匂いのいい花束。ANNEXE。

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僕の宝石箱。

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拝啓

何だかハッキリしない天気が続きますね。Yくん、その後、如何お過ごしですか。
これでもう6月、スグに梅雨入り、それが8月まで続くんですから……。

さてさて、僕のオリジナルの薔薇、今年の交配は終了しました。
はぁ、何だか凄く短い期間に約200種類、
以前みたいに手当たり次第に何でもかんでも種も類構わず交配していたのとは違い、
可成、系統立てて目的を持って集中的な交配が出来たと思います。
あとは秋まで病気にならないように管理するだけ、途中で実が落ちないことを祈るだけです。

ところで、先日までウチの冷蔵庫の中が凄いことになっていました。
先ず、冷蔵庫内の棚を全部外し、撮影用の薔薇の花がギッシリ、
どこぞの花屋じゃないかと見まごうばかりの量の薔薇が入っています。
中には花の色が変わって行く様子を観察するために、
萎れるまで入れておく種類もありますからね。
それから写真の花粉セット!これがね、僕の宝物ね、宝箱(笑)
何がなくてもこれがないと話が始まりませんからね。
母親にする樹を選んで花が八分咲きの頃に花弁をむしり、
雄蕊を取りのぞきます。その雄蕊をこうして小さな容器に入れて保存する訳です。
花が八分咲の頃に作業する理由は、満開になると雄蕊から花粉が出てしまうから。
従って雄蕊は採取してから暫らくして花粉を出す訳です。
こうして大事に大事に保存した花粉、女性の指輪やネックレス、
ピアスなどが入った宝飾品が入った宝石箱にも似て、僕の大事な宝石箱なんです。

食物なんか入っていないんですよ。
だって、この時期は料理なんかするヒマありませんからね。
薔薇の花と花粉の他に入っているのはビールとシャンパンだけ……、
そう言ってみたいものです。実はビールのみなんです(笑)
そうそう、冷凍庫はいつも通りに営業中ですので、
例のもの、例の冷たい極上の貢ぎ物を宜しくお願いしますね(笑)

赤から紫色に美しい房咲きを見せているのは、
イングリッシュ・ローズの「Tradescant」です。
この薔薇はいいですね、凄く人気があります。
花も中輪で愛らしいし、房の蕾もキチンと開き切ります。
こんな薔薇が出来ると嬉しいなぁ……そう言う期待感が、
この花粉が入った小さな容器の数×掛け合わせた花の数×穫れる種の数だけあるんですもん……。
来年の春に繋がる夢は無限大……それだけで幸せと言うものです。

ではでは、来月早々にお目に掛かれますね。
凄く楽しみです。それまでお元気でお過ごし下さい。


敬具

2008年5月31日


ブノワ。


[Tradescant (ER) Austin, 1993]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-31 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(12)

花を贈る。

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今日、大好きな親友にブーケを送った。

長年勤めた店を今日付けで辞めたのだ。惜しまれて、何度も引き止められて……。
でも、ズッと歩んで来た道の目の前が急に開け、
前途に輝く道がが見えたなら、多少の困難は承知の上で飛び込まなければならない。
間違いはないだろう、彼女ならきっと上手くやって行けるハズ。

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

僕はいつも何かの記念日には花束かアレンジを送ります。
それが男でも女性でも、年上でも年下でも、先ず頭に浮かぶのが花束です。
真夏で帰宅するまでに時間が掛かるとか、花にまったく興味がない人、
花より団子系の人は別ですけどね……女性にもたまにいる(笑)
男に花束なんて……そう思うでしょう?これがまたなかなかいいのですよ。

僕が応援するある若手の男優は、

 「花束を貰ったのは初めてです!」と、頬を赤らめます。

勿論、そんなことはないでしょう。あれだけ才能があってハンサムなのですから。
リップ・サービス?……でも嬉しいじゃないですか。
日本が世界に誇る大女優も嬉々として、
 
 「まぁ、あなた、素敵な花束……どこのお花屋さん?」と、

ロビーではなく楽屋の化粧台の脇に置いて下さいます。
贈る人によってイメージは様々、季節や贈る用途に合わせてあれこれ考えるのも一興です。

花を贈る……簡単に言いますけれど、先ずは素敵な花屋を知らないとダメです。
男子たるもの、素敵な花屋の一つや二つは知らないとね。
ある程度の情報をお教えしてお任せ出来るくらいにツーカーでなければ。
下手な品物をあげて形として残るよりも、枯れてなくなる潔さがいいです。
素晴らしい花束はその人の株を上げてくれます。
僕の好みは意外や意外、薔薇を使ったアレンジは苦手でして、
一種類の花をどっさりと纏めた物が好き……早春にはラナンキュラス、
ダリアやスパイダー咲きのガーベラなど……。
今日の写真は、先日めでたく退職した親友に贈ったお祝いの花束。
まかり間違っても寿退社ではないのだけれど(一生無理?)新しい門出にお祝いの気持ちを込めて。
僕が大好きなフランネル・フラワーをメインに纏めて貰ったものです。

花を貰う……あまり庭の花を切らない方がくれたミモザだったり、
わざわざ僕が欲しいことを知って切って来てくれた「Apple Seed」だったり……。
贈る側の気持ちが伝わる瞬間、贈られた人のパッと輝く顔を見る瞬間、
何事にも代えられない瞬間です。


草々

2008年5月29日 


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2008-05-29 00:00 | 向き向きの花束。 | Comments(26)

薔薇はそれぞれに……。

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 「薔薇にはそれぞれに物語があります。」

これは僕がオースチン社のマイケル・マリオット氏に言った言葉です。
第十回を迎えた「国際バラとガーデニングショウ」、
初日の前日、思わず、プレスで入る事が出来たオースチン社のブースで、
報道陣を出迎えるマイケル・マリオット氏とお話しする機会があったのです。
簡単に自己紹介、どれだけイングリッシュ・ローズが好きかを力説(笑)
自分のバルコニーで約100種類のイングリッシュローズを育てていること、
自分でも楽しみのために交配をして薔薇を作っていること等々……。

マリオット氏も僕に質問して来ます。

 「どんな薔薇を作ってみたいのか。」
 「一番好きなイングリッシュ・ローズは何か。」
 「どうして薔薇がそんなに好きなのか。」

勿論、イングリッシュ・ローズみたいに美しい薔薇を作ってみたいこと、
一番好きなイングリッシュ・ローズは「Barbara Austin」であること、
そして、最後の質問に答えたのが最初の僕の台詞です。

 「薔薇にはそれぞれに物語があります。」

マリオット氏は大きく頷くと、したり顔で「その通り!」と仰言いました。

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前にも書きましたが、薔薇ほど人の名前が付いた花も少ないです。
作出家が苦心して作ったお気に入りの薔薇に名前を授ける時、
一体どのような思いで名付けるのでしょうか。
最愛の恋人や夫人に名前を捧げる人、歴史上の偉人の名前を取る人、
小説のタイトルや、登場人物の名前を拝借する人、
花を見たイメージでその色や形から連想する名前を付ける人、

花を愛でる僕達も、それぞれのの薔薇から色々な印象を受けます。
薔薇の名前と薔薇そのものの姿は切っても切れない関係にあります。
その薔薇を育てるキッカケは人それぞれ、切り花で薔薇を買う目的もそれぞれです。
100人薔薇好きがいたら100通りの物語がある、
薔薇本来の物語に、それに関わる人々の物語が加わる……。
他の植物にはなかなかないことですよね。

写真はイングリッシュ・ローズの「Bibi Maizoon」。僕のお気に入りの薔薇です。
今の完成形ではなくて、まだまだ試行錯誤している頃の美しいイングリッシュ・ローズ。
遅咲きのせいで、先日来の暴風と大雨をうまく逃れて綺麗に咲きました。
ご覧の通り、ギッシリ詰まった花弁で花は下を向いて咲きます。
オマケに、幾つか房になって咲きますから分銅をくっ付けているようなもの(笑)
雨で濡れたバルコニーに這いつくばるようにして撮りました。
ギッシリ詰まった花弁ですが、決してボーリングすることなくキッチリ咲いてくれます。
この変わった名前はオマーンの皇族のメンバーの名前が付いているそう。

皆さんの薔薇と出会ったキッカケは何ですか?育てる事になったキッカケは?
薔薇を買う目的は?何を目安に薔薇を買いますか?
そして、それまでのエピソードに新たに何を付け加えますか?


草々

2005年5月26日 


ブノワ。


[Bibi Maizoon (ER) Austin, 1989]

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by raindropsonroses | 2008-05-26 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(12)

あっちでお食べ!

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 「あっちでお食べ……。」

Zは近くに落ちていた薔薇の枝で器用に小さな芋虫をすくって
一声掛けながら垣根越しに隣の家に投げ入れた。
他にはいないかと用心深く辺りを見回す。
折角、手入れしてきた自慢のイングリッシュ・ガーデンを食い荒らされては堪らない、
美しく保つためにあらゆる犠牲を払っているのだから……。

Zは新宿でバーを経営している。
有り難いことにオープンして20年になるのに
客足が衰えるどころか徐々に右肩上がりの訳は、Zが常に自分自身に気を遣い、
オープンした頃の若さと体型を維持しているかに他ならない。
それから客と深い関係にならないこと。交友も相談事も程々に……それがZの主義。
マスターと客は一対一ではなくて、一対何千なのだから。
あの街に限らず、客の心なんて浮気なものだ。
新しい店が出来るとスグにそちらに流れる。
少しでも気に入らないことがあるとパタッと来なくなる。
Zは身に染みてそのことを知っている。
今までにどれだけの仲間が店を畳んで来たかしれない。
初めの頃こそ随分と客入りを気にしたものだが、
最近では全く気にならなくなって来た。何故なら精神的に鍛えられたことと、
自分に対する自信があるから。性格も穏やかだしスタイルもいい。
何よりも気に入っているのは父親に似た容姿、そう、若い頃の三國連太郎にソックリなのだ。
鬢に白いものが混じりだしたけれど、決して染めたりしない。
若造りはやり過ぎると危険だし、クセになり段々エスカレートして見苦しいから。
店の照明の下では誤魔化せても、日の光に晒されては一溜まりもない。
何より自然体が一番だと思う。客の殆ど90パーセント以上の人が、
男女の差なく自分目当てなのは重々承知の上での決め事である。

日々の努力から来る自信の他にもう一つ、
毎日の雑念を忘れさせてくれるものがガーデニングだ。
このマンションを買ったのも3階建てで16世帯と小じんまりしていることに加え、
Zが購入した1階の部屋の占有の庭が非常に広いことが最大の決め手になった。
ショールームを見ていち早く契約、その時に出した条件が、
庭には何も植えず、土も入れずに引き渡してくれることだった。
内覧会が終わると同時に懇意にしているガーデニング・ショップに入って貰い、
堆肥を梳き込むなど土作りから始め、満足の行く庭になる迄には4年の月日が掛かった。
約60平米の庭のいい所はあまり日差しが強くないこと。
半日陰の部分が半分くらいあり、Zが目指したイングリッシュ・ガーデンに打ってつけだったのだ。
目指せ「イリスの庭」……どれだけページを捲ったことだろう……。
常緑の樹は小豆島からわざわざ取り寄せた大きなオリーブ1本のみ。
後は全て落葉樹を植え、根元にはクリスマスローズやギボウシを植えた。
芝生はダサいと思うZは、代わりにクリーピング・タイムの種を播き、
歩くと匂いが立ち上るようにした。飼っている猫の肉球がタイムの匂いがする(笑)
テラスを作り、小さいけれどお気に入りの椅子とテーブルを置き、
休みの日には読書をしたり軽いブランチを摂ったり……。
ささやかな喜び、だけれどZにはなくてはならない命の薬なのだ。

丁度、正面の陽当たりのいい場所には大好きな薔薇とクレマチスが植えてある。
薔薇は本当にいい……数えたことはないけれど、イングリッシュ・ローズや
オールド・ローズを中心に、約50本ほど植えてある。
大きく伸ばした「Toby Tristam」と「Constance Spry」……。
その木陰で転寝をする贅沢……Zは薔薇は春に一度だけ咲けばいいと思っている。
だから葉の美しさも薔薇を選ぶ重要なポイントになっている。
ここに座って木漏れ日を浴びていると
嫌な客、面倒を起こす客のことなど少しも思い出さないほどだ。

 「あっちでお食べ……。」

今朝もこれからやって来る恋人のことを考えていたら目障りなものを見つけたのだった。
丹精込めた薔薇の葉を食べる憎っくき芋虫。全てに完璧を求めるZにとって病虫害はもっての他、
染み一つない花や葉でなければならない……。
完璧でありたいけれど、手で取ったり踏み潰したり、
自分の手を汚すのはチョッと御免被りたい……なるべく綺麗綺麗に生きたいではないか。
虫は密かに処分するもの。だって、大切な恋人といる時に見付けて
目の前で悲鳴でもあげたら一大事、イメージが壊れてしまうもの……。

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

皆さまへ。
そろそろ春の薔薇もお仕舞に近付きつつあります。
今年は日照不足で花保ちが良かった反面、ウドン粉病や黒点病がヒドかったです。
その割に虫が全くいない……チョッと恐いくらいに虫を見かけません。

 「あっちでお食べ!」

この台詞は僕が懇意にしているバーのマスターの台詞。
矢張りガーデニングが大好きなマスターの名台詞(笑)後は僕の創作です。
ウチの場合は隣がありませんから、この台詞を聞いて以降、僕は

 「あっちへお行き!」

と、マスターの口調を真似して下の道路に放り投げることにしています(笑)
無駄な殺生はなるべくしたくないけれど、芋虫くん、薔薇を齧っちゃいけないよ!ってなもんです(笑)


2008年5月22日


ブノワ。


[Toby Tristam (R) Mrs. Targett, 1970]
[Constance Spry (ER) Austin, 1961]
[三國連太郎/Rentaro Mikuni (1923~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-22 00:00 | 向き向きの花束。 | Comments(12)

女優然。

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

はぁ……アタシって、き、き、き、綺麗っ!本当に綺麗っ!
もうウットリしちゃう……まるでどこぞの女優みたい……。
あれは誰だっけ……そうだ、イザベル何とか……。
アジャーニ!イザベル・アジャーニにクリソツっ!
あとあれ、ほら……何とかビセット……ジャクリーン!
ジャクリーン・ビセットにも似ている!ってか、園ちゃんの方が綺麗かも(ニンマリ)
色白で瞳がキラキラ輝いて、目尻のアイラインもヒュッと上がり気味で……。
しかもこのカメラを意識した表情と来たら……我ながらウットリだわ。
こんな写真を公開したらまたファンレターが増えちゃうわ。
園ちゃん、ファンレターよりも鰹節の方がいいかな。
ファンレターは腹の足しにならないもんね。
そこの、マ・ダ・ム・!綺麗な園ちゃんは鰹節をご所望です(笑)

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

園ちゃんはいつもカメラ目線です。
他の猫達が、一見、自分の名前を知っているようでいて、
実は、個々の名前ではなく音に反応してこちらを振り向くのに対して、
園ちゃんはキチンと自分の名前を知っているところが凄いです。

いつも思うのだけれど、動物の写真を撮るのは本当に難しいです。
先ず、ジッとしていることがなく、オマケにこちらの言うことを聞いてくれる可能性はゼロ(笑)
シャッター・チャンスなどと言うものはないに等しいです。
さらに、コンパクトのデジタル・カメラだとタイム・ラグと言って
シャッターを押してから実際に撮れるまで可成りの時間差がありますから、
動物の一瞬の動きや可愛らしい表情を切り撮るのは至難の業なんです。

所が、園ちゃんは違います。
名前を呼べば必ずこちらを向くのでいい写真が撮れることが多いのです。
最近はさらにモデル並のテクニックを身に付け、視線を泳がす術を知ったようです(笑)
この写真もそう、一旦、こちらを向いてから視線を斜めに泳がせます。

 「おぉ、園ちゃんいいよいいよ!ハイハイもう一枚!おぉ〜っ!綺麗綺麗!もう一枚!」と、

カメラのこっち側に興奮してシャッターを切るおバカな飼い主がいます(笑)


草々

2008年5月18日


ブノワ。


[お園・Osono (2002~ ) Domestic Short Hair, White]
[Isabelle Adjani (1953~ )]
[Jacqueline Bisset (1944~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-18 00:00 | 猫が行方不明。 | Comments(12)

バラ色の10周年……国際バラとガーデニングショウ。

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…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

5月だと言うのに記録的な日照不足と長雨と低温が続いた。
久しぶりに晴れ間が覗いた週明け、いつも親切にして下さる方の計らいで、
一昨日のプレスと昨日のオープン初日、第10回を迎えた「国際バラとガーデニングショウ」に出掛けた。
初日の昨日、例年は朝一番に駆け付けるのが習わしだったけれど、
今年は朝方の雨に気後れし、ゆっくり午後からのお出掛けとなりました。

「国際バラとガーデニングショウ」も節目の10回目を迎え、
毎年〜入場者数が増えているそうだ。正直、こんなに長く続くとは思いませんでした。
きっと、何年か前に大流行したガーデニング・ブームが定着し、
次々に新しい薔薇を生み出すブリーダーや質の高い苗を作り生産者、薔薇園の人々、
薔薇を広く世間に広める役割をしている魅力的な人達の努力の結果なのだろうと思う。
そして、僕等、薔薇好きの飽くことなき購買意欲、新し物好きに負うところも多いかと思う(笑)

それにしても毎年〜設営、ディスプレイの向上には目を見張るものがある。
あくまでも自然であるがままのディスプレイの仕方は、
自分がそれぞれのブースのテーマの世界に紛れ込んだかのような錯覚を覚える。
相変わらず芋を洗うような混雑だけれど、そんな事も忘れるほど素晴らしい展示が一杯だ。
今回のテーマは「英国ガーデンへの回帰」。僕等が長年、憧れて来た英国庭園、
そして、今日の薔薇の一大ブームを作ったイギリスの薔薇、
特にイングリッシュ・ローズを中心としたディスプレイには溜め息が出る。

一通り会場を見て歩き、友人やお世話になっている方々にご挨拶をする。
写真を撮る他に、これもまたガーデニングショウの楽しみの一つだ。
一年に一度、薔薇の季節に薔薇好きが一同に会する……。
新しい薔薇に感激の声をあげ、知らない草花に小さく頷く。
ガーデニングのアイデアを盗み、新しく迎える薔薇のリストに何品種を加える。
僕はと言えば、相変わらず、人様とは違う変なところばかり撮影して歩いたけれど、
夢中に写真を撮ってアッと言う間に400枚を数えるほどだった。
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今日は所用があって会場に来られない人、
遠路遥々、家を空けるには多忙な皆さんのために何枚かお気に入りの写真を同封します。
「バラとガーデニングショウ」なので薔薇だけじゃなくて他の草花も……。
薔薇とクレマチスが交互って言う声も聞こえて来そうですけど楽しんで戴けると嬉しいです。


草々

2008年5月15日


ブノワ。


[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-15 00:00 | Raindrops on roses。 | Comments(12)

美しきエミリー・ブラント……ジェイン・オースティンの読書会。

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前略

不安定な天気の5月になりました。Mさん、ゴールデンウィークは如何でしたか。
今年は夏に長期の休暇を取るとかで、ゴールデンウィークは暦通りだと奥様に聞きました。
今日は最近観て気に入った映画のチケットを同封しますね。
奥様の分と2枚あります、仲良くどうぞ(笑)
映画のタイトルは「ジェイン・オースチンの読書会」前から楽しみにしていた映画です。

僕がこの映画を観たかったたった一つの理由はエミリー・ブラント!
「プラダを着た悪魔」で注目し、メリル・ストリープが「若手の中で最も有望」と絶賛する才能。
彼女の新作です、取るものも取りあえず劇場に駆け付けました。

残念ながら僕はあまりジェイン・オースチンには詳しくありません。
小説は映画を観る際に「プライドと偏見」しか読んでいませんしね。
ストーリーはオースチンの6冊の著作が重要なモチーフになっていますから、
読んでいるといないとでは随分と観るポイントや楽しみも違って来るでしょうね。
台詞もオースチンの著作を踏まえて書かれていますしね。
登場人物も著作の中の登場人物にダブらせていたりして、僕なんかは可成、割りを食った感じがしました。
まぁ、そんなことを感じさせないくらいに面白く出来ているんですが……。

エミリー・ブラント……久しぶりに現われた正当派美人女優+演技力抜群。
ベトナム戦争以降、ハリウッド映画がリアリズムを求めるようになり、
女優や男優が綺麗である必要がなくなってから久しいです。
ジェーン・フォンダが声高にベトナム反戦を訴え、
また、サリー・フィールドが「Union !」と書かれたプラカードを頭上に高々と掲げてからこの方、
女優は常に強く、どのシーンでも自己主張するようになりました。
ダスティン・ホフマンがニューヨークの片隅でドブ鼠のような暮らしをして以来、
共演女優よりも思い切りチビでも、どんなにブサイクでも、
演技力さえあればスターになれる時代になりました。
女優の顔だってスッピンなんか当たり前、隣の兄ちゃん、姉ちゃん的な容貌でもスターになれる時代……。
今、活躍しているスターはその時代からキャリアを積んで来たんですよね。
美しい人が本当にいなくなりました。でも、テレビもデジタル時代になり、
抜群の解像度を誇るようになると、再び俳優が顔の美しさを意識する時代になりました。

エミリー・ブラントを見ているとデビュー当時のオードリー・ヘブバーンを彷彿とさせます。
「ジェイン・オースティンの読書会」での彼女は高校のフランス語教師プルーディ。
だけど、一度も渡仏したことがない悩みを持った女性を演じています。
夫はスポーツ好きの体育会系、所謂、文学や繊細なことにはまったく縁遠い存在。
スポーツ・バーに入り浸り、家ではテレビ・ゲームに夢中で妻を顧みず。
強烈にだらしがないヒッピーだった母親と夫の狭間で、生徒に恋をしてしまったプルーディの、
実は彼女自身も大人になり切れていない微妙なゆらめきを繊細に演じていました。
彼女自身も恋をしてしまった高校生と同じくらいの精神年齢なのかもしれません。
エミリー・ブラントの特徴は声と瞳。小鳥が囀るような声は少し震え軽やかで、
いつも濡れているような瞳は夢見ごこちです。
ボブの黒髪から覗く額の幼さ、少女と大人のアンバランスが絶妙です。

まだまだキャリアのスタート・ラインに立ったばかり。
これからどんな演技を見せてくれるのか、また、どんな引き出しを持っているのか興味津々です。
きっとその引き出しは玉手箱を覗き見るように極彩色なんでしょうね……。
彼女が演じる若きヴィクトリア女王……楽しみでなりません。
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最初の写真はイングリッシュ・ローズの「Jayne Austin」です。
花は中心がアプリコットで、周りの薄い色の花弁が
中心部の刻むような細かい色の濃い花弁を大事に大事に包み込むように咲きます。
一目でそれと分かる個性的な薔薇、直立性で背が高い行儀のよい薔薇です。
匂いはウットリするほど強香、後にティー、それも最高級のダージリンのファースト・ブラッシュの匂いが残ります。
実はこの「Jayne Austin」今のマンションに越して来た時にお迎えしたんですが、
お迎えした理由は名前買い(笑)僕はてっきり作家のジェイン・オースチンのことだと勝手に解釈(笑)
極度のイギリス被れ、イギリス偏愛の友人と2人で飛び付くように買った記憶があります。
所がこの「Jayne Austin」は、作出家のオースチン氏の息子さんのお嫁さんの名前だそうです。
勘違いの結果、ウチにやって来たとしても、花の素晴らしさには変わりはないんですけど……でもねぇ?(笑)
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最後の写真の薔薇は同じくイングリッシュ・ローズの「Winchester Cathedral」です。
言わずと知れた「Mary Rose」の白バージョンの枝変わり。
手前の花のピンクの部分は「Mary Rose」の先祖返りでピンクが出た面白い例。
ジェイン・オースティンが眠るウィンチェスター大聖堂に因んで……。

今度、一緒に映画でも如何ですか。その後に一杯……楽しいですもんね(笑)
近々、お目に掛かれることを楽しみにしております。


草々

2008年5月13日


ブノワ。


[The Jane Austen Book Club/ジェイン・オースティンの読書会 (2007)]
[Jane Austen (1775~1817)]
[Emily Blunt (1983~ )]
[Meryl Streep Online/Meryl Streep (1949~ )]
[The Devil Wears Prada/プラダを着た悪魔 (2006)]
[Jane Fonda (1937~ )]
[Sally Field (1946~ )]
[Dustin Hoffman (1937~ )]
[Audrey Hepburn (1929~1993)]

[Jayne Austin (ER) Austin, 1990]
[Winchester Cathedral (ER) Austin, 1988]
[Mary Rose (ER) Austin, 1983]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-14 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(16)

匂いたつ紫色のドレープ……交配を始めました。

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拝啓

何だかハッキリしない天気の5月になりました。
Kさん、その後、元気にしていらっしゃいますか。
ブログを拝見していると、毎日のように薔薇が咲き出して
欣喜雀躍しているようすが手に取るように分かって微笑ましいです。

さて、僕も怒濤のような5月に入りました。一日の睡眠時間3時間……。
連日のように朝の3時に起きて猫の世話から始まり、
薔薇の写真を撮ってPCに取り込んで色味調整をしてから、
名前付けしていいカットをセレクトします。
それから一番大事な交配が始まりました……。
もうこうなるとノンストップ、自分の都合や予定なんか二の次三の次、
猫の世話も忘れ、天気と睨めっこしながら連日〜せっせせっせと写真撮影と
交配をしてバルコニーを駆けずり回ります(笑)

実は数年前に本格的に交配を始めた頃のノートが取ってあります。
それをパラパラ捲ってみると、いやぁ、何ともデタラメな品種の掛け合わせ方をしています……。
もう手当たり次第(笑)咲いている花を見れば後先を考えずに、
どの品種だろうと手当たり次第にやっていた感があります。
数年間のお休み期間を経て、多少は薔薇にも詳しくなり、
初めの交配の失敗を見るにつけ、いい加減な事は出来なくなってしまいました。
薔薇の中には実を結びにくい品種もありますし、
花粉がほとんど採取出来ない品種、雌蕊が退化している品種もあります。
その辺のノウハウを下敷きに、慎重に始めた今年の交配、薔薇を知った分、
手当たり次第には出来なくなりましたから、交配の数は減るでしょうね。
でも、その分、中身の濃い花が出来るのではないか……そう密かに期待しています。
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写真は比較的新しく出来た僕のオリジナルの薔薇。僕のテーマ・カラーの紫色です。
不思議なことに、この薔薇は一輪の中に赤と紫の花弁が混在します。
最終的には素晴らしい紫色に退色しますが、咲き始めは写真のような感じ……。
えも言われぬ豊潤な匂いがします。直立性、刺は細かいものと大きなものが混在します。
最後の写真は満開になってから3日目のもの。花保ちもいいです。
蕾が綻びて来ましたね。再び新鮮な匂いが漂います。
最近の僕のお気に入り、今年の交配ではどんな薔薇が出来るかな……。
今から来年の発芽と開花が楽しみでなりません。

満開の頃、シャンパンを持って遊びに寄らせて戴きますね。凄く楽しみです。
オリジナルの薔薇が咲いていたらカットしてプレゼントしましょう!請うご期待です!


敬具

2008年5月13日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2008-05-13 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(4)

この子が特別な訳。

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皆さまへ。

きん近影です(笑)
名前は「きん」です。きんちゃんでもなく、きんきんでもなく「きん」です(笑)
またお腹を見せて寝ています。名前を呼ぶと「nルルルル!」一声鳴きます。
性格は飛び切り人懐っこく可愛らしいのだけれど、
身体に出ている模様は、所謂、サビ猫と言われて最も人気なしです。
僕の病院の先生のお宅にも一匹いるそう、矢張り、保護したはいいけれど、
全く貰い手が見付からずに、そのまま先生のお宅で可愛がられているとか。
一応、茶トラが基準になって、そこに黒やら焦げ茶やらが斑になっています。
相変わらず腹を出し、万歳をして寝るクセはそのまま、
動物全般の本能か、猫だけのものかわかりませんが、
相手より少しでも高い位置にいると安心のよう……。
小芳が近くに来ても緊張は走るもののまったく気に掛けず、
腹を出して寝たままです。

さて、今日は巷では母の日ですね。
生まれてこの方、母の日なんて祝ったことがない僕ですが、
もう祝いたくても祝えなくなってしまいました。
そうそう、一度だけ、あれは小学生の頃だったかな。
初めて母の日に花をプレゼントしようと思い立ち、
小遣いを握り締めて近所の花屋に行きました。
今だったら絶対にカーネーションなんて選ばないし、
違う素敵な花でアレンジして貰うんですが、
何しろ当時は母の日はカーネーション、しかもピンクか赤と決まっていました。
さらに凄いのは、そのカーネーションでプードルを形作ったものが主流でした(笑)

当時からオマセだった僕は花屋の店頭で立ちすくむこと10数分、
ピンクと赤のカーネーションがどうにもこうにも嫌で理解出来なくて解せなくて……。
フと目線を横にやると、何と純白のカーネーションが売っているではありませんか!
まだこっちの方がいいや……パッと目を輝かせ「白のカーネーションを5本頂戴!」と、
花屋のお姉さんに注文したのでした。

初めて貰う母の日のプレゼントに顔を輝かせて喜ぶ母、
翌日、仕事場に行って同僚に話したんでしょうね……。
帰宅した母は呆れ顔で、

 「○○ちゃん、白いカーネーションは死んだ人にあげるものなんだってよ……。」

と、複雑な笑顔で一言(笑)
自分も知らなかった訳だし、息子も他意があっての事ではないのだけれど、
同僚に「いやぁね、○○さん知らなかったの?」と、皆で大笑いしたそうです。
そう言えば、「白いカーネーションを5本頂戴!」と、言った瞬間に、
花屋のお姉さんの顔が哀しげになり、その後、いやに親切になったのが不思議でした(笑)

それから、あれは高校生の時、入院した母に花を持ってお見舞いに行きました。
季節は秋、持って行ったのは深紅の彼岸花(笑)
わざとじゃありませんからね!その日、花屋で一番綺麗で心惹かれのが彼岸花だったのですよ。
母も「まぁ綺麗ね、お前、お母さんは嬉しいわぁ」と、言っていたクセに、
翌日、お見舞いに行くと「お前って言う子はまったく……。」
と、苦笑いしていましたっけ……。
これまた自分も知らなかった彼岸花の意味を
お見舞いに来た同僚の看護婦さんに指摘され笑われたそう(笑)

まぁ、この息子にしてあの母ありなんですが、僕らはそんなズッコケ親子でした。
さてウチの駄猫、天国の染香をはじめ、どの子も変わらずに可愛らしいのだけれど、
この写真のきんが特別なのは、きんか母が死んだ4日後にウチにやって来たからなんです。
母を荼毘に付した翌日、朝子の顎の下に出来たアクネ、
にきびの薬を貰うために立ち寄った病院できんと出会ったと言う訳です。
別に母のことがあったから新しく猫を飼う気になった訳ではないし、
前からもう一匹……そう思っていました。それにきんが母の代わりとも思わないけれど、
丁度、母と入れ代わりにやって来た猫ですからね。
きんを見る度に母のことを思い出してしまいます。

ここ暫らく、花屋の前は母の日のための鉢植えやアレンジで賑わっていますね。
母の日だけじゃなくて普段から親孝行したいものです。
白いカーネーションや彼岸花を母にプレゼントする
ブラックな僕が言えた筋ではありませんけれど……(笑)
そんな訳で、色々、思い出す「特別な」きん近影でした(笑)


草々

2008年5月11日


ブノワ。


[きん・Kin (2005~ ) Domestic Short Hair, Tortoiseshell]

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by raindropsonroses | 2008-05-11 00:00 | 猫が行方不明。 | Comments(18)

韻も装飾も抜きで……つぐない。

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久し振りに濃厚なイギリスの匂いがのする映画を観た。
ジョン・マキューアンの原作「贖罪」の映画化「つぐない」だ。
残念ながら僕は原作は未読です……ここは映画を観た勝手な感想を一つ……。

イギリス映画、それも少し時代を遡ったイギリスを描く作品の魅力は何だろう。
キーワードは幾つかある。美しい田園風景、豪華なお屋敷、出て来る美しくも傲慢な人々、
家事など一切した事がない優雅な貴婦人に、一世を風靡した美しき男たち(笑)
誇りを持って歌うように発せられるクイーンズ・イングリッシュ。
そして、なんと言っても彼らの上に歴然と、そして絶対に消えることのない階級制度……。
この彼らの上に生まれながらにしてガッチリとはめられた階級制度のお陰で、
主人公達がその制度の垣根を越えようとすることで、
様々なドラマが生まれ、傑作が生まれて来たように思う。

 「フランス軍中尉の女」「召使」「日の名残り」「恋」!……。

この「つぐない」も階級制度が、まるで「ロミオとジュリエット」のように2人を阻む。
そこに洋の東西を問わず、いつの世も誰しもが持っている子供の残酷さが働く……。

 ブライオニー………13歳。

彼女がついた嘘、犯した罪、彼女の一方的な片想いと嫉妬から仲を引き裂かれる恋人達……。
元々、セシリアと、使用人の息子のロビーは決して結ばれることはないハズなのだが、
映画のラストで作家となったブライオニーによって明かされるこの作品の構成を考えるに、
ブライオニーのついた嘘で無実の罪を着せられ収監され、
戦地に赴く事になったロビーとセシリアはその後二度と会うこともなかったのではないか?
セシリアは刑務所に面会にいくことすら許されず、手紙のみが彼らの通信手段だったのではないか?
劇中に出て来る2人の逢瀬は、全てブライオニーの創造であって、
彼女の中の罪悪感がセシリアとロビーに束の間でも幸せな時間を過ごして貰いたいと言う
ささやかで切なる願いから生まれた創造なのではないかと思うに至りました。
最晩年、死期が間近に迫ったブライオニーが上梓した「贖罪」。
彼女が実際に見聞きした事実以外は取材して創造したと言う……。

彼女が創造したクライマックスの3人の対決。
姉のセシリアの所に許しを請いに行ったブライオニーの前にロビーが表れる。
徹底的に、そして完膚なきまでにブライオニーの罪を糾弾し、
ブライオニーがついた嘘、偽の証言を翻し、己の名誉を回復し、
改めて潔白を証明するように文章でしたためるよう詰め寄るロビーの性格は、
それまで僕達がスクリーンを通して見て来たロビーその人とは相容れない違うキャラクターだ。
会わないまでもブライオニーの謝罪を手紙で受け、それをロビーに伝えているセシリア。
ブライオニーが自分の事を恋い焦がれていることを知っているロビー。
自分への気持ちを確かめるためにロビーの前で泉に身を投げるブライオニー。
人を試すとか言う大人のズルさはそこにはない。
純粋に身を賭してロビーの愛情を確かめたかったのだ……少女の切ない恋心に胸が痛む。
一方のロビーと言えば、その抱きしめたブライオニーのか細い身体の感触に驚き、
夏草の蒸れるような匂い、荒い息づかい、ミツバチの羽音の中、
無事に助けられて良かったと言う安堵感の次に沸き上がって来る怒りに我を忘れる……。
激しい言葉でブライオニーを叱責し背を向けたロビーの顔は清々しく、
もしかしたら笑顔すら浮かべていたかもしれないのだ。
少女に愛される喜び、幼い間けれど一途で純粋に自分に向かって来る恋心。
ロビーとブライオニーの間にはセシリアが知らないプラトニックな恋が存在する。

少女の気持ちを痛いほど知り、図書室でのことを目撃されたことの罪悪感。
ブライオニーがなぜ嘘をついたか彼は知っているのだ……。
彼は決してブライオニーに詰め寄ったりはしないハズなのだ。
ブライオニーはそこを描き間違えている。自分の罪を糾弾するためにロビーを利用している。

「韻も装飾も抜きで……。」

ロビーがブライオニーに激しく詰め寄る。
そして、ブライオニーは韻も装飾もタップリに、
言葉の限りを尽くして「贖罪」を書き上げたのだ。
自分が犯した罪を償うこと、結ばれることのなかった2人を
韻と装飾を多用して悲劇の恋人達に仕立て上げ、自らの罪を自ら糾弾すると言う自己陶酔。
あの一夏の想い出、短いイギリスの夏に咲いた悲しい恋の行方……。

ロビーが罪に問われたと言う従姉妹のジュノーの強姦騒ぎ、
ロビーが無実であることは、そこにいる全員が暗黙の内に知っていること。
ロビーの表情、セシリアの彼を信じる気持ちと図書室の事実。
家出した双子を無事に保護して戻ったロビーの表情が何よりも無実を物語っている。
母親もロビーの無実を知っている……そこに階級制度が顔を出すのだ。
ロビーが無実で娘のセシリアとの恋が抜き差しならない事になるのを恐れる母親、
末娘の偽証を知りつつセシリアとブライオニーを世間体から守ろうとする瞬時の選択。
最悪の悲劇が訪れることも知らず、願わくばゴタゴタの末に娘とロビーが
疎遠になり、この決して結ばれることのない恋がダメになればいい……。
今もって歴然と存在する階級制度……。

 「Come back to me……」

その言葉に戦地の厳しさを忘れ生き抜こうとするロビーの瞳の力強い光。
ジェームズ・マカヴォイが繊細にそして等身大に力演します。
少女の姉への憧れとロビーへの幼い恋をシアーシャ・ローナンが好演。
しかし!どうにもこうにもキーラ・ナイトレイとラモーナ・ガライは苦手なのです(笑)
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写真はブライオニーに見立ててパリのブールデル美術館で撮った、僕のお気に入りの少女の像。
ひっそりとブールデルのアトリエの片隅に佇んでいます。
美術館の街パリにあって、いつ訪れても人気が少ないお気に入りの美術館です。


草々

2008年5月6日 


ブノワ。

[Atonement/つぐない (2007)]
[James McAvoy (1989~ )]
[Saoirse Ronan (1994~ )]
[Keira Knightley (1985~ )]
[Romora Garai (1982~ )]
[The French Lieutenant's Woman/フランス軍中尉の女 (1981)]
[The Servant/召使 (1963)]
[The Remains of the Day/日の名残り (1993)]
[The Go-Between/恋 (1971)]

[ブールデル美術館]
[Antoine Bourdelle (1861~1929)]

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by raindropsonroses | 2008-05-06 00:00 | 映画館へ行こう。 | Comments(15)