 萩田光雄
(09)ラスト・ソング/作詞: 谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 萩田光雄
(10)鏡の中のある日/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 船山基紀
(11)抱きしめられて/作詞: 松本隆、作曲: 鈴木茂、編曲: 鈴木茂
(12)おだやかな構図/作詞: 来生えつこ、作曲: 来生たかお、編曲: 萩田光雄
(13)ジェラシー/作詞: うさみかつみ、作曲: 萩田光雄、編曲: 萩田光雄
(14)タイトスカート/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: B. Fasman
(15)寒椿/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 若草恵
(16)プリティー・ハーロット (Pretty Harlot)/作詞: 野原理香、作曲: 穂口雄右、編曲: 萩田光雄
(17)ヒ・ロ・イ・ン/作詞: 谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 萩田光雄
(18)花筆文字/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(19)GAME IS OVER/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 船山基紀
(20)霧雨楼/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(21)喰べられてしまった獏/作詞: 阿木燿子、作曲: 芳野藤丸、編曲: 大谷和夫
(22)夢のあとさき/作詞: 山上路夫、作曲: 佐藤勝、編曲: 川口真
(23)時の扉/作詞: 伊藤アキラ、作曲: 北野弦、編曲: 萩田光雄
(24)春爛漫/作詞: 松本隆、作曲: 鈴木茂、編曲: 鈴木茂
(25)或る女・・・或る日/作詞: うさみかつみ、作曲: 萩田光雄、編曲: 萩田光雄
(26)あまりりす/作詞: 松本隆、作曲: 岸田智史、編曲: 船山基紀
(27)蜃気楼/作詞: 喜多條忠、作曲: 萩田光雄、編曲: 萩田光雄
(28)猫が見ている/作詞: 小谷夏、作曲: 芳野藤丸、編曲: B. Fasman
(29)最後の頁/作詞: さだまさし、作曲: さだまさし、編曲: 佐藤準
(30)サンタマリアの熱い風/作詞: 谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 萩田光雄
(31)曼珠沙華/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(32)娘たち/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(33)水鏡/作詞: 丸山圭子、作曲: 丸山圭子、編曲: 萩田光雄
(34)CRY FOR ME/作詞: 横須賀恵、作曲: 波多野純、編曲: B. Fasman
(35)水曜日のクオレ/作詞: 阿木燿子、作曲: 来生たかお、編曲: 萩田光雄
(36)銀色のジプシー/作詞: 横須賀恵、作曲: 浜田省吾、編曲: 萩田光雄
(37)喪服さがし/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: B. Fasman
(38)空蝉/作詞: 喜多條忠、作曲: 丸山圭子、編曲: 萩田光雄
(39)GET FREE/作詞: 来生えつこ、作曲: 来生たかお、編曲: B. Fasman
(40)シュロード・フェロー (Shrewd Fellow)/作詞: 野原理香、作曲: 穂口雄右、編曲: 川口真
(41)軌道修正/作詞: 森雪之丞、作曲: 森雪之丞、編曲: 萩田光雄
(42)悲願花/作詞: 谷村新司、作曲: 谷村新司、編曲: 川村栄二
(43)COSMOS(宇宙)/作詞: うさみかつみ、作曲: 萩田光雄、編曲: 萩田光雄
(44)幻へようこそ/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(45)WIND & WINDOW/作詞: 篠塚満由美、作曲: 波多野純、編曲: B. Fasman
(46)ひといろ足りない虹のように/作詞: 新川和江、作曲: 萩田光雄、編曲: 川口真
(47)想い出のミラージュ/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄
(48)ただよいの中で/作詞: 古川英昭、作曲: 来生たかお、編曲: 萩田光雄
(49)イノセント(純粋)/作詞: 松本隆、作曲: 堀内孝雄、編曲: 萩田光雄
(50)ひとふさの葡萄/作詞: 石丸博、作曲: 川口真、編曲: 川口真
(51)愛の行方/作詞: 阿木燿子、作曲: 萩田光雄、編曲: 萩田光雄
(52)DANCIN' IN THE RAIN/作詞: 横須賀恵、作曲: 浜田省吾、編曲: B. Fasman
(53)夜へ…/作詞: 阿木燿子、作曲: 宇崎竜童、編曲: 萩田光雄

★Copyright © 2005~2008 raindropsonroses, All Rights Reserved.
[PR]
by raindropsonroses | 2008-07-25 00:00 | Sound of music。 | Comments(27)

孤独のメッセージ……Sting。

e0044929_6562467.jpg
拝啓

朝夕スッカリ肌寒くなりましたね。Rさん、その後お元気ですか?
先日は長時間のお付き合いどうもありがとう。
別に旅行前に無理矢理、会う必要もないのだけれど、人間、何だか変なもので、
何か決まった事があると、それを基準に考える習性があるようですね。
特に年末の忘年会とかね(笑)でも、本当に楽しかったです!

さて、先日も大いに盛り上がりました、プリティッシュ・ロック!
Rさんと僕が仲良くなる切っ掛けはブリティッシュ・ロック(笑)
今はどこかに消えちゃったY君のガールフレンドだったRさんと僕の友情の懸け橋です。

Rさんはその昔、ロンドンに留学していたんですものね。
ユダヤ人の家族のところでしたっけ?例の「バンド・エイド」の頃。
僕は一睡もせずに家でビデオを録画しながらテレビに噛り付いていましたが、
Rさんは羨ましい事にウェンブリー・アリーナで観たんでしたっけ?
あの頃はいい時期でしたねぇ。Rさんは色々なバンドを聴いていたみたいだけれど、
僕は他には目もくれず「The Police」一辺倒だったんですよ。
特に、リード・ボーカルでベースのスティングだけ追い掛けていました。

スティング……ゴードン・マシュー・サムナー。
今ではスッカリ大御所ですが、当時はツンツンの髪の毛を金髪に染め、
ハスキーで擦れそうに甲高く伸びる声が売り物でしたね。
当時、台頭して来たパンクにレゲエとスカの要素をふんだんに取り入れ、
ステュワート・コープランドの特徴あるドラミングとアンディー・サマーズの刻むようなギター。
タイトな演奏と疾走感溢れる楽曲は非常に魅力的でした。
作詞、作曲は殆どスティングが担当していました。

僕が「The Police」に見事にハマったのは、スティングが作る曲の独特の世界観。
デビュー当時はスバリ一言で「孤独」を歌っていました。一人では生きられない淋しさ、
どうしょうもない寂寥感、大勢の中に居乍らひしひしと感じる孤独を
色々なシチュエーションで描きだす才能に随分とビックリしたものです。
当時、友達が一人もいないと思い込んでいた僕はスッカリ惚れ込み、
明けても暮れてもスティング一色、どこか斜に構えてシニカルなスティング、
これは僕の映画監督の好みとかも一緒で、ビリー・ワイルダーや市川崑など、
都会的な外見の影に隠された毒、皮肉なものの見方に惹かれる所に繋がります。
勿論、人間は一人では生きられないし、知らず知らずの内に誰かに助けられ、
また自分も誰かに必要とされています。だけど思春期の多感な年頃(一応ね!)
自分の殻の中に閉じ籠もっていた頃の僕にはスティングの世界観は強烈でした。

所がある日、「孤独のメッセージ」の歌詞を眺めていて愕然としたんです。

無人島にたった一人漂着し、孤独で孤独で、淋しくて堪らない主人公が
空き瓶にSOSを書いたメッセージを入れて海に投げます。
暫らくして、身も心も孤独に苛まれてボロボロになった頃、
ある日、海岸に行ってみると何千、何百万と言う「孤独のメッセージ」が入った瓶が
海岸に漂着していたと言う歌……孤独なのは君だけじゃないよと言うメッセージ。

何と絵画的なんでしょう!まるで映画のワン・シーンを観るように
現代人の心理を見事に突いた曲に思えました。

以降、スティングと共に成長し(した積もり)レコード、CD、映画、
コンサート……出来る限りで追い掛けて、この目で聴き、体験し、
目で見て来たスティングも昨日で55才。相変わらず少し尖った緊張感を漂わせています。
小雨が降りしきるお台場で初めてスティングのソロを観た時の事は一生忘れないでしょう。
全身、鳥肌もの、何しろ、今の僕を形作ったスティングが目の前にいるんですから。

今日の写真は少し前のスティングの傑作「Fields of Gold」に因んで。
パリから近郊線に乗って終点まで40分、そこからバスかタクシーで20分、
若しくは森の中を散歩がてらに2時間のポール・ロワイヤル・デ・シャン。
ここには広々とした小麦畑と森の中の美術館、修道院跡があるだけです。
「小鳥達のさえずリ」と言う意味の美味しいレストランが一軒ポツリ。
17世紀、イエスズ会と対立した事から教皇に異端扱いされたジャンセニスム。
この神学思想運動ジャンセニスムの中心地だったポール・ロワイヤル修道院。
今は国立の美術館になっている修道院を弾圧し、修道女達を迫害、追放したのは
太陽王と国民に愛され、ブノワ・マジメルが「王は踊る」で見事に演じた
ルイ14世です。美術館入り口付近の小麦色に輝く大地は雨で濡れていました。
7月の収穫前にたわわに実った小麦、小さな赤いポピー……。
傘を差して撮影しながら聞こえてくるスティングの「Fields of Gold」のイントロ。
幸せな内容の曲なのに、どこか寂しげで切ない曲調は
孤独の歌ばかりを歌って来たスティングの面目躍如と言う所でしょうか。

先日、発売された最新作「Songs from the Labyrinth」の完成度の高さ。
一つここにスティングのキャリアの頂点を見る思いです。


敬具

2006年10月2日


ブノワ。


[Sting (1951~ )]
[Message in a Bottle/孤独のメッセージ (1979)]
[Fields of Gold/フィールズ・オブ・ゴールド (1993)]
[Songs from the Labyrinth・ラビリンス (2006)]
[Stewart Copeland (1952~ )]
[Andy Summers (1942~ )]
[Benoit Magimel (1974~ )]
[王は踊る/Le Roi Dance (2001)]
[Louis XIV de France (1638~1715)]
[Billy Wilder (1906~2002)]
[市川崑/Kon Ichikawa (1915~ )]
[PR]
by raindropsonroses | 2006-10-02 07:14 | Sound of music。 | Comments(34)

言葉よりも映像よりも雄弁な音楽……ピアノ・レッスン。

e0044929_8461296.jpg
拝啓

段々春らしくなって来ましたね。Fさん、その後如何お過ごしですか。
東京は夕方から雨、一雨毎に暖かくなるようですね。
折角、午前中、薔薇に水を液肥をあげたのに……文句は止めましょう(笑)

さて、お尋ねは、僕が好きな映画のサントラ盤を知りたいとの事でしたが、
僕が特に好きなのは、ジェリー・ゴールドスミスの「風とライオン」と
今日が誕生日のマイケル・ナイマンの「ピアノ・レッスン」ですかね……。
「風とライオン」はジェリー・ゴールドスミスが一番脂が乗っていた頃の渾身の作。
悠久の大地に戦う男達のロマンと、敵味方、相互の尊敬を素晴しいメロディーと
オーケストレーションの醍醐味で表現。今、聴いても素晴しいの一言。
「ピアノ・レッスン」は衝撃的でしたね。残念ながら、
アカデミー賞のオリジナル音楽賞は受賞出来ませんでしたが、
このサウンド・トラック盤は、映画から一人歩きし、それ一枚を聴く事によって
19世紀のニュージーランドの情景が見事に脳裏に甦って来ます。
6歳の時に自ら喋る事を止めた主人公エイダ(ホリー・ハンター)と、
写真のみで結婚を決心した朴訥な男スチュアート(サム・ニール)、
子供の心の奥底に秘めた残酷と無心の恐さ、フローラ(アンナ・パキン)。
映画の感想はまた今度ゆっくりと。アレンジを変えて繰り返される幾つかのテーマ曲
何度聴いても飽きるどころか、新しい発見があるんです。
マイケル・ナイマンが用意したテーマ曲をいとも簡単に弾きこなし
演奏後「こんな簡単なのでいいの?」と作曲家を振りかえったホリー・ハンター。
慌てたマイケル・ナイマンがさらに難しいものを用意したエピソードは有名ですね。
映画の中でも殆どのシーンを分で弾きこなしたそう。
もし彼女がピアノの名手でなく、初見で弾きこなさなかったら
このサウンド・トラック盤は生まれていなかったかもしれませんね(笑)
このサウンド・トラック盤は全世界で300万枚以上売れたそうで、
後日、マイケル・ナイマン本人によって、4楽章からなる
「ピアノ協奏曲」に編曲されました。ピアノ独奏はキャスリン・ストット。
マイケル・ナイマンが日本で知られるようになったのは、何と言っても
ピーター・グリナウェイの「英国式庭園殺人事件」からでしょうか。
最近ではスッカリ映画音楽の大家として有名で、
元々は現代クラッシックの作曲家と言う事を忘れてしまいそう。
この頃ではコンスタントに映画の仕事をするようになりましたが、
当時は、何て変わった曲を書く人だろうと思ったものです。
そうそう、もしかしたら、あの名作「めぐりあう時間たち」の音楽を
マイケル・ナイマンが手掛けていたかもしれないそうです。

今日の写真は、14年くらい前に購入し僕が大事にしている写真。
映画公開当時、今は無くなってしまった、新宿の、とあるギャラリーで
「ピアノ・レッスン」の写真展がありました。
これは、映画のスチールの仕事をしたオーストラリアのカメラマンで、
ファッション写真などで活躍していたグラント・マシューズの作品を集めたもので、
モノクロばかりでしたが、波打ち際に打ち上げられたピアノの写真や
出演者のポートレートで構成された個展は素晴しいものがありました。
僕はこの写真が気に入ったけれど迷って帰宅、矢張り、どうしても欲しかったので
電話で聞いてみました。エディション50枚の内、個展に来ていたのはNo.5。
僕が頼んだ時にはNo.42まで売れていてギリギリ最後の何枚だったそうです。
一ヶ月待ち、プリントされて一度、空輸されて来ましたが、扱いが悪く
なんと搬送中にプリントの真ん中に大きな穴が開いてしまい、
再度、プリントし直し空輸して貰った一枚です。
額縁は、ありきたりな物ではなく、絶対に流木を使って作りたいと思っていました。
ある夏の午後、神奈川県の国府津の海岸で日光浴をしていると、
僕の頭の上1メートルくらいの所に緑色の流木が流れ着いているではありませんか。
多分、板塀かなにかに使ったものらしく、全長1.5メートルくらい、
額縁に加工するには短か過ぎましたが、当時、懇意にしていた額縁屋に持ち込んで、
厚みが4センチあったものを半分の薄さの2センチにスライスして貰い、
倍の3メートルにして額縁に加工して貰ったのがこの額縁です。

「ピアノ・レッスン」のサントラ盤を聴き、この写真を眺めていると
映画の中に描かれていた19世紀のニュージーランドの空気の匂い、波の音、
森の緑、荒れ狂う海、汗ばむ男女の肌、遠くを見詰める少女の冷たい瞳……、
様々なものを思い出してしまいます。傑作サウンド・トラックですね。


敬具

2006年3月23日


ブノワ。


[Michael Nyman (1944~ )]
[The Piano/ピアノ・レッスン (1993)]
[Holly Hunter (1958~ )]
[Sam Niell (1947~ )]
[Anna Paquin (1982~ )]
[The Piano Concerto/ピアノ協奏曲 (1993)]
[Kathryn Stott (1958~ )]
[Peter Greenaway (1942~ )]
[The Draughtsman's Contract/英国式庭園殺人事件 (1982)]
[Grant Matthews ()]
[The Wind and the Lion/風とライオン (1975)]
[Jerry Goldsmith (1929~2004)]
[めぐりあう時間たち/ The Hours (2002)]
[PR]
by raindropsonroses | 2006-03-23 00:00 | Sound of music。 | Comments(14)

超絶技巧から生まれるものは……ヨーヨー・マ。

e0044929_133251.jpg

拝啓

M・Mさんへ。
先日はサントリーホールにご一緒戴きありがとうございました。
帰りの食事も美味しかったですし、何しろ、演奏がとても良かったですね。

さて、ワインを一杯やりながらチョット話題になりましたが、
M・Mさんは、クラッシックはピアノと声楽に限ると言いますけど……。
僕はやっぱり弦楽器が好きです。特にチェロかな。

チェロと言えば、今日はヨーヨー・マの誕生日なんですね。
M・Mさんは以前、チェロ界で一番の美音はヨーヨー・マ、
ヴィオラの美音はユーリ・バシュメットって仰っていました。
そう言えば、ユーリ・バシュメットも一緒に聴いた事がありましたね……。

自慢ではありませんが、我家にはヨーヨー・マのCDが83枚あります。
レコード会社がクラッシックに強いソニークラッシックって言う事もありますが、
83枚って言うのは音楽のジャンルにかかわらず凄いと思います。
ソニーの場合は映画のサウンドトラックも多いですしね。
そのヨーヨー・マのデヴュー・アルバムはサン・サーンスとラロの協奏曲でした。
その天才振りは、最初のレコードからも窺えますが、
今は、シューマンの協奏曲とカップリングで3曲入っているのでお得です。

僕とM・Mさんの共通点は、技巧に優れているものに弱いって事ですね。
勿論、下手糞では応援のしがいもないし話しにならない訳ですが、
ヨーヨー・マは凄いです。どの録音、どの実演を聴いても殆ど完璧です。
驚異的に完璧な音程のため和音が美しく、その上、何種類ものヴィブラートを持ち
スコアに地雷のように仕掛けられた演奏困難な箇所を楽々と突破し、
その直後にやって来る大きく歌う所も、持ち前の超絶技巧でクリアしてしまいます。
評論家のある方が、「ヨーヨー・マには七つの歌がある」と評しています。
また、海外のある評では「完全に息継ぎのない歌唱法」に例えられています。
天才、巨匠……いつの世にも現れるものですが、
同時代に生き、実演を聴く事が出来る幸せをこれほど感じる事はありません。
ヨーヨー・マのチケットは、この不況のクラッシック界において
まるでプラチナ・チケットのように入手困難です。

写真は、パリの植物園で撮影した「Concerto」です。
開花時期が少し遅いのでしょうか、他の薔薇が終わりかけの時に
まさしく「たわわ」に咲き乱れていました。


敬具

2005年10月7日


ブノワ。


[ Yo-Yo Ma (1955~ )]
[Yuri Bashmet (1953~ )]

[Charles Camille Saint-Saens (1835~1921)]
[Cncerto No.1 in A Minor for Cello and Orchestra, Op.33/
チェロ協奏曲第一番イ短調 作品33/1980年録音]
[Victor Antoine Edouard Lalo (1823~1892)]
[Concerto in D Minor for Cello and Orchestra/
チェロ協奏曲イ短調/1980年録音]
[Robert Alexander Schumann (1810~1856)]
[Concerto in A Minor for Cello and Orchestra, Op.129/
チェロ協奏曲イ短調 作品129/1985年録音]

[Concerto (Fb) Mailland, 1953]
[Meilland Richardier Meilland International]

★皆さんご存知の「駒場バラ園」さんが今年一杯で規模を縮小されます。
 現在、近くの新公園予定地に「駒場バラ園」さんの貴重な薔薇を移植する
 署名運動が始まっています。HPを見て趣旨に賛同された方は、
 HP右側の「最新記事」の上から二番目に、是非、コメントを書き込んで下さい。
 ヨロシクお願いいたします。
[新・駒場バラ園を作る会]

ほっとけない 世界のまずしさ

http://hottokenai.jp/index.html
[PR]
by raindropsonroses | 2005-10-07 00:00 | Sound of music。 | Comments(10)

Like a Virgin。

e0044929_15565640.jpg
前略……Fちゃんへ。

お盆もアッと言う間に終わっちゃいましたがお元気ですか?
いつもメールなのに素敵なカードをありがとう!
そうなんですってね、今日はマドンナの誕生日なんですってね。
Fちゃんは昔っから彼女のファンだものね……。
マドンナに合わせてウエスタンになったりソヴァージュにしたり……。
僕も好きですよ、マドンナは。アルバムは全部持っているし、
特に最近のアルバムは、一言で言うと「格好イイ!」ですよね。
女性で「格好イイ!」って言える人って少ないんじゃないかな?
常にセルフ・プロデュースで自分を変え、流行を作る人。

僕が最初にマドンナの曲でいいなぁって思ったのは「ホリデー」かな。
あれは、メロディーもさることながら、歌詞がいいですね。
「ヴォーグ」も素敵だった……大ヒットしただけじゃなくって
「ヴォーギング」でダンスの方でも一時代作ったし、
常に時代の先端を行っているって感じかな……。
そうそう、クエンティン・タランティーノの「レザボアドッグ」、
あの映画の冒頭で、タランティーノ本人がマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」が
如何にイイ曲かって熱弁を振るっていましたね(笑)

この絵葉書の写真は、パリのルーヴル美術館で撮ったもの。
タイトルはハッキリと覚えていないんだけど、多分「Vierge a l'Enfant」でしょう。
皆、一緒だものね……何故か、聖母子像って大好きで、写真が一杯ありますから
今度また送ってあげますね。聖母子像も、時代や国によって表現が様々です。
中には随分キツい顔付のマリアさまもいますが、僕のお気に入りはこれ。

所で、何でこの写真かって?……そりゃぁ「マドンナ」だからですよ(笑)


草々

2005年8月16日


ブノワ。


[Madonna(1959~ )]
[Holiday (1983)]
[Like a Virgin (1984)]
[Vogue (1990)]
[Quentin Tarantino(1963~ )]
[Reservoir Dogs/レザボア・ドッグス(1993)]
[ルーヴル美術館オフィシャル・サイト]

ほっとけない 世界のまずしさ

http://hottokenai.jp/index.html
[PR]
by raindropsonroses | 2005-08-16 00:00 | Sound of music。 | Comments(12)