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匂いのいい花束。ANNEXE。

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ば、ば、ば、薔薇香?

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拝啓

今年も暖かな秋になりました。桜の樹はようやく色付き始め、
淋しい家の周りを華やかにしてくれています。Uさん、お変わりありませんか。
僕は相変わらずです。薔薇に猫にお稽古ごとの毎日です。

さて、その稽古、三味線は新曲に入りましたよ。今度の曲はなかなか難しいのですが
素敵な曲なので非常にやりがいがあります。もう一つの稽古事の香道ですが、
今月はO先生が僕に内緒で趣向を凝らした組香を用意してくれました。
名付けて「薔薇香」!着物の柄と同じで季節季節の移り変りを楽しむ香道。
今まで色々と教えて戴きましたが、それにしても「薔薇香」とは……。
そう言えば、玄関を入った時に白い薔薇が一輪、玄関口に飾ってありましたから、
今にして思えば、細かい所にまで気を遣って下さっていた訳です。

最初に「十六夜香」を教えて戴いてから、いよいよ「薔薇香」です。
先ず、尭空(三條実隆)の和歌が添えられていました。

 「実をむすぶ 垣根のむばら紅の いろめずらしき 志もかれのころ」

Uさんもご存知の通り、「バラ」と言う言葉は「荊」「茨」「刺」の
「い」が抜けた形です。「イバラ」は「うばら」、または「むばら」とも言い、
広義では刺のある植物(低木)全般を指すようでしたが、漢字の「薔薇」が中国から渡来、
以降、僕達が今、慣れ親しんでいる花、西洋薔薇を「薔薇」と呼ぶようになりました。
当時の木造平屋作りの住宅、その垣根に刺が防犯の役目をする所から使われた「むばら」。
今頃の霜枯れの頃に赤い実を付けている情景を詠んだものです。
華やかな色味がなくなる秋から冬にかけて「むばら」の赤い実が貴重だったのでしょう。

この和歌から先生がお選びになった言葉はそれぞれに……、
「垣根」「霜かれ時」「むばら」「紅の実(淡)」「紅の実(濃)」以上の5つ。

 ● 「垣根」には「凩」という名前が付いた「寸聞多羅」、
 ● 「霜かれ時」には「初霜」と言う名前が付いた「佐曾羅」、
 ● 「むばら」には「晩秋」と言う名前の「真南蛮」、
 ● 「紅の実(淡)」には「うす紅」と言う名前の「真那伽」、
 ● 「紅の実(濃)」には「たち花」と言う名前の「伽羅」、

この内、先ず、「垣根」「霜かれ時」「むばら」の3種類の香木を試み香で聴きます。
本香に入り、「紅の実(淡)」を2回、「紅の実(濃)」を1回、
そして、試み香で聴いた3つの香木を合わせて合計6回聴く事になります。

僕、今回は頑張りましたよぉ。ここで外したら男が廃る、
いつも、「薔薇、薔薇……」言って、まるで専門家のように大騒ぎしているのに、
他のお弟子さんが全員当たって僕だけ外したら目も当てられませんからね。
しかも幾つか当たっただけじゃダメなんです、全問正解じゃないとね。
そりゃあもう必死でした。いつも必死じゃないと言う訳じゃないんですよ(笑)
いつもより気合いが入ったと言う意味です。もう五感を総動員、
先生はたまにヒントになる事をポツリと言ったりしますしね。
こうなると厳密に匂いだけを聴いていたのでは事足りません。
本来なら熱しても匂わない墨を香木に漬け、香木の色や木肌などの特徴を消すのですが、
お稽古時にはそのままの香木を使うので、先ず匂い、それから色や香木から出る油の量等々、
香木の特徴を観察しながら全神経を集中して答えを出します。
お弟子仲間のT.T.さんは「よく当たったねぇ……」と驚きますが、
6回の本香の内、もっとも特徴がある「伽羅」と、2回同じ物が回って来る「真那伽」、
それから一つだけ香木の色が淡い「佐曾羅」、4つは比較的簡単に分かります。
残るは「真南蛮」と「寸聞多羅」の2つの順番。ここまで来ると勘ですね。
全部当たるか4つだけに止まるか……僕は最後の賭けに勝っただけの事、
ハッキリ言ってしまうとドタ勘です(笑)この匂いは何、この匂いはあれ……、
そう言う風に当てて行く方法もあるけれど、反対に、違う匂いを一つずつ消して行く
消去法で消して行くやり方もあります。推理小説と一緒、犯人(答え)を絞って行くのです。
今回、精神を集中する助けになったのは、先輩弟子Tさんの流麗なお手前のお陰です。
さすがにお稽古歴が長いだけあってリズム(間)がいい事と美しい所作に感心しきり。
僕の他に全部正解したのは、来年から大学院生の秀才K君と香元のTさんのみ。
Tさんは香元ですから緊張しているハズなのに見事正解。かなりの腕なのだと睨みました。
それから、K君と僕は多分、同じやり方、アプローチが一緒なんだと思います。
全部正解でひとしきり喜び、フと目が合った瞬間に浮かぶ笑みに同じ匂いを感じますから(笑)
それにしても当たって良かったぁ(笑)外したらとんだ恥をかく所でした。

今日の写真は楽しい趣向を凝らして下さったO先生に感謝を込めて、
バルコニーで採れた薔薇の実を何種類か。紅の実の「淡」と「濃」に因んで。
こんな味気ない薔薇の実でも寒い時期の小鳥達にはご馳走です。
剪定した後は纏めてオリーブの樹に括り付けておくんですよ。

今年もあと一回稽古を残すのみ。次回が楽しみでなりません。


敬具

2006年11月30日


ブノワ。
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by raindropsonroses | 2006-11-30 00:00 | Raindrops on roses。 | Comments(18)

親友とは……僕の宝物、いつも心の支え。

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拝啓

Mさん、もうスグ12月です、その後、お変わりなくお過ごしですか。
さすがに寒さを感じる今日この頃、僕もようやく暖房を入れるようになりました。

さて、先日お話したTさんの誕生日、実は今日が正にその日なんですが、
なかなか皆の予定が合わなくて(本人も昼から豪華誕生ランチ攻勢らしい……)、
どうやら早くても12月の中旬になりそうです。
早急に予定の擦り合わせをしますのでMさんも協力して下さいね。

こう言う時、何人かの友達に連絡を取ってみたりすると思うんですが、
友達の存在って本当に有り難いですね。友達とは人生になくてはならないもの、
僕の宝物です。遥か昔、若い頃は人間一人でも生きられるだなんて
突っ張っていた頃もありましたし、自分には友達が少ないと思い込んでいた頃もありました。
でもねぇ、今にしてみると本当に素晴らしい友人に恵まれたと思っています。
高校の同級生で、僕を振って今は幸せな結婚生活を送っている女性(笑)
今年の陽春にめでたく女の子が生まれた親友夫妻、
この前、ワインバーで偶然会った酔どれ君、いつも親身にしてくれる食いしん坊のネエさん、
最近、インターネットを通じて親しくなった友人達、こんな僕を慕ってくれる年下の子達
丁々発止、悪口雑言叩いても心のどこかで理解し合い常に笑顔で接する事が出来る人、
時には友達、時には息子のように可愛がってくれる先輩方、
僕の人生の扉を開いてくれた掛替えのない女優さん、わざわざパリまで会いに行きたいくらい好きなヤツ……。
皆、どんなに長い事会っていなくても、会えばごくごく自然に話しが出来ます。
年齢や住む環境、国籍が違っても心が通い合う僕の大切な宝物。

僕の場合は年令の幅が広いんですよ。下は20歳から上は84歳まで。
老若男女問わず親しくしている人がいます。勿論、全員が平等に親しい訳ではありません。
年上の先輩には尊敬を込めて言葉遣いも丁寧になります。
その反対を年下の友達が僕にしてくれる訳です。僕の中では気持ち的には平等なんですが、
共通しているのは、お互いに個性的で何かに一生懸命だという事でしょうか。
それが無意識の内に尊敬に繋がり、お互いを高める事にもなります。

今日、誕生日のTさんは21年来の友人です。お互いにペーペーのヒヨッ子の頃から
ズゥ〜っと一緒。苦しい時も悲しい時も一緒でした。大喧嘩も沢山しました。
そりゃあお互いに年取りましたよ(笑)僕らの身の回りの状況が刻々と変わり、
時代も変わり、好不景気の波がある……めまぐるしく変わる価値観。
そして何より自分が変わっていく中、いつも仲良くしてくれた大事な友人、
既に家族の一員みたいなものですか……どんなに親しい友達でも、
本人の意思じゃなくて離れ離れになる事だってありますからね。
それは本意じゃないし、とても淋しいけれど仕方ないことです。
この世の中には自分の力の及ばないことも沢山ありますから。
昔は永遠の友人関係はあるって信じていたけど……今は確信を持てないでいます。
そんな大事な親友ですから盛大に誕生日のお祝いをしてあげたいんです。
くれぐれもTさんには内密に、アッと驚くビックリ・パーティにする積もりなんですから(笑)

今日の写真は僕がTさんにプレゼントするために誂えた羽織の裏地の一部。
  「男の着物は羽織の裏で華やかに遊ばなければならない……」
そうは言うものの、今、市販されているものは恐ろしいくらいにセンスがないものばかり。
インチキ歌麿の美人画、竹に虎、般若の面、ニセ雪舟の山水画、良くて茶道具一揃えの画……。
一体、誰がそんな物を着たいと思うのか(笑)これは金糸、銀糸で織られた西陣織です。
小さい頃からお茶を嗜み、踊りに香道にと和の稽古事に精を出すTさんは
きっと喜んでくれることでしょう。実はこの羽裏、写真には写っていませんが、
驚くべき秘密が隠されています(笑)また連絡しますね、Mさんも風邪など召しませんように。


敬具

2006年11月28日


ブノワ。
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by raindropsonroses | 2006-11-28 00:00 | いつも心に太陽を。 | Comments(28)

タルタルタルタルタルタル!

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拝啓

11月も下旬になり、ようやく桜の樹が赤く色付いて来ました。
ここ数年来の暖かい秋〜冬、ウッカリ慣れてしまってはいけないんですよね……。
Yさん、その後、如何お過ごしですか。風邪は治りましたか?
僕も猫も元気そのもの、相変わらずドタバタの毎日です。

さて、旅行中、何故だか原因不明の内に増えた僕の体重も元に戻り、
さらに前より痩せて来た感じがします。これ本当、身体も軽いし、
何より、きん並にくびれの無かったウエストが細っそりして来たような気がするんです。
しかし、あれだけ毎日重たいカメラを持って歩き回るのに何故、体重が増えるのか?
これこそ永遠の謎ですね。別に連日〜暴飲暴食している訳ではないのに。

そうそう、これだけフランス好きを公言して憚らない僕なのに、
以外とフランスで本場の味を楽しんでいなかったりします。
去年のパリ、初めて食べたエスカルゴ、オニオン・グラタン・スープ、
そして今回初めてフランスで食べたタルタル・ステーキ!3週間の間に3回食べました(笑)
なるべく色々なものを楽しみたい旅先でこれは多い回数と言えるでしょう。

先ず始め、1枚目の写真はこの夏に結婚したフランスに住む親友夫妻と行った
カフェ・レストラン「Cafe des Arts」で食べたタルタル・ステーキ。
名前で侮るなかれ、非常にしっかりした味付けの料理を出すこのレストラン、
僕が思い描くタルタル・ステーキがまさにこれ。肉の挽き方は少し粗めだったけど、
紫タマネギ、イタリアン・パセリ、オリーブ、ピクルス……。
周りの薬味を自分で加減しながら味を整えて食べます。肉も新鮮、量も丁度良くて非常に美味でした。
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次の写真は4区にある、地元でも大変美味しいと評判の「Le Dos de la Baleine」。
「クジラの背中」と言う意味の変わった名前のレストランで食べたラムのタルタル・ステーキ。
これはランチのコースが書いてある黒板にタルタルとあったので頼んだんですが、
ビールを飲みながらもう一度良く読んでみると、何とラムと書いてあるではありませんか!(笑)
焼いたラムでさえ匂いで失敗する事が多いのです。まして生で食べるなんてとんでもない?
まぁ、これも何かの縁、こんな時でないと食べられないと覚悟を決めました。
出て来たラムの生肉は意外とピンク(笑)チョッとネットリして見えます。
ほんの少し、微かに匂うカレー粉が芳ばしいホクホクのポテトと一緒に食べるラムのタルタル、
しっかり色々な調味料と薬味、パセリやタマネギで味が整えてありました。
恐る恐る食べたのですが、何とビックリするほど美味しいではありませんか!
ビックリするなかれ、今回の旅で最も印象深い一皿になりました。
どんどん速くなる食べるスピード(笑)アッと言う間の完食に驚いたのは僕自身です。
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最後、3回目はパリに戻って来て、念願だったビストロ「Chez Paul」で食べたタルタル。
これは強烈でした。非常に美味しかったけど、軽く通常の2倍はあろうかと言う量、
写真では奥に奥に位置しているし、ポテトの量も半端じゃないから小さく見えますが、
これで、ゆうに僕の拳骨にもう一方の手の平を重ねただけの大きさはあります!
レードルで「エイやぁ!」とばかり盛った肉は食べても食べても減りません(笑)
様々な香辛料、薬味野菜で調理してあるものの、味は結構そのままでした。
それにしても欧米人は本当によく食べますね。良く喋り、良く飲み、良く食べる。
僕も負けず嫌いですから、ここで残したら男が廃るとばかり肉は完食しましたが、
さすがにポテトは少し残しちゃいました。農業大国フランス、
ホクホク&熱々で非常に美味なポテトだったんですけどね。

かのオードリー・ヘップバーンが本格的にデビューをする前に
タルタル・ステーキを毎日食べてダイエットしたと言う話しは有名ですね。
もっとも、オードリーがダイエットが必要なほど太っていたとは思えませんが……。
僕も何だかタルタル・ステーキのファンになってしまいました。
元々、焼肉に行くと必ずユッケは食べるけど、これは例外で、
生肉なんてとんでもない、ステーキはウェルダンじゃないと食べられない僕です。
旅先の開放された気持ちがそうさせるのか……何だか変なものですね。
我ながらそう思います。もし日本で美味しいタルタル・ステーキが食べたくなったら
何処へ行けばいいのでしょうか?美食家のYさん、今度、教えて下さいね。


敬具

2006年11月27日


ブノワ。


[Cafe des Musees/49, rue de Turenne 75003/01 42 72 96 17]
[Le Dos de la Baleine/40, rue des Blanc Manteaux 75004/01 42 72 38 98]
[Chez Paul/13, rue de Charonne 75011/01 47 00 34 57]

[Audrey Hepburn. com /Audrey Hepburn (1929~1993)]
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by raindropsonroses | 2006-11-27 00:00 | バベットの晩餐会。 | Comments(28)

配達された120枚の絵葉書。

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拝啓

11月もそろそろ終わりに近付きました。街は既にクリスマス・ムード一色。
日本人って変なものに敏感で流されやすい単純な国民ですね(笑)

さて、先日はわざわざメールをありがとうございます。
スペインからの最後の絵葉書が届いたんですね!
随分と時間が掛かったみたいですが、どこを旅していたんでしょうねぇ?
恐縮する事なんかありません、僕も好きで書いているのです、あれは僕の趣味なんです。
目的地に着くと一番最初にする事は、絵葉書と切手の調達です。
先ずは当座の分、大体50〜60枚の絵葉書と切手を買います。
絵葉書は街角のお土産屋などて買うと比較的安く手に入るけど、
これらはいかにも観光地って言う感じの安かろう悪かろうな品。
僕はボールペンを使って書きますから、ザラザラの紙は書き心地も良くありません。
パリだとお決まりのエッフェル塔や凱旋門、モナ・リザやノートル・ダム、
サクレ・クール寺院の写真が使われ、そこにこれまたお決まりの「Paris」の文字(笑)
でも、美術館で買うと割高だけれど、センスのいい絵葉書が買えます。
あとは、そうそうたるカメラマンが撮った写真を使った絵葉書の数々。
ロベール・ドアノー、ウイリー・ロニス、ホルスト、ジャンルー・シーフ、
セシル・ビートン、アンリ・カルティエ・ブレッソン等が僕のお気に入り。
彼等の撮るモノクロの写真が絶妙にパリの街と合います。
でも、たまにはわざと思いっきりエッフェル塔の絵葉書を使ったりします。
いるんですよ、僕の友人にエッフェル塔フェチが(笑)部屋の中じゅうエッフェル塔!
書く枚数は毎回、段々エスカレートし、今回、書いた絵葉書は3週間で120枚(笑)
まぁ、複数枚書いた方もいますからね。出した人の数はもっと少ないです。
だって、中には「パリとスペインの両方から出すように」って言う強欲な人もいるんですから(笑)
大体、一枚書くのに10分弱くらいでしょうか。頭で考えた事をスラスラと書きますから早いです。

今日の写真はスペインはグラナダのアルハンブラ宮殿内にある
「Hotel America」の僕の部屋の窓際の写真。部屋は2階、階段を上がってスグでした。
この窓の下に蔦で見えなくなっていますが中庭があり、カフェになっています。
朝から夕方までは支度をするシニョーラやお客の楽しげな声が聞こえて来ます。
ラジオから聞こえる憂愁を帯びたギターの音色に食器がカチャカチャぶつかる音……。
このテーブルで何枚の絵葉書を書いたでしょうか。窓から吹き込む微風、喧騒、珈琲の匂い、
カーテンごしの明かり、こう言う素敵な舞台が揃うと筆が進むのは言うまでもありません。

また何かの機会に便りしますね。僕がまかり間違って大文豪にでもなったら
高い値で売れますから絵葉書は取っておいた方がいいですよ(笑)
もっとも、これだけ書き散らしていたらダメかもしれませんが……。


敬具

2006年11月24日


ブノワ。


[Robert Doisneau (1912~1994)]
[Willy Ronis (1910~ )]
[Horst P. Horst (1906~1999)]
[Cecil Beaton (1904~1980)]
[Jeanloup Sieff (1933~2000)]
[Henri Cartier-Bresson (1908~2004)]
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by raindropsonroses | 2006-11-24 00:00 | 旅の栞。 | Comments(24)

涙目の女達……プラダを着た悪魔。

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拝啓

早いもので今年も11月下旬になりました。そろそろ師走の声か聞こえて来ました。
穏やかな毎日が続きますが、Bさん、その後、お変わりありませんか。

さて、パリ〜スペインの旅から帰り、丁度、3週間が経ちました。
疲れも取れ、スッカリ元の生活のペースに戻った感じです。
バタバタしていて映画館にも行けず、禁断症状が出ていた映画もポチポチ観始めました。
昨日は待ちに待った「プラダを着た悪魔」を観て来たんですよ。
ブランドには興味がない僕が、唯一、持っているプラダのシャツを着てね(笑)
待ちに待ったと書きましたが、実はこの映画、パリ行きの飛行機の中で観ちゃったんです。
日本語吹き替えで3回も!物凄くラッキー!(笑)公開前の観たい映画が
機内上映で掛かるなんてまずありえませんからね。本当に幸運でした。
普通、僕は機内では映画も観ないし、音楽も聞かないのです。
勿論、どんな映画をやっているかはチェックします。でも、よほどの事がない限り観ません。
だって、あらかじめ、「この映画はお客さまのビデオに合わせてアジャストしてあります」と、
但し書きが出るように、オリジナルとは程遠い代物ですからね。
今まで、面白いと思ったのは、劇場で観ていた「ジュラシック・パーク」のみ。
機内ではあの手の上映時間がそれほど長くない娯楽作品が一番かも知れません。

さて、ローレン・ワイズバーガーの「プラダを着た悪魔」の映画化が決まり、
メリル・ストリープがタイトル・ロールを演じると聞き原作は既に読んでいました。
それで、メリル・ストリープのプラダを着た悪魔っぷりはどうだっかと言うと、
もっと居丈高でヒステリックな印象があった原作のミランダ・プリーストリーですが、
低い声と抑えた演技に終始するメリル・ストリープ、スッカリ裏をかかれました。
それ程、アップを多用しないカメラ・ワークなのに強烈な目力、眼光鋭く
目の演技で新人のアンドレア(アン・ハサウェイ)を恐怖に陥れます。
エミリー(エミリー・ブラント)のピリピリした演技がミランダの恐怖を映す鏡になり、
さらにストリープの演技を引き立てます。相変わらずの舌を巻く芸達者振り。
ストリープ狂いを自認する僕が一番嬉しかったのは、久し振りに彼女が美しかったこと。
シルバーに染めたショート・ヘアも絶妙に似合い、次々に変える衣装も豪華そのもの。
これは長年メリル・ストリープのヘア・メイクを担当しているJ・ロイ・ヘランドの功績。
パリのホテルでついついアンドレアに生活の疲れ、己の弱い部分を見せるシーン、
顔色も悪く弛んだ肌と昼間のきらびやかな世界で見せる着飾った虚像の姿との対比。
ただ単に、強烈な個性の仕事人間として、アンドレアを脅かす悪魔として描くのではなく
一人の人間としてキチンと描かれている事のこの作品の奥行きを深くしている要因でしょう。
目で部下を震え上がらせながらも、部下の仕事を理解し、キチンと評価する。
アンドレアがそれに気付くまで、ミランダの信号を理解するまでそれほど時間は掛からなかった。
何故なら、2人とも似た物同士だから……コメディー、「ハリウッドにくちづけ」で
アカデミー賞にノミネートされ、一時期コメディーに立て続けに出演し
失敗した感があるストリープですが、この「プラダを着た悪魔」は
久し振りにクリーン・ヒット、この分で行くと14回目のノミネートも夢じゃないかもしれません。

「I love my job, I love my job, I love my job………………。」
呪文のように自分に言い聞かせてパリ行きを夢見て頑張るいつも涙目のエミリー。
失敗し、ついつい大きな目からこぼれそうになる涙を歯を食いしばって堪えるアンドレア。
人には「ドラゴン・レディ」「氷の女王」と恐れられながらも
家庭内の不和でアンドレアにホロリと涙を見せるミランダ・プリーストリー。
まさに鬼の目に涙、仕事に追われながら、自分の夢に向かって
一生懸命になり自分を見失いそうになりながら女達は一つの目標に向かって、
いい雑誌を作るためチームを組みます。何も鬼上司にこき使われ、
私生活を犠牲にしているのは部下だけではない、その鬼上司も家庭の問題を抱えている。
涙しながら働いているのです。こんな細かい部分の描写が映画を魅力的にしています。

写真はこんな映画が出来るとは露程も思わない5年前の新年。
新世紀を友人夫妻とパリで祝った僕は、皆が三々五々、帰国したあと一人でパリに残りました。
ホッとする間もなく1週間のフィレンツェ旅行です。パリから夜行でフィレンツェ入り、
貸し切り状態の美術館三昧と日帰りの小旅行をし、また夜行でパリに戻ると言うものでした。
その時はフィルはデジカメを持つなどとはこれっぽっちも思わず、
フィルム・カメラ一台+50ミリのレンズを持って写真を撮り歩いた時のものです。
これはどこだったか、フェラガモだったか……ショーウィンドウのディスプレイです。

そうそう、機内上映を見ていた僕の友人T.T.さん、後半のパリのシーンで
本物のヴァレンチノがカメオで出て来るシーン、映りが悪いモニターのせいか
僕のモニターを覗き込んで一言、「だれ、だれ?あっ!みのもんた?!」ですって。
た、た、確かにヴァレンチノとみのもんた、顔の作りも色の黒さも似ているかも(笑)
「プラダを着た悪魔」はもう一度、観に行きます。今度は友人を誘って、
親友も観たいって言いますし、近々、遠路遥々、遊びに来る友人もいます。
精々興行収入に貢献しないとストリープの次の作品が来なくなりますから(笑)
Bさんも是非どうぞ!ファッションに興味があるBさんは必見ですよ。


敬具

2006年11月21日


ブノワ。


[The Devil Wears Prada/プラダを着た悪魔 (2006)]
[プラダを着た悪魔/The Devil Wears Prada (2003)]
[Lauren Weiseberger (1977~ )
[Meryl Streep Online Simpylstreep. Com/Meryl Streep (1949~ )]
[Anne Hathaway (1982~ )]
[Emily Blunt (1983~ )]
[J. Roy Helland (1943~ )]
[Jurassic Park/ジュラシック・パーク (1993)]
[Salvatore Ferragamo]
[みの もんた/Monta Mino (1944~ )]
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by raindropsonroses | 2006-11-21 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(18)

やっぱりフィルムはいい。

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拝啓

Kさん、先日は留守電にメッセージをありがとうございました。
スッカリ忘れていましたので、早速、手配させて戴きましたからね。

さて、先週のこと、待ちに待った旅先で撮ったフィルム分の現像が上がって来ました。
僕の場合は現像とシートでベタ焼きのみ。チェックしていい物は改めてプリントします。
同時プリントをしなくなってどれ位になりますか……あれは全く問題外なんです。
僕はフレームの中ギリギリにレイアウトしながら撮影しますから、
プリントの上下左右を大幅にカットされて出来上がって来るのは我慢ならないんですよ。
今回はフィルム6本、約200カットになります。これは随分少ないように思えますが、
前回の旅行で、旅の間中、漬物石のように重たいフィルム・カメラを持ち歩き、
結局、現像してみればたったの11枚しか撮影していなかったのに比べれば上出来と言えるでしょう。
全てモノクロ、出来はですね、それがまたなかなか素晴らしいのですよ(笑)
自画自賛?誰も誉めてくれないから自分で誉めるしかないですもんね。
気になる光景は全てデジタル・カメラで撮影し、その中から特に気に入った物だけを
フィルムで撮り直しましたから、厳選された素材と言う事も出来ますね。

こうしてデジタル・カメラとフィルム・カメラの両方で撮影してみると、
改めてフィルム・カメラの素晴らしさに気付きます。
しっとりとした諧調(グラデーション)、例えるならフィルムは極めの細かいシルク、
あるいは、手透きの高級和紙。デジタルは目の粗い麻の織物くらいの差はあります。
50ミリの標準1本だけ付けての真剣勝負、ズームも出来ないからピリピリした
フレーミングですからそれなりのクォリティなのでしょうか。
ここから選んで何枚か大きくプリントしてみようと思います。
アルハンブラで買って来た花形のオブジェを使った額縁に入れるものも大きくしなければ。
追い追いKさんにも何枚かお見せ出来るようにしたいて思っています。

今日の写真はバルセロナから近郊線を使って20分くらいの所、Colonia Guell 駅で下車、
繊維工場が住宅地の外れある「Esglesia de la Colonia Guell・コロニア・グエル教会堂」の内部。
ガウディがサグラダ・ファミリアを建設し始めたため途中で建設を断念した教会です。
現在、唯一、講堂として完成していた半地下を礼拝堂としてあてています。
無人駅を降りると人影は全く見えず。案内に従って歩いて行くと、
ガウディの教会に負けないくらいに興味深い建築が沢山ある住宅街が現れます。
午後一番だったせいか見学者は僕一人だけ……バルセロナ市内の芋洗い的な
ガウディの建築物の見学を思うと夢のような一時でした。

矢張り、フィルム・カメラはいいですねぇ。温故知新、新しいデジタルを使ってみて
改めて分かるフィルム・カメラの良さ、そして、デジタルの便利さ。
また次回もフィルムで撮影してみようと思っています。次の旅行の楽しみが一つ増えました。
あと、フィルム・カメラでポートレートを撮ってみたい人もいます、
既にOKは貰っていますが改めて申し込まなければ……。

段々、寒さが増します、くれぐれも風邪など召しませんように。お元気で。


敬具

2006年11月17日


ブノワ。


[Antoni Gaudi i Coronet (1852~1926)]
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by raindropsonroses | 2006-11-17 00:00 | Raindrops on roses。 | Comments(26)

スーツケースに一冊……危険な関係。

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拝啓

11月だと言うのに昼間は随分と気温が高いですね。
Uさん、その後、お変わりありませんか?出張はどうでしたか?
僕は相変わらず、平々凡々、十年一日のような生活を送っています。
旅の疲れもぼちぼち取れ普通の生活に戻ったところです。

さて、秋は何と言っても食欲の秋、そして読書の秋!
別に秋の夜長じゃなくても読書は出来るけど、気候的にも秋が一番なのでしょう。
僕は旅行、特にパリに一人で行く時、必ず本を一冊持参します。
昼間歩き疲れて夜遊びの類は一切しない僕、ワインなどを飲みながら
持参した本を読むんです。個人のアパートを借りた場合などは、
その部屋に置いてある蔵書をパラパラやるのもいいものです。

今回の旅に僕が持参したのはラクロの「危険な関係」です。
この本、大好きなんですよ。そのまま映画化されたハリウッド版「危険な関係」も
グレン・クローズとジョン・マルコヴィッチの好演で傑作だったけど、
ジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ主演の現代版や
韓国版、日本版、翻案された作品も枚挙にいとまがありません。
現在ではスッカリ死語となった、「悪徳」「貞淑」等の言葉が持つ響き、
書簡集と言う体裁、この作品を魅力的、傑作にしている要因は沢山あります。
小説の舞台はパリですが、ラクロが軍人としてグルノーブルに
7年間滞在していた時に収集した資料を元に編纂された「危険な関係」。
奸知に長けたメルトイユ侯爵夫人と、まるで惑星と恒星のように
付かず離れ悪巧みに乗る似た物同士のヴァルモン子爵。
二人にチェスの駒のように操られる娘、セシル・ヴォーランジェとダンスニー騎士、
二人のゲームの標的になるトゥルーヴェル法院長夫人。
絡まった糸のような関係が解きほぐされると同時に訪れる悲劇、
悪辣なゲームの先に残された物は?書簡集と言う体裁なので、
各々の心の内がそれぞれの言葉で語られます。擦れ違う解釈、合致しない思惑、
文庫本で上下2冊ですけれど、非常に読み応えのある作品です。

ワインやシャンパンのグラスを傾けながら秋の夜長にパリで読む「危険な関係」、
一日の疲れで眠りに落ちるまでの読書、なかなか乙なものですよ。
今日の写真は昨年の秋に訪れたパリの「郵便博物館」で撮った一枚。
昔はペンとインクで流麗に手紙をしたためていたんですよねぇ。
封筒と言うより、分厚い手透きの紙に書いた手紙を折畳み、糊付の代わりに
熱したワックスを垂らしてスタンプをドンっ!何とも優雅な習慣じゃありませんか。
僕も形だけは真似するんですが、いかんせん内容がねぇ(笑)

今日は「危険な関係」を真似てペンを取ってみました。
返事は結構ですからね。近々、ご飯でもしましょうか。Uさんもお元気で!


敬具

2006年11月15日


ブノワ。


[Pierre Choderlos de Laclos (1741~1803)]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1782)]

[Dangerous Liaisons/危険な関係 (1988)]
[Glenn Close (1947~ )]
[John Malkovich (1953~ )]
[Les Liaisons Dangereuses/危険な関係 (1959)]
[Jeanne Moreau (1928~ )]
[Gerard Philipe (1922~1959)]

[La Musee de la Poste]
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by raindropsonroses | 2006-11-15 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(16)