匂いのいい花束。ANNEXE。

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リチャード三世……麗しのシェークスピア。

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2月の初日、ピュゥ〜ピュゥ〜と骨まで凍る寒風吹き荒ぶ中、
赤坂ACTシアターで「リチャード3世」を観て来ました。
最近、親しくお付き合いをして戴いている素敵な紳士のお誘いでした。

シェークスピア大好き人間の僕ですが、意外とこの手の歴史劇と喜劇が苦手……。
オリヴィエもマッケランも演じたリチャード3世、稀代の大悪党を古田新太がどう演じるか。
また、実力派の女優陣がエリザベス朝の悲劇の女性をどう演じるか……。
豪華なプログラムの写真を見ていて興味は尽きませんでした。

舞台のセットは一杯道具、近未来的、あるいは時代不明な、
パイプを張り巡らせたダークな色調のセットに、
俳優陣のカラフルでサイケな模様の衣裳が映えます。
舞台のそこここに設置された暗雲漂う悲劇を象徴するかのような不吉な13台のモニター。
そこにはリチャードと宿敵マーガレットのモノローグが字幕で映し出される他、
BBCならぬEBCニュースとして各地の反乱の様子や主人公の悪夢、
処刑の模様が映し出される……決して目新しい手法ではないけれど、
シェークスピアの装飾的な台詞と奇抜な衣裳や鬘、
携帯電話や銃、時代を全く無視した大道具や小道具が、
違和感なく調和する密度の濃い芝居になっていました。
音楽は優雅な宮廷音楽ではなくて勿論ハード・ロック!(笑)

このように古典を新しい解釈で描いた作品は数あれど、
なかなか成功するケースは少ないですね。
ベルイマンのトレンチコートを着たハムレットなんて言うのもありましたっけ。
オーソドックスなシェークスピアも良し、斬新なシェークスピアもまた良し。



稀代の大悪党リチャード三世……。
醜くい生まれついた悲しみ、いじけた心が成長とともにひねくれた意志を持ちはじめます。
絶え間なく受けた人々の哀れみと嘲笑が、人を憎む力となり権力への求心力なります。
権力への限りない欲求、目的のためには手段を選ばないリチャード三世。
そして、王冠を手にした途端にガラガラと崩れ落ちる砂上の楼閣。
手段を選ばず頂点を目指し、当然のごとく地獄に堕ちるリチャード三世。
圧巻だったのは2幕が始まってスグの女優3人による己の身の不幸を競い合うシーン。
曰く、大ベテラン銀粉蝶扮するマーガレットはヨーク家によって没落させられた不幸を嘆き、
前幕で恨みのたけを全ての人に呪文を掛けます。
三田和代演じるリチャードの生母ヨーク候夫人は、
自ら産み落としたリチャードによる身内の殺戮を嘆き、
夫エドワード4世と最愛の王子たちをリチャードに殺された久世星佳扮するエリザベスは、
人に呪いをかける術を教えてくれるようマーガレットに請います。

銀粉蝶のコミカルな味付けをした軽やかで大きな芝居、
三田和代の巧みでよどみない台詞術、滑舌とはこの人のためにあるような言葉。
久世星佳のまだ生身の女の部分に未練を残した悲しみの王妃。
油の乗り切った女優の台詞が絡み合いお互いに呼応する様子は、
観ているこちらも熱くなるほどでした。

戯曲の世界でもピカレスク・ロマンの傑作は沢山ありますが、
成功の秘訣は悲劇と残虐の間にユーモアを交えること……。
そう、お汁粉にひとツマミの塩、クリームグラタンにごくごく少量の味噌、
カレーに一匙のヨーグルト……全体が円やかになりコクが出るのと一緒です(笑)
血で血を洗う残忍なエリザベス朝の芝居に所々差し込まれるユーモア。
それによって対比が一層明確になり悲劇が際立ちます。

満席の客席に密度の濃い芝居……久し振りに堪能しました。
声を掛けて下さったS氏に感謝、随分と散財をおかけしました。


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写真は原作者のシェークスピアに因んでイングリッシュ・ローズの新旧2本。
それぞれシェークスピアの名前を冠した名花です。
右の少しマロンがかった薔薇が「William Shakespeare」、
1987年の作出、既にカタログ落ちした黒薔薇。
おそらく現存している株がなくなり次第この世から姿を消すかもしれません。
売れない薔薇は作らない……仕方がないことかもしれません。
左が交配親は違うものの、2000年に満を持して発表された「William Shakespeare 2000」です。
発表されて早9年、こちらも新しい品種に押されて影が薄くなって来ました。
両方とも素晴らしい匂いに艶やかな姿……そう、薔薇らしい薔薇……。
薔薇の流行……モードのそれよりも、薔薇のそれの方が早いかもしれません。
でも、一旦、絶えてしまったら二度と復活しないのです。

このような2品種を並べて撮影するのも薔薇栽培の楽しみの一つです。


草々

2009年2月5日


ブノワ。


[リチャード三世]
[William Shakespeare (1564~1616)]
[古田新太/Furuta Arata (1965~ )]
[銀粉蝶/Ginpunchou (1952~ )]
[三田和代/Mita Kazuyo (1942~ )]
[久世星佳/Kuze Seika (1965~ )]
[Laurence Olivier (1907~1989)]
[Ian McKellen (1939~ )]

[William Shakespeare (ER) Austin, 1987]
[William Shakespeare 2000 (ER) Austin, 2000]

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by raindropsonroses | 2009-02-05 00:00 | 天井桟敷の人々。 | Comments(12)

ガラスの動物園。

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拝啓

Tさんへ。お元気ですか。先日は芝居に付き合って下さってありがとうございます。
どうでしたか「ガラスの動物園」……なかなかの出来でしたね。
「ガラスの動物園」……テネシー・ウィリアムズの代表的戯曲、
「欲望という名の電車」と並んで現代戯曲の傑作と言われています。
けれどもその割りには上演される機会が少ないように思います。
主人公ブランチのドラマチックで退廃的、壊れゆく精神を描いた「欲望という名の電車」と比較して
どちらかと言うと静謐な作り、言い方は悪いけれど地味な印象の戯曲ですからね。
戯曲の作者自身による覚え書きにもあるように、この芝居は「追憶の劇」です。
劇中の登場人物に作者や家族の分身を見る時、観客の僕等も自らを振り返り
それぞれの過去や思い出を追想する……それがこの芝居が愛される一番の理由なのでしょう。

今回の公演は文学座によるもの。
若干、オリジナルの上演の仕方に手が加えられていましたが、
詩情溢れる奥行の深い作品に仕上がっていましたね。
母親のアマンダ役の赤司まり子、娘ローラ役の松岡依都美、
息子トム役の川辺邦弘、青年紳士役の栗野史浩の絶妙のアンサンブル。
矢張り、舞台は台詞、台詞の書ける劇作家は凄いし強いです。
そして台詞をキチンと己の身から出るように租借して言える俳優も頼もしい。
映画化もされているんですよ。ポール・ニューマンが監督、
愛妻のジョアン・ウッドワードが母親のアマンダを演っています。
今度、戯曲をお貸ししますね。短いですからアッと言う間に読めるハズです。
舞台を観た後に読む戯曲も面白いものですよ。

今日の薔薇は、青年紳士役のジムに「シェークスピア」と呼ばれているトムと、
同じくジムに「ブルー・ローズ」と呼ばれているローラに因んで、
イングリッシュ・ローズの中からシェークスピアの戯曲から名付けられた「Othello」……。
これで一本の枝なんですよ。先に咲いた方が段々、紫色に退色しました。

「ブルー・ローズ」……純然たる青い薔薇ではないけれど、
これだけ紫になれば「青い薔薇」と呼んでも差し支えないでしょう(笑)
後から咲いた方が本来の色。これだけ差が綺麗に出るのも珍しいです。
姉のローラを「ブルー・ローズ」と表したテネシー・ウィリアムズ。
精神を病み、ロボトミー手術を受けざるをえなかった姉への思慕、
大事な時に立ち合えなかった悔恨の念が感じられます。
自らの分身であるトム、ある部分「欲望という名の電車」のブランチに通じる
母のアマンダ、非常に私的で詩的な芝居ですね。

「欲望という名の電車」で大当たりを取った杉村春子
アマンダを演らなかったのが不思議でなりません。
果たして上演の話があったのか、望んで果たせなかったのか、
誘いや企画があったのに自ら固辞したのか……興味は尽きないですね。
また何かいい舞台があったらお誘いしますね。
ではでは、長くなりました、今日はこの辺で……。


敬具

2007年10月24日


ブノワ。


[Tennessee Williams (1911~1983)]
[The Glass Menagerie/ガラスの動物園 (1945)]
[A Streetcar Named Desire/欲望という名の電車 (1947)]
[The Glass Menagerie/ガラスの動物園 (1987)]
[Paul Newman (1925~ )]
[Joanne Woodward (1930~ )]
[William Shakespeare (1564~1616)]
[Haruko Sgimura/杉村春子 (1906~1997)]
[Othello (ER) Austin, 1987]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

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by raindropsonroses | 2007-10-24 00:00 | 天井桟敷の人々。 | Comments(16)

薔薇に求められるもう一つの条件。

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拝啓

この時期には珍しい台風直撃となりました。Tさん、その後、如何お過ごしですか。
外は激しい雨ですが、僕は猫を膝に乗せてこの手紙を書いています。

さて、薔薇もそろそろ2番花が終わり、早いものは3番花の蕾が上がって来ました。
さすがにこれ以上は樹を疲れさせるだけですし、どうせ咲いても綺麗な花は望めません。
せっせせっせと摘蕾をしている毎日です。こうして樹に力を蓄えさせて
8月下旬の軽い剪定のあと、一気に秋の花の時期を迎える訳です。
Tさんは疑問に思っていらっしゃるようですが、秋の剪定はした方がいいと思いますよ。
春の1番花のあと、それぞれのペースになっていた伸び方を一度ここでリセット、
そうする事によって、少しは秋の花が咲く時期が揃うと言う訳です。

そうそう、夏のバルコニーで作業していて思ったことなんですが、
先日のギヨー氏の言葉にもあった通り、最近の薔薇に求められているものって、
先ず、匂いですよね。そして、花の形、色、耐病性、繰り返し咲き性なのでしょう。
僕、ここで思ったんですけど、あまり言われませんが、それに加えて
花が房になって咲くって言うことがとても高ポイント、非常に求められているのではないかと……。

特に最近のイングリッシュ・ローズ、
これらは日本では「イングリッシュ・ローズ」として括られていますが、
世界的には「モダン・シュラブ」と言う括弧で括られています。
殆どのイングリッシュ・ローズが房になって咲きますよね。
1本の枝に沢山の花を付ける事によって、より華やかな感じに見せる。
一番最初の花が終わってから、順次、脇の蕾が花開き花の時期が非常に長いです。
最近流行のフランスの薔薇、ギヨーもデルバールもメイヤンも、それぞれに房咲きが主流です。
ハイブリッド・ティーに分類されるものも殆どが房になって咲きます。
ハイブリッド・ティー=一枝に一輪だけ咲く……この括りが崩れつつあります。

同封しました何枚かの写真、どうですか、これでたった1本の枝から咲いた花なんですよ。
1本に1つの花の薔薇と比べて圧倒的に花の数が違って来ますよね。
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1枚目はここ数年で最も色鮮やかなイングリッシュ・ローズの「Summer Song」
名前が「Summer Song」なのに夏に弱いと言われていますが(笑)
兎に角、一番の特徴はその色でしょう。今までのイングリッシュ・ローズにはない色、そして芳醇な匂い。
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2枚目は今の所、最新品種の中の1本「Lichefield Angel」です。
この薔薇は典型的なティーの匂いに少しフルーツの匂いが混ざります。
多い時には5輪くらいの房咲きになりますが、写真をご覧になって分かるように、
完全に全ての蕾が開き切ります。枝振りはしっかりしていますが、
頭が重くなりますからあらかじめ支柱などを立てておくといいかもしれませんね。
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3枚目はチョッと前のイングリッシュ・ローズ「Radio Times」です。
僕は写真だけだと何種類か混同してしまう薔薇があるんですが、
中輪ながら非常に良く繰り返し咲く薔薇で、樹自体もそれほど大きくならないと思います。
花の色は、どちらかと言うと少し暖かみのあるピンク。
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4枚目は白花が少ないと言われているイングリッシュ・ローズの中から銘花「Fair Bianca」。
シェークスピアの「じゃじゃ馬ならし」からの命名ですね。
「Eliane Gillet」もそうですが、蕾のうちは真っ赤なイチゴを思わせる風情で、
花が開くと純白になります。蕾と花が1本の枝に付く様は可憐そのもの。
非常に人気がある品種で、非常に強いミルラの匂いがあります。
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5枚目の写真は、これまた最近大人気のギヨーの薔薇「Agnes Schilliger」です。
この薔薇は1番花と2番花、さらには秋の花で随分と表情が違うみたいですが、
写真の一番花は本来の姿に一番近く撮れたのではないかと思っています。
生姜、フランボワーズ、イチゴ、シナモン等、強香が売り物みたいですが、
僕が試した所それほど強い匂いではなかった……もうチョッと観察が必要です。
何れにせよ、このヒラヒラの花弁は凄いです。まるで鶏頭の花が丸く咲いたよう。
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6枚目の写真は僕が最近、注目して意識的に収集している、
約20年前くらいのイングリッシュ・ローズの中から「Symphony」。
今では殆ど育てている人がいないんじゃないでしょうか。
結構、しっかりと固めの茎に3〜5輪ほど房咲きになります。
匂いは強烈なティーの匂い、理想的で典型的なティーの匂いです。
この薔薇のいい所は、時間が経って退色しても、あまり白くならない所。
一房で黄色の美しいグラデーションが楽しめます。
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7枚目の写真は、今年迎えた中で一番遅い開花だった「Comtesse de Segur」です。
パリに旅立つギリギリに撮影する事が出来ました。
大輪が房になって咲く様は豪華絢爛、どの蕾もキチンと花開きます。
匂いも大変に素晴らしく、一言で何の匂いと言うのは不可能。
朝や昼、夕方にはそれぞれに匂いを変え僕等を楽しませてくれます。
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8枚目の写真はチョッとブームが一段落の「Rhapsody in Blue」です。
チョッと前までは世界で一番青い薔薇として随分もてはやされましたね。
青と言うよりも紫、完全な紫のグラデーションが一枝で楽しめます。
写真を見てお分かりの通り、赤紫から咲き始め最後には淡いグレー・ラベンダーに退色。
黄金色の蕊とのコントラストが大変に美しいです。
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9枚目の写真は何だとお思いになりますか?これ、咲き進んだ「Eliane Gillet」なんですよ。
丁度、満開の純白の写真しか紹介されませんが、こうして時間とともに赤みを帯びます。
深紅の苺のような蕾が純白の花へと開花し、さらにピンクに退色する……。
この薔薇も蕾が全部花開きますから一株で物凄く華麗な姿になります。

どうですか、どれも1本の枝に咲いた薔薇とは思えないでしょう。
これらがどんどん繰り返して花咲くんですから、庭は大変な事になるハズです。
そうそう、一番最初の大きな写真はギヨー作出の「Paul Bocuse」です。
ギヨーさんの古くからの親友であるポール・ボキューズの名前を冠した薔薇、
この写真で枝はたったの2本です!完全なラウンドになって開く花はそれは見事です。
どうですか、1本だけ切って花嫁のブーケで持っても何ら遜色ないと思いませんか。
ここ数年、薔薇の姿がどんどん変わって来ていますね。
一輪だけでもその部分だけ明るくなるのです、これが数輪の房咲きになったら……。
考えるだけでも素敵なことだと思いませんか。


敬具

2007年7月16日 


ブノワ。


[Summer Song (ER) Austin, 2005]
[Lichefield Angel (ER) Austin, 2006]
[Radio Times (ER) Austin, 1994]
[Fair Bianca (ER) Austin, 1983]
[Agnes Schilliger (S) Guillot, 2002]
[Symphony (ER) Austin, 1986]
[Comtesse de Segur (S) Derbard, 1994]
[Rhapsody in Blue (S) Frank R. Cowlishaw, 1999]
[Eliane Gillet (S) Guillot, 1998]
[Paul Bocuse (S) Guillot, 1997]

[William Shakespeare (1564~1616)]
[Taming of the Shrew/じゃじゃ馬ならし (1594)]

[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
[Guillot]
[Delbard]
[Meilland Richardier Meilland International]

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by raindropsonroses | 2007-07-16 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(18)

今のうちです……。

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拝啓

この前、夏至だと思ったのに早いもので7月になってしまいました。
Tさん、その後お変わりありませんか?暑いのが苦手なTさんの事です、
グロッキーなんじゃないかとチョッと心配しています。ご自愛下さいね。

さて、先日、電話で相談された件です。
Tさんは何が何でも家を出て独立したいみたいですが、僕の意見は反対です。
事情が許すかぎりご両親と一緒に住んであげればいいと思っています。
今春に卒業〜就職して独立したい気持ちは分かるけど、
可能な限りご両親と同居してあげてください。
転勤や、やむを得ない理由で別居しなければならないことも出て来ます。
世の中には、「男なのにいい年をして親と同居するなんて最低!」
事情も知らずにそう言う人もいるでしょう。まぁ、そう言う人の意見は軽く流して、
出来るかぎり一緒に住んでの親孝行をしてあげて下さい。
ある時、親孝行をしたくても出来なくなる時が来るんですから。
でも、同居しても居心地の良さに甘えてばかりではダメですよ。
入れるものはキチンと入れ、自分で出来ることはご両親に頼らないこと。
そして、甘える時は上手くするんですよ。頼み事をされればご両親だって
「仕方ないなぁ」って言いつつも喜んで力になってくれるでしょうし、
また、他の誰か、特に息子に必要とされている実感って大切だと思うんです。
年をとってからの人生に張り合いが出てくるじゃないですか。

僕は事情があって12年前に家を出ましたが、
それでも、実家からバスで20分の所に今のマンションを見つけましたし、
2ヵ月に3〜4回くらいの割合で両親と食事しています。
やっぱり会うと嬉しいんでしょうね。いつもおにぎりを結んで来てくれたり
煮物を作って持って来てくれたりトウモロコシを茹でて来てくれたり。
おにぎりは僕の好物を覚えていてくれて醤油に漬けた焼き鮭が入っています。
それからたまにお小遣いを貰うんですよ。勿論、大した額じゃありません(笑)
それも親孝行のうち、親にしてみればいつまでたっても子供は子供なんですよ。
「しょうがないなぁ」と言いつつ、それはそれで嬉しいもんなんだと思います。
気が付くとウチの両親も高齢になって来ました。
出来るかぎり一緒の時間を過ごしてあげようと思っています。

写真は、先日、母にプレゼントした薔薇の花束。
家を出る時に思いつき、慌ててバルコニーに出てカットしました。
時期を外れていますから大して綺麗に咲いた薔薇はありませんでしたし、
ある程度の茎の長さを取って切るのはなかなか難しいです。
薔薇の切り花が茎の長さで値段が決まるのが良く分かります(笑)
ちょっとバラバラですが、「Sophia Loren」「The Reeve」「Pat Austin」
「Kathryn Morley」「Prospero」「Catherine Mermet」の6種類の花束。
たったこれだけの本数ですが、なかなかいい匂いがしました。
こう言う日のために取っておいたクラフト紙とオレンジの薄紙でラッピング。
これだけ薔薇を育てているんですから、もっと花の最盛期、
もっと種類が豊富な時期にプレゼントすればいいんでしょうが、
写真を撮ったりしているとついつい忘れちゃうんですよ(笑)
母は薔薇の名前を覚える気はさらさらないみたいですが、
元々、花が好きな人ですから非常に喜んでくれました。

長くなりました。家を出る事、是非、もう一度考え直してみて下さい。
本当に家を出る必要があるかどうか。家を出る理由をもう一度考えてみて。
望まなくても出なければならない時は必ずやって来ます、
一緒に暮らしたくても叶わなくなる時が来るんですよ。
それまで親孝行の積もりで一緒に暮らしてみては如何ですか?
これは老婆心ながら僕のアドバイスです。


敬具

2006年7月7日


ブノワ。


[Sophia Loren (HT) Tantau, 1967]
[The Reeve (ER) Austin, 1979]
[Kathryn Morley (ER) Austin, 1990]
[Pat Austin (ER) Austin, 1995]
[Prospero (ER) Austin, 1982]
[Catherine Mermet (T) Guillot, 1869]
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by raindropsonroses | 2006-07-07 00:00 | 儚いもの。 | Comments(30)

綺麗は汚い、汚いは綺麗……。

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拝啓

毎日毎日梅雨らしいどんよりした天気が続きます。
それほど雨は降りませんがが一時の気休めでしょうか?
これから長い梅雨です、Bさん、その後、如何お過ごしですか?
僕は春の薔薇が咲き終わった後、今年は真面目に薔薇の手入れをしています。
雑草取り、お礼肥をあげたり植え替えをしたり害虫を駆除したり……。
やる積りになれば山のように作業はあります(笑)

さて、以前の手紙に、薔薇はいつの状態を見ても綺麗だと書きました。
同じく、濃い色の薔薇が好きな事はBさんもご存じの通りなんですが、
他の色と違って濃い色の薔薇には枯れた後の楽しみがあるんです。
今日、同封した写真はイングリッシュ・ローズの「Othello」です。
かなり前(20年前)の品種で、あまりポピュラーじゃないかもしれません。
今年お迎えし、見事に大輪の花を咲かせました。花が終わった後も、
脇芽をグングン伸ばし、2番花の蕾も膨らみつつあります。
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先日の事、綺麗に咲いた花を剪定して、僕の薔薇リスト用の写真を撮り、
花瓶に差したままスッカリ放って置いたんですが、昨日の夜遅く帰宅。
フと見ると、葉っぱはカリカリに乾燥しドライ状態、
花はそのままの姿でスッカリ紫色に変色しオレンジ色の斑点が出ていました。
もうビックリ!なんて美しいのでしょう!えっ?綺麗じゃないって?(笑)
そうっと持ち上げて匂いを嗅ぐと、既にドライの薔薇特有のすえたような匂い……。
でも、匂いはこの際どうでもよくて、この美しい姿を写真に納めなければ!
傷んだ薔薇、枯れた薔薇を撮る。それが今年のテーマです。
散らないように祈るような気持ちで早起きして撮ったのが一連の写真です。
濃いピンクの花がそのまま紫に退色、撮影されるのを待っていたかのように、
ひとしきり撮り終わるとハラハラ落ちる花弁、その朽ちた姿の美しいこと!
この楽しみは濃い薔薇だけのもの、淡い薔薇はただただ汚くなってしまいますから。

撮影中、呪文のように唱えた「マクベス」に出て来る3人の魔女の台詞、

「綺麗は汚い、汚いは綺麗……」

この場合の「汚い」は「穢い」をあてた方がピッタリだと思うんですが、
主役以外の登場人物の台詞で、これほど有名なものもないけれど、
まさに魔女が愛でる薔薇とはこのような薔薇でしょうか?
大きな鍋にトカゲの尻尾や蛇の目、ヒキガエルの舌、クモの巣などと一緒に
グツグツ煮込むのに似付かわしい薔薇でしょうか?(笑)
または、クリクリと可愛らしい姿が、水を掛けると異常繁殖するギズモ、
変身後のグレムリンの身体の模様みたいにも見えますね(笑)
撮影を終了した途端、バッサリと花弁が全部落ちてしまいました。
こういう瞬間を見られるのもまた薔薇を家で育てる楽しみの一つです。
一番最初の写真が本来の美しい「Othello」です。
どうですか、枯れたものの方が綺麗に見ない事もないでしょう?(笑)


敬具

2006年6月14日


ブノワ。


[Othello (ER) Austin, 1986]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
[William Shakespeare (1564~1616)]
[Othello/オセロ (1603)]
[Macbeth/マクベス ( 1606)]
[Gremlins/グレムリン (1984)]
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by raindropsonroses | 2006-06-14 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(18)

プラダを着た悪魔。

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前略……Bちゃんへ。

こんにちは。先日お借りした本をお返しします。
ローレン・ワイズバーガーの「プラダを着た悪魔」です。
なかなか面白かったですよ。一気に読んでしまいました。
僕は普段、この手の本はあまり読まないのだけど、
実はね、この本、映画化されるんです。
しかも、僕の大好きなメリル・ストリープ主演で!
そう言えば貸して貰った理由が分かるでしょう?(笑)
メリル・ストリープが悪魔のような女編集長を演るんです。
世界のファッション界で絶大なる実力と影響力を持ち
周りの全ての人に恐れられているミランダ・プリーストリー。
彼女の下で働くぺーぺーのアシスタント、アンドレアの物語なんですが、
随所にブランド名や実在の有名人やデザイナーの名前が散りばめられていて
読んでいると、どこからどこまでが現実か分からなくなっちゃいます(笑)
途中で放棄しちゃったみたいですが、是非、是非、読んでみて下さい。

メリル・ストリープは1980年のコメディー「ハリウッドにくちづけ」で
アカデミー賞にノミネートされました。これでチョッとおかしな事になり、
相次いでコメディーに出演。コメディーが合っていると思ちゃったんでしょうね。
「シー・デヴィル」「永遠に美しく」などなど……。
メリル・ストリープにしてもコメディーは難しかったのか……。
彼女にしては、チョッと寄り道しちゃった感じです。

大女優ソフィア・ローレンはその昔、チャップリンの遺作
「チャップリンの伯爵夫人」に出演した時にインタビューに答えて言いました。
「観客を泣かせるのは簡単よ。でも、笑わせるのは本当に難しいわ……」

「アーンドレーア、お願いした用件はどうなっているの?
言い訳は結構よ。早くコーヒー持って来て頂戴。以上、おしまい!」

メリル・ストリープがどのように悪魔のような編集長を演るのか楽しみです。
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上の薔薇はイングリッシュ・ローズの「Admired Miranda」。
決して、この本の悪魔の女編集長ミランダから名前を取った訳ではなくて、
シェークスピアの「テンペスト」の中の登場人物、
ミラノ大公で魔法使いのプロスペローの娘の名前から取られました。
強い棘は多めですが、直立性で花はいい香りがします。
上の「Prospero」は細立ちでびっしりと大小の棘が付きます。
時間とともに赤黒い花は紫に退色。繰り返し良く咲き、
とてもいい匂い。両方とも、花の形など、一昔前のイングリッシュ・ローズですね。
我家では、当然、父娘は仲良く隣に置いてあります。
僕は持っていませんが、「Miranda」(P)と言うオールドローズもありますね。


草々

2005年9月3日


ブノワ。


[プラダを着た悪魔/The Devil Wears Prada (2003)]
[Lauren Weiseberger (1977~ )

[Admired Miranda (ER) Austin, 1983]
[Prospero (ER) Austin, 1983]
[Miranda (P) Sansal, 1869]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
[William Shakespere The Complete Works/William Shakespeare (1564~1616)]

[Meryl Streep Online Simpylstreep. Com/Meryl Streep (1949~ )]
[ハリウッドにくちづけ/Postcard From The Edge (1990)]
[シーデヴィル/She Devil (1989)]
[永遠に美しく/Death Becomes Her (1992)]
[Sophia Loren Official Website/Sophia Loren (1934~ )]
[Charlie Chaplin Web Site/Charles Chaplin (1889~1977)]
[チャップリンの伯爵夫人/A Countess From Hong Kong (1967)]

★皆さんご存知の「駒場バラ園」さんが今年一杯で規模を縮小されます。
 現在、近くの新公園予定地に「駒場バラ園」さんの貴重な薔薇を移植する
 署名運動が始まっています。HPを見て趣旨に賛同された方は、
 HP右側の「最新記事」の上から二番目に、是非、コメントを書き込んで下さい。
 ヨロシクお願いいたします。
 [新・駒場バラ園を作る会]

ほっとけない 世界のまずしさ

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by raindropsonroses | 2005-09-03 00:00 | 書架の片隅。 | Comments(16)

もの言う草花。

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拝啓……Rさま。

不安定な天気が続きますがお元気ですか?
最近はスッカリご無沙汰ですね……今度、是非、食事でも……。

さて今日は、Rさんが敬愛するジョン・エヴェレット・ミレーの命日です。
普通は、ミレーと言うと、先ず殆どの人が印象派の
ジャン・フランソワ・ミレーを思い出しますが、
Rさんは、「ミレーは、ジョン・エヴェレット・ミレーのことよ!」と、
頑なに言い張りましたね(笑)勿論、代表作は「オフェーリア」。
1998年の1月から3月まで上野の東京都美術館に
「テート・ギャラリー展」の目玉作品としてやって来ました。
最初、ミレーの「オフェーリア」が東京に来ると聞いた時は
俄には信じられませんでした。だって、テート・ギャラリーの「顔」ですからね!
他に、サージャントの「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」や
小品ながらコンスタブルのなど風景画などなど……、
僕が大好きな作品が東京に来る……チョッとした驚きでした。

その後、「オフェーリア」とは、新世紀を迎える正月にロンドンで再会。
2人で一日中、日の出前の骨董市、公園、美術館……ロンドンを歩き回り、
もう一歩も足が前に出なくなるほどの疲労だったのにもかかわらず、
この素晴しい絵を目の前に、2人して口をあんぐり(笑)
暫く、全てを忘れて呆然と見入ってしまったのを思い出します。

植物好きの僕にすると、死して水面に浮かぶオフェーリアの廻りには
スミレ、ケシ、ヒナギク、イラクサ、パンジー……、
それぞれに、純潔、死、無垢、苦悩、愛の虚しさを象徴する草花が描かれていて、
細密に描かれた草花の正確さ、発狂の末に入水自殺したオフェーリアの美しさは、
同じ「オフェーリア」を描いた、ヴィクトリア朝やラファエル前派の画家達、
セヴァーン、レッドグレイヴ、フレデリック・ワッツ、ウォーターハウス……、
彼らの作品の中でも一際異彩を放っていますね。
世界中のポートレートの中でも最高峰の一枚……僕はそう思っています。

この同封の写真は、1912年作出の「オフェーリア」です。
薔薇の世界でも、シェークスピアの作品の中の登場人物の名前は
非常に好まれて使われています。この「オフェーリア」は、その後、
名だたる名花の親としても使われている非常に優秀なん花なんですよ。
春先から繰り返して何度も咲き、病気にも強く爽やかな匂いで人気があります。
ハイブリット・ティーですが、幾つかの蕾が一緒に付く房咲きになります。
僕は趣味でやっている薔薇の交配にもかなりの頻度で使っています。
どうですか、この薔薇、「オフェーリア」の面影ありますか。


敬具

2005年8月13日


ブノワ。


[Ophelia (HT) William Paul & Son. 1912]

[Ophelia/John Everette Millais (1829~1896)]
[Jean Francois Millet (1814~1875)]
[Carnation, Lily, Lily, Rose/John Singer Sargent (1856~1925)]
[John Constable (1776~1837)]
[Ophelia Weaving For Her Garlands/Richard Redgrave(1804~1888)]
[Ophelia/Joseph Severn (1793~1879)]
[Ophelia/George Frederic Watts (1817~1904)]
[Ophelia/John William Waterhouse (1849~1917)]

ほっとけない 世界のまずしさ

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by raindropsonroses | 2005-08-13 00:00 | 薔薇の名前。 | Comments(14)

拝啓……みなさまへ。

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この度、ブログを始める事になりました。
現在、東京のマンションのバルコニーで、
園芸種550本、オリジナル350本、計900本の薔薇を育てています。
それらの写真に加え、趣味で撮りためた旅の写真、
可愛がっている5匹の猫の写真などなど……。

みなさんは、綺麗な花束を貰った時、
思わず匂いを嗅いでしまった経験はありませんか?
写真を見て、文章を読んで……ちょっと未知の世界に思いを馳せる……。
そんなブログになれば……そう思っています。

このブログは、手紙、若しくは、絵葉書の体裁を取っています。
宛先は世界のどこか、受取人は架空の誰か、消印は……。
どなたでも、受け取った方は遠慮なくコメントなさって下さい。
薔薇や旅に関する質問でも何でも結構です。出来る限りの返信を致します。

それでは、気侭な便りにお付き合い下さい……。


2005年8月8日                             

ブノワ。


「匂いのいい花束」……「鹿鳴館」三島由紀夫著 より。
[Lordly Oberon (ER) Austin.1982 & Benjamin Britten (ER) Austin.2001]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]

ほっとけない 世界のまずしさ

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by raindropsonroses | 2005-08-08 00:00 | 向き向きの花束。 | Comments(16)