「ほっ」と。キャンペーン

匂いのいい花束。ANNEXE。

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あるスキャンダルの覚え書き。

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拝啓

Mさん、先日はお付き合い下さってありがとうございます。
お稽古で忙しいでしょうに恐縮しています。

さて、5月にご一緒した「クイーン」で予告を観て意気投合、
ようやく観る事が出来た「あるスキャンダルの覚え書き」、なかなか良かったですねぇ。
矢張り、こう言うしっかりと演技を堪能出来る映画って素敵です。
それから、映画、演劇の本質は台詞。それを証明するような作品でした。
僕の映画の観方は非常にミーハーで、監督で観る事は稀、
殆どは俳優で観るか観ないかを決めます。勿論、好きな監督、尊敬する監督はいますけどね。

さて、誰でしたか、有名な評論家で「映画は女優で観るもの」と公言して憚らなかったのは(笑)
この「あるスキャンダルの覚え書き」はまさにそんな映画、
先ず、タイトルがいいですね。日本語ならではの美しさすら感じます。

僕がメリル・ストリープの跡を継ぐと思っているケイト・ブランシェット
売れに売れているジュディ・デンチの火花が散る演技の応酬。
ケイト・ブランシェットの演技にはいつもホレボレするんですが、
この人の演技の最大の美点は、決して演技がブレないこと。
背筋がピンっと常に揺るぎない自信を感じます。そして、常に美しい!
作品によって顔から何から千変万化、カメレオンに例えるには物足りないくらいの凄じい変貌ぶり。
これほどメイクで顔が変わる人も珍しく、まさに「女優の顔はキャンバス」を地で行く感じです。
この人の芝居には非常に演劇的な匂いを感じます。七つの声色を使い分けるテクニックは素晴らしいし、
自然体のようでいて、その実、物凄い計算と技巧、表現力が演技を裏打ちしています。

ジュディ・デンチはイギリス演劇界の重鎮として抜群の存在感ですが、
「007」のM役みたいに作品をピリリと引き締める役として重宝されるだけではなく、
他の作品でキチンと自分の仕事をしているところが凄いですね。
彼女くらいの年齢でこれだけ主演級の作品が充実している人は他にいませんもの。
この人を見ていると「クイーン」のヘレン・ミレンなんかまだまだ娘に見えますね(笑)
この新旧の偉大な女優によるピタリと息が合った演技はこちらの息が止まるほどスリリング。
勿論、本読みもリハーサルもするでしょうが、
おそらく殆どのシーンは一発テイクではないかと思わせる緊張感。
美しき友情(と、お互いに思い込んでいた)がある事件を切っ掛けに、
支配する者と支配される者に一変する瞬間が凄かったです。

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

ジュディ・デンチ演じるバーバラ。
バーバラが綴る日記、日々の出来事を、ユーモアは残っているけれど、
辛辣、かつ、容赦なく観察して綴って行きます。そこに現われた新米美術教師のシーバ。
観察、観察……くまなく観察し個人的な考察を付け加えます。可成り、評価は高いもよう。
退屈な同僚や全く関心を持たない生徒達の事を綴った日記が俄に春の色味を帯びて来る。
今までは文字のみの殺風景な日記が一変して二人の友情の記念の品で彩られます。
「これは!」と、いい事があった時には金のお星さまがページを彩る寸法。
落ち葉や食事をした時のレシート、挙げ句の果てにはシーバの髪の毛まで。
それは半ば、あるいは殆ど自分に都合の言い解釈と装飾が施され、
既に壊れかけているバーバラの精神を美しく一方的に正当化、煌びやかなものにして行きます。
シーバの告白はバーバラにとってはこの上ない宝物。秘密を共有する事によって一層、親しみがわき、
日記も充実して行きます。週末にコイン・ランドリーに行くだけしか用事のない真っ白な予定表、
だけど、「妹に孤独を気遣われるくらいなら死んだ方がマシ!」くらいの誇りは失っていない。
「Enough !」鶴の一声で狂乱状態の教室を見事に収めるバーバラの威厳。
恐れられ尊敬は集めているけれど誰にも愛されない定年間近の老教師。
上流階級に属するシーバが階段を上がった所に豪奢な自宅を構えるのに比べ、
一人、半地下に下りる陽の当たらない淋しいアパートにはお決まりの老猫が一匹。
部屋にある何十、何百冊もの想い出の日記がバーバラの孤独を代弁しているかのよう。
これだけ書き連ねていても誰とも繋がらず、触れ合ったことはないのだ。
しかし、シーバとの友情が深くなるにつれ段々と美しくなるバーバラ……。
バーバラを演じるジュディ・デンチの老練な役作りが無理なく、
また、いかにも実際にいそうな老女を描きだします。

一方のケイト・ブランシェット演じるシーバ。
全校の注目の的、自分の美しさ、魅力は重々承知。でも、決して媚びたりせず、嫌みでもない。
皆に好かれる人気美術教師から一転して監獄行きになる所を救ってくれたバーバラ。
ケイト・ブランシェットはシーバの木の葉のように揺れる心内を見事に演じると同時に、
どこかでバーバラの関心を買うズルさ、バーバラが自分を好いている事を知った上で計算された
操られる側に立った女の駆け引きを何万もある演技の引き出しの中から見せてくれます。
ラスト近く、ついにキレたシーバがバーバラに怒りを爆発させる演技を引き合いに出して褒められますが、
バーバラの顔色を瞬時に窺う目つきや、少年を相手に一瞬で教師から女に変貌する顔、
2児の子供の母としてみせる顔、良き妻として夫を信頼する妻の顔……その驚くべき表現力。
どれ一つとして同じ表情、同じ声色、演技における同じ感情のトーンがないんです。
ブランシェットの玉虫色の演技をしっかり受け止めるデンチの演技を燻し銀の額縁に例えてみると、
ブランシェットの華やかな色彩の絵と渋い額縁が一体となって見事な一服の絵画になるかのようです。
静かな恐怖をさらに盛り上げるのは「めぐりあう時間たち」を彷彿とさせる
フィリップ・グラスのアルペジオを多用した独特の音楽。

カメラはバーバラとシーバをことごとく比較し、あからさまに差を映し出します。
白磁のように滑らかで美しいシーバと長年の孤独と喜び薄い人生に疲れ切ったバーバラの皺だらけの顔、
まるでマイセンの人形のように繊細なシーバの手と、血管が浮き出たシミだらけのバーバラの手、
艶やかで流れるようなシーバの金髪と、薄くなり手入れもしていないバーバラの髪の毛。
映画の常套手段だけれど、その比較がさらに2人の対比を劇的な物にしています。

「ここはお気に入りの場所なの。夕暮れには素晴らしい景観になるわ……」

写真は何年か前にパリ郊外のレオナール・藤田のアトリエ近くで撮影した一枚。
何千、何万もの人々が座っては時を過ごす丘の上の美しい場所にあるベンチ。
だけど、ベンチだけが知っている人々の孤独、恐ろしい目論み、秘密、秘密、秘密……。
ラストで新たなる獲物を見つけるバーバラ。もしかしたら本物の恋に発展するかもしれないけれど、
「コワかったですね」では済まされない部分、誰しもバーバラになりシーバになりうるコワさが
この作品を非常に甘美で美しい物にしています。

友情にしろ恋愛にしろ、「あぁ勘違い」的な笑い話はお互いに星の数ほど経験しているけれど(笑)
チョッと我が身を振り返って反省(笑)バーバラとシーバに自分を見るような部分が多々ありましたからね。
ナチュラルな芝居もいいけれど、いやぁ、久しぶりにタップリ演技の醍醐味を味わった午後でした。
次は何を見ましょうかね。いくつかリストアップしてメールしますね。
暑い日が続きます、お身体に気を付けて下さい。


敬具

2007年6月25日


ブノワ。


[Note on a Scandal/あるスキャンダルの覚え書き (2006)]
[Cate Blanchett (1969~ )]
[Judi Dench (1934~ )]
[The Queenクィーン (2006)]
[Helen Mirren (1945~ )]
[めぐりあう時間たち/ The Hours (2002)]
[Philip Glass (1937~ )]
[藤田嗣治/FujitaTsuguharu・Leonard Foujita (1886~1968)]
[Meissen]

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by raindropsonroses | 2007-06-25 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(16)

ソフィーの選択。

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拝啓

長く鬱陶しい梅雨が始まりました。クロちゃん、その後お元気ですか?
僕はいたって元気です。薔薇も一先ず終わり、旅行から帰って来て惚けている所。
薔薇は10月頃までお休みかな。春先の情熱を一年間維持するのは所詮無理ですから(笑)

さて、今日は一枚の写真を同封しますね。
もうお分かりですね、これは3月にニューヨークに行った時に撮ったブルックリン橋。
フィルム・カメラで撮りました。この橋をフィルムで撮るためにだけ
フィルム・カメラを持って行ったって言っても過言じゃないくらいなんです。
この普通の人にとっては何の変哲もないブルックリン橋……。
僕にはどうしても訪れなければいけない理由がありました。

良く、「○○さん、薔薇でお好きなベスト3は?」と、聞かれます。
それと同じ頻度で聞かれるのが、「生涯のベスト1の映画は?」と、言う質問です。
勿論、好きな映画は星の数ほどありますし、その時その時の気分でも変わって来ます。
たった1本の映画を選ぶのは無理と言うものです。だけど、常に僕のベスト3に入る作品があります。
それは、メリル・ストリープの「ソフィーの選択」です。

このウィリアム・スタイロンの傑作小説の映画化「ソフィーの選択」、
当時は今でこそ死語になっている「女性映画」としてスマッシュ・ヒットしました。
第二次大戦後のブルックリンでナチスの収容所の影におびえる女性を描いたこの作品、
最初に出演のオファーが来た時、丁度「フランス軍中尉の女」の撮影で
ロンドンに向かう途中だったメリル・ストリープは出演を断ります。
「脚本を読んでみないと分からないから」と言う理由で。後に脚本を読んだストリープは愕然とし、
監督のアラン・J・パクラに跪かんほどに懇願して役を獲得したそうですね。
そして入魂の演技で見事アカデミー賞主演女優賞に輝いたのでした。
ポーランド訛りの英語とポーランド語、ドイツ語を駆使し、
これまた狂気の淵を行き来するネイサン役のケヴィン・クラインと
スティンゴ役のピーター・マクニコルの好演も相まって、非常に余韻豊かな名作となりました。
原作者のスタイロンをして「映画の歴史始まって以来の女優の最良の演技」といわしめ、
アカデミー賞を始め、数々の栄冠に輝いた事でもそれは証明されています。

監督のアラン・J・パクラが主人公のソフィーのキャスティングに困り、
ポーランドが舞台になることから、同じくポーランドの大監督、アンジェイ・ワイダに
誰が適役か相談した所、「君の国にはメリル・ストリープがいるじゃないか」と、言われたそう。
訛りを駆使した台詞回し、メイクやヘア・スタイル、素晴らしい衣装で完全武装し、
時には収容所のシーンではダイエットで極端に体重を落とし演じきった悲しみのソフィー、
彼女の収容所を出た後の地獄の生き様、収容所を生き抜くためにした人生の選択を
丁寧に緻密に描いたこの作品、未だに深い余韻とともに僕の胸の中にあります。
そう、この映画の最大の美点は「余韻がある」ことでしょうか。

写真は、スティンゴの処女小説の出来を祝って、ネイサンが2人を連れ出したブルックリン橋。
ネイサンを憧れの目で見るスティンゴ、愛情の眼差しで見つめるソフィーの前で
軽やかにここの鉄塔の上によじ上り、シャンパンでスティンゴの輝かしい未来を祝ったのでした。
そこに流れるマーヴィン・ハムリッシュの憂愁を帯びたテーマ曲、
ヘリコプターショットで高らかに3人の気持ちの高揚を歌い上げる腕前はさすが。
しかし、そこから物語は一転して悲劇の結末へと……。

この作品には2度の告白シーンがあります。
2度ともソフィーが自分の過去をスティンゴに語って聞かせるシーンです。
初めの告白シーン、窓際に座ったソフィーの月明かりに照らされた青白い顔、
この顔は映画のラストにボンヤリと再登場するのですが、ここでもまだソフィーは嘘を付く、
収容所を出て生き残った自分が今を生きるために本能的に口をついて出て来る嘘。
既に彼女の中ではどれが本当でどれが嘘だか境目がなくなって来ているのでしょう。
そして2度目の告白シーン、初めてソフィーは重たい嘘の殻を全て脱ぎ捨てます……。
ソフィーが付いた嘘の数々、衝撃の事実、ネイサンのこれまた付かねばならない悲しい嘘、
ナイーブなスティンゴの目を通して語られる情緒豊かな名作だと思っています。

この映画の主人公は厳密にはスティンゴ。スタイロンがモデルとされている
彼の青年時代のホロ苦い想い出、南部の田舎町からニューヨークに出て来た時に出会った
悲しい2人の恋人との邂逅を情緒タップリに描いたこの「ソフィーの選択」、
紛れもない傑作だし、常に僕の生涯のベスト3に入って来る作品なんです。
だからどうしてもブルックリン橋に行ってみたかった……勿論、よじ上ったりはしないけれど(笑)
ニューヨークに行くと決めた時からこの写真が念頭にあったんです。

今日で何と58歳の誕生日を迎えるメリル・ストリープ、
「プラダを着た悪魔」以降、話題作が目白押しで、
第二の華やかな女優人生の幕開きと言った所でしょうか。
アンソニー・ミンゲラが監督する「朗読者」、僕は読んだ時からこの映画化は是非、
メリル・ストリープでと思っていました。そうすれば「ソフィーの選択」と対をなす作品になるからです。
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生憎の日曜日、物凄い人出の切れ目を待つようにして数十分、
いつの間にかスッカリ日が暮れてしまいました。頰を撫でる清々しい寒気……。
クロちゃん、あなたはこの作品に付いては辛口でしたね。
僕にも、やれ感傷的だとかセンチだとか言っていましたっけ(笑)
でも、この作品から25年、未だに僕はメリル・ストリープの魔法にかかったままです。
それはそれで凄い事だと思いませんか?後にも先にも、こんな女優はいませんもの。
たまにはゆっくりと映画の話しをしたいですね。お時間作って下さい、馳せ参じます!


敬具

2007年6月22日  


ブノワ。


[Meryl Streep Online /Meryl Streep (1949~ )]
[Sophie's Choice/ソフィーの選択 (1982)]
[The French Lieutenant's Woman/フランス軍中尉の女 (1981)]
[The Devil Wear Prada/プラダを着た悪魔 (2006)]
[Kevin Klein (1947~ )]
[Peter MacNichol 1954~ )]
[Alan J. Pakula (1928~1998)]
[Andrzej Wajda (1926~ )]
[William Styron (1925~2006)]
[Marvin Hamlisch (1944~ )]
[Anthony Minghella (1954~ )]
[The Reader/朗読者/Bernhard Schlink (1944~ )著/松永美穂 訳/新潮社 刊 (2000)]

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by raindropsonroses | 2007-06-22 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(166)

予期せぬ出来事。

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拝啓

不安定な天気が続きますね。
今年は梅雨が短くて夏が長くて猛暑とか。年々、暮らしにくくなりますね。

さて、ようやくフランス旅行の写真の整理がつきました。
今回はいつも程ではないけれど、結構撮りましたからね、
相変わらず寝ずの作業です。PCを眺めているだけで楽しかった旅の記憶が甦りますが、
今回、思わず大収穫だったのが、ノルマンディーで宿泊したホテルで仕入れた情報で
人知れぬ古城、「Chateau de Miromesnil」を訪れた事なんです。

予定していた「Parc Floral du Bois des Moutiers」を予定より少し早めに切り上げ、
タクシーで20分の「Chateau de Miromesnil」へ。
ここは入園料は確か数ユーロ、お安いですが見学するには予約が必要です。
ホテルのマダムに電話を入れて貰ったのが功を奏したようで(城主とお友達らしい……)
応対に出てくれた作業中のマダムは非常に愛想が良かったです。
実はこのマダム、作業着を着ていて俄かには信じられなかったのですが、
この城に実際にお住みになっている御当主らしいのです(いきなり敬語になる!)
全く気取った所がない気さくなマダム、何と、一般は立入禁止の裏庭も特別に見せて下さいました。
人に見せるために手入れされた庭ではないけれど、そこここに薔薇が植えられ、
玉砂利を敷いた広い中庭は数匹飼っている犬の運動場になっているみたいです。
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お礼を言って、城の正面の壁際に植え込まれたツル薔薇を見学し、
左側の門を潜るとそこには夢のようなポタジェ(野菜畑)が広がっていました。
想像を裏切るブルーで纏められたポタジェ。立体感に溢れ季節の花が咲き乱れています。
暫し茫然と眺めた後は物凄い勢いで写真を撮りだしました。閉園まで時間が迫っていましたからね。

旅はいつでも驚きとハプニングの連続だけれど、
今回のような予定外の嬉しい驚きはいつでも大歓迎です。
こちらで撮らせて貰った写真はディスクにして親切にしてくれた御当主に送る積もりです。
可愛らしい息子さんも写っているしきっと喜んで下さるでしょう。
ノルマンディーでの移動はタクシーを利用しましたが、
このタクシーの運転手のムッシュがこれまた驚きのいい人で、
これまたディスクを送らなければならないほど……この話は今度お目に掛かった時にでも(笑)

ではでは、暑さでヘタらないうちにキュキュっとビールでも如何ですか?
積もる話しもありますから。また連絡しますね、お元気で!


敬具

2007年6月19日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2007-06-19 00:00 | 旅の栞。 | Comments(26)

麗しきマダムの肖像。

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前略

Fさま、その後、お元気ですか。旅の疲れは癒えましたか。
僕は十年一日のごとき平凡な毎日を送っています。
薔薇が一段落した今の時期はシーズン中に撮り溜めた写真の整理に追われます。
時間が少しでもあるとPCに向かって写真のセレクトと色味調整、
大事な名前付けをやらないといけません。ザァ〜っと見渡すと、薔薇の名前って本当に素敵ですね。
人の名前が沢山付いているのも薔薇の特徴ですね。数ある名前の中で、
矢張り僕が絶大なる信頼を置くのはマダムが付く薔薇です。
マダムが付く薔薇に綺麗じゃない花はありません。
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今年、写真を選んでいてお気に入りの何枚かを同封しましょう。
1番目の大きな写真と2枚目の横位置のは「Mme. Plantier」です。
ウチのバルコニーにある数少ないアルバ種になります。
2年前にディエップから車で15分の所にある植物好き垂涎の庭園
「Parc Floral des Bois de Moutiers」で初めて実物を見ました。
今回も再度満開の「Mme. Plantier」を見る事が出来ましたが、
巨木に這い上がるようにして咲くその姿は繊細なのに力強さを感じさせます。
繊細な花弁に非常に細立ちの枝、実際に育ててみてその愛らしさに完全にノックアウトです。
強烈な匂いはオールド・ローズにレモンとフルーツの匂いが乗ります。
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3枚目の薔薇、ここまで綺麗に撮れるのは極めて稀で、
大体はウドンコ塗れでヒドイ事になる「Mme. Louis Leveque」です。
モス・ローズの宿命で、湿度の高い日本では殆どがウドンコ病になってしまいます。
一旦、罹ったら最後、モスの腺毛と分泌液で絶対に治らないし綺麗にはなりません(笑)
もう真っ白!「これから天婦羅を揚げるんですか?」って聞きたいくらい。
しかし、それを承知でなお愛して止まないモス・ローズ。
この「Mme. Louis Leveque」はその中でも最もボリュームがある巨大輪でしょう。
繊細な薄紙のような花弁、強烈なオールド・ローズの匂い。
雨に極端に弱いし、数年に一度しか完璧な形で咲かないけれど、
育てる価値は十分にある美しい花です。頭が思いので支柱を立て、
完全な消毒をすればなんとか……雨の日には傘でも欲しいくらい(笑)
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4番目の写真は「Mme. Alfred de Rougemont」です。この淡いピンクの小輪は非常に人気品種で、
僕は「マダム」の名前に釣られてお迎えした訳ですが、
確かに咲いた姿は繊細さのなかにスッキリとした爽やかさを感じます。
小輪の割にステムが長く、大きめの葉はまるで人間が腕を下げるように付き、
株全体が密にならずにスッキリとしたニュアンスです。
匂いは軽いけれど、人気があるのがよく分かる品種。
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5枚目の写真は、矢張り、マダムと言えばアルディ。「Mme. Hardy」です。
オールド・ローズの白花で最も美しいと言われる薔薇、中心に覗くグリーン・アイ、
強烈なオールド・ローズの匂い。最も美しいと言われるのも納得です。
ジョセフィーヌの薔薇園の責任者だったアルディが夫人に捧げた薔薇。
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6枚目の写真は、以前、枯らした「Mme. Legras de St-Germain」です。
これもウチには少ないアルバ種。アルバの特徴で、樹全体に赤っぽい所が全くありません。
フレッシュな、グリーンにピュアな白の花が咲きます。
驚くべき匂いはオールド・ローズに蜂蜜とレモンの匂い。

どうでしたか、美しきマダムの肖像、まだまだ他にもあるんですけど、
薄い色の、色白のマダムで纏めてみました(笑)
大体、女性、それも自分の奥方に薔薇を捧げるのに綺麗じゃない訳はないし、
名前に「マダム」が付く薔薇は買って間違いなしです。


草々

2007年6月15日


ブノワ。


[Mme. Plantier (A) Plantier, 1835]
[Mme. Louis Leveque (M) Leveque, 1898]
[Mme. Alfred de Rougemont (HP) Lacharme, 1862]
[Mme. Hardy (D) Hardy, 1832]
[Mme. Legras de St-Germain (A) 1846]

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by raindropsonroses | 2007-06-15 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(16)

薔薇を慈しむ手……Jean-Pierre Guillot氏。

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拝啓

Nさん、Aくん、その後お変わりありませんでしょうか。
僕は日曜日に、無事、東京に戻りました。もう、蒸し暑いのなんのって(笑)

さて、リヨン滞在中は色々とお世話になりました。
感謝、感謝、僕たちの感謝の気持ちは到底言葉では言い表せません。
今回の旅は、フランスに満開の薔薇を見に行く旅でした。
去年の秋に話しが持ち上がり、日程の調整や訪れる場所の選定など……。
比較的すんなりと決まったんですよ。僕等の自分の薔薇がありますし、
満開の薔薇を見るとなると、自ずと日取りは決まってしまいますからね。
1日24時間、この時期のフランスは一日が長いけれど無理は禁物です。
広い薔薇園や庭園を歩く訳です、夢中になってしまうことを踏まえて
薔薇の名所は1日に一カ所と決め夕方には自由時間を設けるなど
フレキシブルな予定を組んだんです。勿論、毎日がメイン・イベント!
薔薇好きが集まった訳ですから、食事中も移動中も薔薇の話しで持ち切りでした。

今回、そんなメイン・イベントが目白押しの旅程の中でも、
最も僕等が楽しみにしていたのがリヨン郊外にある歴史ある薔薇のナーサリー、
ギヨー社訪問だったんです。早速、ギヨー社のHPを見て、
コンタクトを取って行けばいいかなぁ……って、そう思っていました。
所が、旦那さんのAくんがギヨー社に電話した所、現在、薔薇園は公開されていないとのこと……。
チョッと焦っちゃいました、全員、ギヨー社訪問を非常に楽しみにしていましたからね。
所が、担当の女性が「なぜ、見学したいのか社長に手紙を書け」って……。
そこで僕が、僕等、薔薇好きのギヨー社に対する思いと、一行の経歴を日本語で書き、
それをAくんとNさんがフランス語に訳してくれてギヨー社にメールで送信、
晴れて6月5日に訪問していいとの招待と、何と、ランチのご招待まで受けたのでした。

当日は、薔薇は午前中がいいからと10時に招待を受け、
ホテルからタクシーを飛ばして一路ギヨー社へ。いかにも日本人らしく10時ピッタリの到着(笑)
1時間チョッと社長室でジャン・ピエール・ギヨー氏のお話しを伺い
その後、圃場に出て最新の薔薇を見せて戴いたり、数年後に世に出るハズの非公開の薔薇を見せて戴いたり……。
開発担当のギヨーム氏と社長自ら圃場を案内して下さって感激しちゃいました。
ギヨー社の薔薇はどれも個性的な薔薇ばかりです。ジャン・ピエール・ギヨー氏と一緒に歩きながら、
僕が知っている薔薇の名前を言い当てると破顔一笑、満面の笑みを浮かべて喜ぶギヨー氏。
圃場では一つ一つの薔薇を手に取って匂いを嗅ぎ、僕等に意見を求めます。
なかなか正直は言えないものだけど、大らかなお人柄と見込んで
最後には「その薔薇はあまり好きではありません」などと、不遜なことを言う僕(笑)
薔薇だって美しいだけじゃダメです、売れてナンボですからね、
僕のような素人の、買う側の意見に耳を傾ける姿勢は素晴らしいと思いました。

ギヨー氏が薔薇を選ぶ4つの大きなポイントは、

 (1)匂いがいいこと。
 (2)花の形がいいこと。
 (3)繰り返し咲き性がいいこと。
 (4)病気に強いこと。

だそうです。先ず、匂いがいいことが最大のポイントと言うことには驚きましたが、
ギヨーム氏と2人で夢中になって匂いを嗅いで歩く姿に「なるほど」と、思ったものです。

写真は新作の薔薇を慈しむように手で持つギヨー氏。
大柄な方です、手も大きいけれど、その繊細で綺麗な指先にはビックリしました。

本当にNさんとAくんにはお礼の言葉も見当たりません。
帰りのTGVの中で僕等がどんなに幸せな顔をしていたか想像出来ないでしょう?(笑)
このお礼はいつかきっと……またリヨンに遊びに行きますね。
それまで2人ともお元気で!


敬具

2007年6月14日


ブノワ。


[Guillot]

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夜歩く。

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前略

Eさん、元気にしていますか。早いですね、今年も6月の中旬です。
Eさん、来月の頭にはいよいよ大台じゃないですか(笑)
どうですか、覚悟は出来ていますか。早く身を固めないとね(笑)
彼女も連れて来なさいよ、旨い寿司でも食べに行きましょうか。
勿論、僕の奢りです。

さて、今日は先月の中旬に撮影した薔薇の写真を同封しますね。
いつかEさんは僕が羨ましいって言ったでしょう。
いつでも好きな時に薔薇の写真を撮れるって。確かにそうかもしれませんね。
朝でも夕方でも、薔薇園じゃないから、閉園日も閉園時間もない訳だし。
この写真で夜の7時頃じゃないでしょうか。一日の作業が終わり、
シャワーを浴びてビール片手にバルコニーを歩いた時に撮りました。
気が向くと、簡単ですけど料理して、チーズや野菜と一緒に
大きめのプレートに何種類か盛り付けガーデン・テーブルに蝋燭を灯して夕飯にするんです。
なかなかいい雰囲気ですよ。昼間は暑いけれど、夕方以降は涼しいですもんね。
猫達はバルコニーを勝手に走り回り、たまにご機嫌を伺うかのように僕の膝や肩に乗って来ます。
疲れているときはボンヤリ居眠りしてしまう事もあるんですよ(笑)

夕闇にボンヤリ浮かぶ淡い黄色の薔薇はイングリッシュ・ローズの「Marry Webb」です。
かのターシャ・テューダーの庭にも植えられている由緒正しい薔薇。
あまり市場には出回っていないかもしれませんね。
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2枚目の写真はバルコニーの一番端の方、左側の中洲の固まりが僕のオリジナルの薔薇たち。
右側は「Agnes Schilliger」「Wisley」などお気に入りの薔薇が植えられているコーナー。
鮮やかなオレンジ色は「 Queen Bagatelle」。下が見えず何だか幻想的ですね。
これで夜の7時撮影。次第に目が暗闇に慣れて来るとこんな風景が広がります。

また連絡します、寿司、考えておいて下さい。


草々

2007年6月13日


ブノワ。


[Tasha Tudor (1915~ )]
[Marry Webb (ER) Austin, 1984]
[Agnes Schiliger (S) Guillot, 2002]
[Wisely (ER) Austin, 2004]
[Queen Bagatelle (HT) Teranishi, 2005]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

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