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匂いのいい花束。ANNEXE。

血の婚礼。

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帰宅して郵便受けを開けると親友からの大きな封筒が入っていました。
中には手書きのメッセージとともに、この秋に上演される「血の婚礼」のチラシが……。
そう、親友の小谷真一くんがレオナルド役で出演するのです。

僕等の世代は、矢張り、紙に印刷されたものを重要視します。
今は何でもインターネット上で、モニターで見る事が出来ますが、
ニュースは新聞で、小説は本で、それも、両方あるのであれば、
文庫本ではなく単行本で読みたい僕……そう、紙が好きなのです。
検索したモニターで見る公演の詳細よりもチラシの方が愛着あります。
食い入るようにチラシを眺めて……フムフム、チケットはもう押さえてあるし……。
刷りたてのインクの匂い、手書きのメッセージ。
これほど嬉しいものはありませんね。

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聖書の次に読まれていると言われている作品は数多いです。
「ドン・キホーテ」「風と共に去りぬ」「ベン・ハー」…………。
しかし、作家と言うことで言えば、圧倒的にシェークスピアではないでしょうか。
ことさら日本人はシェークスピアが好きです。
毎日、必ずどこかで戯曲が上演されていると言っても過言じゃないでしょう。
特にシェークスピアの悲劇……日本人の琴線に触れるのでしょうね。

時代とともに好まれる作家の顔ぶれも変わります。
最近ではめっきり上演が少なくなったアントン・チェーホフ。
「桜の園」「かもめ」「三人姉妹」……。
滅び行く儚い世界、それらに木の葉のように翻弄されて行く人々の姿が、
侘び、寂びを愛でる日本人の肌に合っているのでしょう。
でも、今やそんな微妙な美しさを理解出来る、愛でる人も少なくなったのか……。
なかなか上演される機会がありません。

テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」。
これは戯曲の持つ圧倒的なパワー、演劇と言う芸術の持つあらゆる美点、
役者の資質が問われる所が好まれるのでしょう。
何と言っても日本人は器用ですからね、技巧に優れたものに弱いのです。
卓越した俳優の力量を見るに相応しい作品。演技の技巧を見るには持って来い(笑)
膨大な台詞ゆえ、圧倒的な演技力で上演された時のこの作品は凄いです。

そして、これまた繰り返し上演されるフェデリコ・ガルシア・ロルカの「血の婚礼」。
この秋、新生 tpt によって10月2日(プレビュー公演)〜18日まで、
横浜の BankART Studio NYK で上演されます。

僕は応援している小谷真一くんが主役のレオナルド役で出るので、
各休みごと、それからプレビューの都合4回、観劇するつもりです。

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スペイン……アンダルシア地方……。
「血の婚礼」は、詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカが紡いだ傑作戯曲です。
血で血を洗う復讐の歴史、家族の絆、死へ、破滅へと突っ走る若者たち……。
突き放すような台詞回し、饒舌ではない分、「間」が非常に大事な戯曲。
台詞は幾らでも誤摩化しがききます。でも、恐ろしいのは「間」。
役者の人となり、経験が如実に分かってしまいます。
「血の婚礼」……恐ろしいまでに役者が丸裸にされてしまう戯曲です。
情熱の音楽、日本人が全く持ち合わせていないスペインの熱い血……。
それらを若い俳優たちがどう表現するのか?

今まで「血の婚礼」は違う役者で何度も観た事があります。
日本人にない部分への憧れ?これほどまでに上演される理由は?
若い頃は今一つ分からなかった部分も、年齢を経て人生への理解も深まり、
数年前、アンダルシアに滞在した事によって少し理解出来るようになったかな?
深夜に観たフラメンコのリズムと山間の街の空気と匂い……。
ロルカの世界、漲る熱い血を感じることが出来るかな?


写真は数年前に訪れたアンダルシアはグラナダのアルハンブラ宮殿から撮った1枚。
グラナダ市街でも最も古い地区と言われているアルバイシン。
白い壁が美しく、暫し時を忘れて見入りました。


草々

2009年9月10日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2009-09-10 00:00 | 天井桟敷の人々。