匂いのいい花束。ANNEXE。

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「アンを探して」を廻る不思議な縁。

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あれは確か去年の8月の上旬、
PCに見知らぬ人から1通のメールが届きました。
僕のPCは幾重にも張り巡らされたスパム・メール・ブロックのお陰で、
迷惑メールや見知らぬ人からのメールは殆ど届かないのに……。
訝しげに思いながらメールを開いてみます。
それは、映画「アンを探して」のプロデューサー、
ユリ・ヨシムラ・ガニオンさんからのメールでした。

メールの内容は、

 「今、撮影中の映画のラストシーンで薔薇が重要な役割を果たすのだけれど、
  どんな薔薇を使ったらいいかご意見を戴けないであろうか……。」

確か、そんな内容でした。なぜ僕に?薔薇の専門家は沢山いるのに……。
いきなり見ず知らずの人からのメール、
しかも差出人は僕とは全く無縁の世界に住む映画のプロデューサー……。
一瞬ためらったものの、何しろ僕は物心ついた頃から無類の映画ファンです。
小さい頃からソフィア・ローレンに憧れ、世界の中心は映画、
1年間に250本映画を観た年もありました。
しかも薔薇が大好きで自分でも交配して楽しんでいます。
そうそう、学生の頃に「赤毛のアン」も読破しているし……。
きっとブログを見てくださって僕に白羽の矢が立ったのでしょう。
そう勝手に都合よく解釈しながらメールを読み進めました。
そして何より、ユリさんの温かい人柄が出ている文章に心打たれ、
本当に困っている様子が他人事のように思えなかったのです。
僕の頭にはメールを読み終わらない内からあれこれと、
薔薇の名前が浮かんでは消え、浮かんでは消え……。
勿論、スグに返事をするべくキーボードを叩き始めたのは言うまでもありません。

まず、映画のストーリーを聞くと同時に浮かんだのが「Mrs. Herbert Stevens」。
薔薇と言えば先ず、赤かピンクのイメージが先に立ちますが、
儚く散った純愛の象徴には白い薔薇がいいと思ったし、
何より静香を演じる吉行和子さんのイメージそのものだったからです。
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薔薇……花の女王、薔薇。

その起源を古代のギリシャやローマにまで遡ることが出来ます。
千年の世にもわたって愛培されてきた薔薇。
享楽の象徴としてキリスト教に迫害された中世の時代も、
修道院の片隅などでひっそりと生き長らえ、時に薬用として、時に観賞用や香料として、
そして、文学や絵画など芸術のモチーフとして常に人類と共に歩んで来ました。
花の美しさは勿論、薔薇の最大の特徴はその素晴らしい匂いです。
そしてもう一つ、あまり語られませんが、薔薇が他の花と最も違う点は、
人の名前が付いた品種が多いと言うことではないでしょうか。
歴史上の偉人に、神話の神々に、尊敬する先人に、そして、愛する夫人に、恋人に……。
そう、薔薇とは愛する人に捧げる花なのです。

例えば、映画の中に出て来る薔薇は「Peace」です。
第二次世界大戦終結の年に発表された「Peace」は、
二度と再び戦争という過ちを犯さないよう、世界平和に願いを込めて命名されました。
実は、この薔薇が生まれたフランスの薔薇園では、
「Peace」の名前が付いたネーム・プレートを見ることは非常に稀です。
この薔薇は作出者のフランシス・メイヤンが愛する母親に捧げた薔薇、
フランスでは「Mme. Antoine Meilland」と呼ばれているのです。
そのムッシュ・アントワーヌ・メイヤンも「パパ」と親しまれ尊敬され、
黒薔薇の傑作「Papa Meilland」に名前を残します。
尊敬する人、愛する人を薔薇に生まれ変わらせて名前を後世に残したい。
これこそが薔薇、薔薇が人と共に歩み、愛されて来て理由だと思うのです。
そして薔薇にはそれを愛でる人、育てる人それぞれに思い出があり、
物語やエピソードがあります。それがここまで薔薇が愛され続ける理由なのです。
僕が自ら薔薇の交配をする理由も薔薇に愛する人の名前を付けたいからに他なりません。

陽春、完成した「アンを探して」の試写会にお招き戴きました。
初めてお目に掛かるユリ・ヨシムラ・ガニオンさん。
メールを読みながら感じた温かい人柄、まるで穏やかな海のような雰囲気の方。
監督の宮平貴子さんはようやく完成した「我が子」に興奮の面持ちでした。

優れた芸術はそのジャンルに留まる事を知らず様々なものに影響を与えます。
名作「赤毛のアン」の心温まる世界は人々に読み継がれ形を変え、
時を経て映画「アンを探して」として生まれ変わりました。
そしてここにまた新たに美しい薔薇の物語が一つ生まれたのです。

「アンを探して」……本日公開です。
皆さんも是非、劇場に足を運んでみて下さい。
そして、皆さん自身の「アン」を探してみて下さい。



 ※この記事は映画「アンを探して」のプログラムに寄稿した文章を元に、
  加筆修正して掲載したものです。

 ※只今、メッセージがは入りにくい、送信したら消えた……。
  そんなメッセージを沢山戴いています。原因は良く分かりません。ゴメンなさい。
  メッセージを送信する前に、コピーして保存しておく事をお勧めします。

草々

2009年10月31日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-10-31 00:00 | 映画館へ行こう。

可哀想な朝ちゃん!(笑)

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 「可哀想な朝ちゃん……。」

ついつい声に出して言ってしまいます。
他の子達はそれぞれに超美麗ポートレートがあるのに、
朝子だけはこれと言っていい写真がありません。
朝子だけ可愛がっていない訳ではないんですよ。
5匹とも全員同じように分け隔てなく可愛いです。
でも、こと写真となるとねぇ……朝子って可愛く写り辛いんです。

先日、観劇の後に友人のポートレートを撮らせて貰いました。
今や贅沢にフルムを中心に100枚程度。
劇場の関係者のご好意でセットで照明まで点けて貰って……。
どんな写真が撮れたかな……興奮冷めやらぬ面持ちで帰宅、
フィルムを現像に出すべくカメラを開けようとすると……。

4枚フィルムが残っていたんです……4枚(笑)
こう言う時だけ朝子が被写体になります。
フィルムは朝子の瞳の感じを繊細に再現出来るからです。
デジタル・カメラだと黒く潰れてしまうんですよ。
元々、朝子って白黒じゃないですか(笑)モノクロのフィルムで充分?
とんでもない!朝ちゃんの金色の瞳、愛らしいピンクの鼻!
(常に鼻糞がくっ付いているけれど……。)
やっぱりカラーで綺麗に撮ってあげたいのですけどね……。

何だかんだ言って我家の一番人気は朝子。
付かず離れず絶妙な甘え方が評判のようです(笑)
今日の写真はやっとこさ飛び乗った洗濯機の上の朝子です。
どうです、可愛いでしょう?
この後「みゃぁ〜っ!」と一声、鰹節をおねだりです(笑)


草々

2009年10月25日


ブノワ。


[朝子・Asako (1998~ ) Domestic Short Hair, Black and White Bicolor]

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by raindropsonroses | 2009-10-25 00:00 | 猫が行方不明。

おねぎとピーマン……眉毛考。

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一幕二場。

 出来るだけ早口で。「!」マークの所では唾を飛ばさんばかりに。
 お互いの台詞が終わるか終わらないかのウチに矢継ぎ早に、
 油紙に火がついたようにペラペラと、立て板に水の如く掛け合いで喋ること……。


予定よりも少し早めに帰宅したピーマン。
自分よりも一足早くおねぎが帰宅していたことに驚きつつ、
荷物をテーブルの上に置いておねぎを探し始める。
洗面にいたおねぎ、何やら真剣に鏡を覗き込んでいる……。

P  「あらっ!おねぎ!」
O  「いやだ!ピーマン帰っていたの?」
P  「!!!!!チョッと!何よ、何よ、なんなのよっ!」
O  「!!!!!って、何が何なのよっ!」
P  「アナタ、おねぎ、その顔は一体どうしたの?その眉!」
O  「がハハハハっ……いいのよっ!チョッと失敗しちゃったの!」
P  「プッ!アナタ、それじゃぁ ” まろ ” だわね(笑)」
O  「うるさいピーマンっ!お黙りぃ!」
P  「コ、コ、コ、コワイわね、その顔。」
O  「うっるさいのよ!アンタだって人のこと言えた義理じゃないじゃない!
    アナタが驚いた顔……もっとコワイわよ(笑)」
P  「ふぅ〜ンだ、あたしそんなに変な眉していないもぉ〜ん。」
O  「いいの、眉毛なんかスグに生えて来るんだから。
    それにクラーク・ゲーブルだってショーン・コネリーだって眉剃っているわ!」
P  「チョッと!アンタも古いわねぇ(笑)
    彼等はいのよ、太い眉の形を整えているだけなんですもの。」
O  「いいのよ、アタシもチョッと整えてみようと思っただけ……。
    大丈夫、後でブラピ風に描くから。」

鏡からピーマンの方に向き直るおねぎ、
ひとしきり二人で大笑いしたあとリビングでワインを傾けながら……。

P  「おねぎ、アンタの眉毛見て思ったんだけれど、
    最近の男ってほぼ全員、眉毛イジっているわよね。アレってどう思う?」
O  「あたし大キライ、だって男らしくないじゃない!
    あらっ!アタシたちは別よ。身体は男でも心は女なんですもの(笑)」
P  「そうよねぇ、皆、本当に上手なんだけれどどこかしっくり来ないのよ。」
O  「アンタ、女よりも薄くて細い眉の男一杯いるじゃない。
    アタシが見る所、手入れしていて正しい眉の人って100人に一人よ!」
P  「変に形が悪かったりボーボーの眉毛は多少整えてもいいけれど、
    オヤジなんか問題外だし、今の子って少しやり過ぎよねぇ。
    凄く男らしくて素敵な子がさぁ、鏡に向かって真剣になって、
    眉毛を手入れしている姿を想像すると100年の恋も醒めちゃうわ。」
O  「オジサンもさぁ、いい年してガングロに日焼けして
    ソフト・モヒカンで眉毛が女みたいに細くて薄い……。」
P  「きゃぁ〜っ!最悪よぉ!(笑)しかも漏れなく茶髪!」
O  「昔さ、Y川先生が言っていたじゃない。
    金城くんって本当に素敵なんだけれど、一番いい所は眉毛だって。」
P  「あら、そう。さすがY川先生ね、目の付け所が違うわ。
    金城くんって眉毛イジっていないものね。」
O  「『徹子の部屋』に出た園佳也子さんが言っていたわ。
    大事な人に会う時には眉毛を描く手に力が入るって。」
P  「それだけ大事なのよね、眉毛って。」
O  「さすがに最近は陰をひそめたけれど、
    オバさんで思い切り眉毛の上を剃って目に近付けている人いたじゃない。」
P  「いたいた!剃り過ぎて眉山にエクボ出来ちゃって
    眉毛が4本あるみたいな人よね?」
O  「そう!虫の触覚みたいになっちゃってんの!」
P  「虫!」
O  「そうよ!虫よ!(爆)
    今時、眉の上を剃っている人なんかいないわよ。
    抜いたり剃ったりエクボが出たらそれはやり過ぎって言うことなのよ。」
P  「アレってハリウッドの女優を真似てんのかしら?」
O  「アタシ達の母親の世代ってもれなく眉がリズ・テイラーだったじゃない(笑)」
P  「あらっ!美空ひばりって言う説もあんのよ(爆)」
O  「でもさ、リズは特別よ。絶世の美女じゃない。彼女、濃い眉毛の間に
    丁寧にペンシルで地肌を塗り潰し輪郭まで描いているのよ!
    ピーマン、凄いのよ。眉墨を細ぉ〜く削って丁寧に丁寧に……。」
P  「欧米人って眉と目がくっ付いているんじゃなくて、
    顔の骨格が立体的だから眉毛の所の骨が前に出ているだけなのよね。」
O  「下から見てご覧なさい、しっかり目と眉毛が離れているから。」
    アタシ達が憧れて目標としているヴィヴィアン・リーだってさ、
    もしもよ、普通に左右対称の眉だったら
    あそこまで絶世の美女って言われたかどうか……。」
P  「昔の女優は個性的だったわよねぇ。ヴィヴィアンのあのつり上がった眉ね!
    オードリーだって実際よりも太く描いてコケティッシュだったし。
    大体、日本人なんて平板な饅頭顔なんだから(笑)
    かえって眉と目を離した方がニュアンスがあっていいのにね。」
O  「京マチ子とか高峰秀子とかさ……チョッと古いか(笑)」
P  「アタシ、服部真湖なんか素敵だと思うわ。」
O  「丸顔で弓なりの眉でね……個性的よ。優雅よ。」
P  「まぁ、女はいいわよ。どうせ化粧すんだから。問題は男!男の眉なのよ!
    一分の隙もなく細身のスーツ着て流行の眼鏡、いかにも頭の天辺から爪先まで
    お金かかってま〜す!みたいなお洒落しているんだけれど、
    アニメの主人公みたいなヘアに細く整えられた眉……全く男を感じないわ。」
O  「アナタ、ピーマン、今やひげ剃りに眉剃りカミソリがオマケで入ってんのよ!」
P  「あら、本当に!?」
O  「ホラっ!これっ!
    この小さなカミソリがアタシが ” まろ ” になったカミソリ!」
P  「おねぎ!」
O  「ピーマン!」
O&P「世も末よぉ!」

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そう、おねぎとピーマンじゃないけれど、眉毛って本当に大事だと思います。
幸い僕の眉毛は手間要らずなんですが、一回、” まろ ” 風に剃ってやろうかしら(笑)
何事にも言えるけれど、やり過ぎは禁物、自然が一番。
ほどほど、分からない程度にするのが一番です。
今の若い女性のメイクもそう、バッチリ、コッテリ、いかにもやりましたっていう感じ。
これからファッション・グラビアの撮影をするんじゃないんだから。
高校生のつけ睫毛なんて言語道断!ハッキリ言って気持ち悪い生き物にしか見えません。
若さの輝きってあるんじゃない?今からそんなに塗りたくってどうするの?
その内、イヤでも塗らなきゃならなくなるんだから(笑)
第一、皆さん、学校に登校でしょう?学校は勉強する場なんですよ。
OLの皆さん、これから会社に出勤でしょう?
もっと薄くてもいいんじゃないの?気持ちは既に夜なのかな?(苦笑)

男の眉剃りもねぇ……技巧的な人を見ると目が釘付けになっちゃうんですよ(笑)
それが男っぽい人なら尚更。こんな顔して鏡と睨めっこかぁ……笑えます。
奇抜なヘア・スタイルに命をかけ、眉を整えることに一心不乱になる……。
何やらカサカサ音がすると思ったら、隣の席の男が油取り紙で顔を押さえていた……。
おいっ!ハンカチで拭けよ!反吐が出るとはこのことです(笑)

この年まで生きて来ると色々と見えちゃうんです。
飾らず素のままに生きている人って素敵だなぁ……って。

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写真は数年前の3月にニューヨークはメトロポリタン美術館で撮った、
ジョージア・オキーフの大理石の彫像。
キリリと太い眉毛が意志の強さを感じさせます。
偉大な人、才能ある人、何かを成し遂げた人って、
眉毛の形が正しく立派だと思うのは僕だけでしょうか?


草々

2009年10月18日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-10-19 00:00 | 向き向きの花束。

瞳に熱く冷たい光……「血の婚礼」。

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 「真っ赤な糸玉、真っ赤な糸玉、お前は何になるの?
  真っ赤な糸玉、真っ赤な糸玉、お前は何になりたいの?」


 少年少女たちは輝かしい未来に胸踊らせ目を輝かせます……。 
 その汚れを知らない瞳の純粋な輝き。

 娘たちは花嫁になる事に憧れ未来の夫に貞節を誓います……。
 まるで綻びかけた薔薇の蕾のような初々しさ。

 女たちは失った男たちのために祈り、目に熱い涙をためます……。
 声にならない慟哭、瞳に浮かぶ冷たい怒りの炎。

 男たちは家族の名誉のために身体を張り、女のために命をかける……。
 勇気と誇りに輝く顔、冷たくなった躯と女たちの声にならない叫び。


tpt 公演「血の婚礼」を観て来ました。
2日のプレビューと、初日が開き2日目、4日の2回です。
フェデリコ・ガルシア・ロルカの傑作戯曲「血の婚礼」。
まだまだ先が長い公演です。これから観に行く方もいますので、
有名なストーリーについてはここには書かないでおきましょう。

桜木町にある「BankART Studio NYK」の小さなスペースに、
若手俳優の身体が縦横無尽に躍動します。
肉声の温かさ、美しい響きを感じるにはもってこいの大きさ。
スペイン、アンダルシア地方を彷彿とさせる砂の舞台が象徴的です。
朝倉 摂の描く力強い馬の絵が四方をグルリと取り巻きます。

驚いたのは、プレビューの時にはまだどこかぎこちなく、
どことなく調和がとれていなかった俳優陣が、
初日を迎え、次の公演では一つにしっかりと纏まっていたことです。
若い俳優の勘の良さが、戯曲の中の己の居場所、他の俳優たちとの関係、
物凄い早さで修復し、バラバラだったモザイクが、
アッと言う間に一つに纏まったかのようです。


娘たちの夢と希望、若者に向けた愛の眼差しは、
やがて夢破れ、愛する若者たちの身体から流れる血の数によって
やがては悲しみの色をたたえるようになります。
感情を全く見せない冷たくやり場のない怒りの炎が女たちの瞳に宿ります。

威風堂々……「母親」の大沼百合子は大地に根付くスペイン女そのものでした。
若手中心の役者人を扇の要のように一つに纏める大きさと驚くべき技量。
山田ジルソンの汚れを知らない「花婿」。
未来への希望に燃える青年像は哀しみのラストとの対比が素晴らしいです。
「花嫁」の呂 美……知らず知らずのうちに男たちを惑わす魔性。
伯鞘麗名が演じるレオナルドの「妻」……花嫁の悲劇の対極に位置し、
その出来が作品の出来を左右しかねない一番難しい役。
赤子を抱くその美しい背中は慈しみと夫への哀しみで張り裂けそうです。
濱﨑 茜が演じる「月」……神々しいとは彼女のこと、
レオナルドと花婿を死へと誘う冷たい光を放ちます。
武田優子の蓮っ葉でしたたかな「女中」……生き生きとして本当に達者。


 「蹄は割れ たてがみは凍る 目には銀の矛先が刺さる……。」


この戯曲を観る時、いつも不思議に思うのは、
役名が全て「母親」「花婿」「花嫁」「姑」「妻」「月」「死」……と、抽象的な中、
たった一人、花嫁を結婚式の最中に奪って逃げる男だけ
「レオナルド」と名前が付いていることなんです。
実際にあった事件を元に書かれたと言われる「血の婚礼」。
ロルカが「レオナルド」と言う役に託した思いは如何に……。
そこに何か特別なものを読み取ることは可能なのか?
こめられた秘密とは?いつも深読みしてしまいます。

そのレオナルドを演じた小谷真一は、いつもよりも半オクターブ低い発声で、
悲劇の男を的確に演じます。身体の線は細いものの骨太の役作り。
レオナルドが分身のように駆る駿馬……まるでその馬のような野生の若者。
何故、死を覚悟で花嫁と逃避行しなければならなかったのか。
可愛い子供と美しい妻を捨てる男の決心に肉付けしリアリティーを持たせます。
ピンと伸びた背筋、美丈夫……また新な一面を見せてくれました。

もう一つ面白かったのは、小さな空間を存分に生かした演出です。
例えば、婚礼のダンスのシーンで見られるレオナルドと花嫁の絡み合う目線……。
極めて映画的な目線の演出。クローズ・アップのない舞台では珍しいです。
大劇場では決して味わえない細やかな演技を堪能しました。

「血の婚礼」……10月18日まで。BankART Studioにて。
僕はあと2回、11日と18日に観に行きます。

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写真はステージ入り口付近に置いてあった金盥……。
スペインはグラナダの宝は水です。
アルハンブラ宮殿の庭には勿論、優美な池と噴水が。
古の人々は室内にも大きな噴水を設け、
訪れる客人たちを驚かせ財を誇ります。


白く乾いた大地に染み込む真紅の血、流れる女たちの涙……。
血で血を洗う哀しみの歴史は続くのです。


草々

2009年10月7日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-10-07 00:00 | 天井桟敷の人々。

スペインより愛をこめて。

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天高く馬肥ゆる秋……早いもので10月になってしまいました。
皆さん、お元気ですか?秋の薔薇は咲き出しましたか?

さて、この度、僕の親友がブログを始める事になりました。
タイトルは「シークレットスペイン」…………。

スペイン在住の angel & chiho さんが素敵なスペインを紹介してくれます。
お料理上手、芸術にも造詣が深い angel & chiho さん。しかも美人!
燦々と降り注ぐ太陽を一身に浴びたかのように素敵な女性です。
スペイン在住20年の彼女の目に映った極上のスペイン。
誰も知らない秘密のスペイン……。

 「The rain in Spain stays mainly in the plain !」…………。

スペインの雨は平野にばかり降るとは限らないかもしれません(笑)
これからどんなスペインを紹介してくれるでしょうか……凄く楽しみです。



今日の写真はご近所の瀟洒なお宅のバルコニーの白壁と小豆島のオリーブ。
オリーブの専門家の岡井路子さんがわざわざ小豆島から取り寄せたもの。
「撮って!」と、ツルの一声で撮らされた1枚(笑)


草々

2009年10月2日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-10-02 00:00 | 向き向きの花束。