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匂いのいい花束。ANNEXE。

あたしシャンパン!

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 「あたしシャンパン!」

その女性はそう言い放つと、
片眉をヴィヴィアン・リーのように上げ僕に向かって婉然と微笑みかけた……。


先日のこと、強引に休みを取って親友(自称、天才グラフィックデザイナー)の家に出掛けました。
まぁ、休む理由はあって、親友宅でやらなければいけない事もあったのだけれど、
久し振りの約束に僕も親友もウキウキ、早く用件を済ませて、
近所のスペイン・バルに行くことで気もそぞろ(笑)
チョッとした写真撮影をしたんですが、その合間に冒頭の台詞の話題になったんです。
何でも、親友は僕からこの台詞を聞くのはかれこれ10回以上にもなると言います。
所謂「耳ダコ」って言うヤツ?(笑)まぁ、確かにそうかもしれません。


今を遡ること12年前。ユーロが導入された新年のことだったかな?
僕、丁度その年末から3週間パリに滞在したんです。今ではとても考えられませんね(苦笑)
当時はね、親しい友人が沢山パリに住んでいて、パリにい観光に行くって言うよりは、
パリに親しい友人に会いに行くって言う感じ……。
皆、殆ど、帰国してしまいましたからそれも懐かしい想い出です。
毎晩、皆で集まってレミの中華でテーブルを囲んだり、
新しい店を開拓して朝まで大酒飲んで……誰かの家に集まって様々なことを論じあったり……。
僕も若かったし、何だかそんな刹那的な生活が目新しかったりもしたんでしょうね。

パリに住む仲間の中では勿論、僕が最年長。
お気軽な旅人だし、そう、エトランジェ……お金を湯水のように使っていました。
毎回じゃないけれど、当然、僕が皆の分を支払いをすることが多かったです。
僕、お金を払うことは何とも思わないのね。皆、パリでバイトしている苦学生。
お金がある人が払えばいいんだし、ない袖は振れないけど、皆で楽しければいいじゃない?
でもね、そんな時、人の人品って出ちゃうんですよねぇ……。

僕、今でも大切な友人だと思っているYくん。彼は今、パリで就職して頑張っています。
大学の論文を仕上げて、そちらの分野で活躍したい……その気持ちも大事だけれど、
彼はフランス人の恋人と家庭を持つことを選んだ。当然、働いて生活費を稼がなければいけません。
僕ね、偉いと思うんです。夢を諦めてね……でも、勉強なんていつでも出来るじゃない?
人間、霞を喰って生きて行く訳には行かないんだから。

そのYくん、一番最初に人となりが良く出たエピソードがあります。
知り合って間もない頃、レミの中華で大酒飲んで、
(彼と彼女と彼の友人と僕の4人でワイン8本空けた……。)
ベロンベロンになって楽しく過ごした宵……当然、僕が支払いました。
その次、僕から鮨に誘ったんです。岸惠子さんが足繁く通った「勇鮨」……パリでは有名ですね。
あの日は雨だったなぁ……Yくんと彼女と僕の3人でテーブルを囲んで、
いざ、会計の段になったらYくんがカード出すのね。「今日は僕に支払わせて下さい」って。
とんでもないのね、冗談じゃないの。可成りお高い金額だったし、
貧乏学生のYくんに払わせる訳には行かないじゃないですか。
そう言う積もりで誘ったんじゃないし、気持ちだけ有り難く受け取って勿論、僕が支払いしました。
この時、思ったのね、この子はしっかりしている。人品卑しからぬいいヤツだって。

その後もそうなの。僕が奢ると分かっている時には値段が安いものしか頼まないんですよ。
僕もそれは感じるので、「こっちが美味しいんじゃない?」とか、
「ねぇ、これ食べてみようよ。」とか、上手く誘導して楽しくやりましたけど、
一事が万事、そう言うヤツでした。今、思うと、ご両親が凄く上品な方々なんですね。
一流の画廊経営でね……親のそう言う姿を見て真っ直ぐ育ったのでしょう。

反対に、いつも金魚のフンみたいにくっ付いて来るNは狡賢かった……。
「会計どうします?Yくんが払うなら僕も払いますけど……。」
それ、金主の僕がいる前で言う台詞じゃないんじゃない?(苦笑)
コイツには2度と奢らないってその時、決心しましたっけ(笑)
その前に、もうとっくに友達、いやいや、知り合いやめましたけど。



さて、ここで冒頭の台詞になる訳です(笑)
まぁ、世の中には色々なヤツがいる訳で、人品卑しい連中もゴマンといます。
レストランでテーブルを囲んで、先ず、僕が「そうね……初めにビール貰おうかな?」と言うと、
皆も相槌を打って「僕もビール!私もビール!」になる訳です。
皆、僕が会計をすることを暗黙の内に知っているから。
ここで件の彼女が声高に宣言しました。

 「あたしシャンパン!」

皆、目が点になっていました(苦笑)だったらオマエが払えば?ですよね。
それとなく聞くと、生まれは裕福な家庭らしいです。留学して女一人で頑張っているそう。
色々と大変なこともあると聞きました。意地悪されて橋の袂で1人涙に暮れたとかとかね。
でもね、所謂、世渡り上手?まぁ、僕に言わせれば、上手く渡っている積もりでも、
手口や手練手管は総て丸見えお見通しなんですけど……。



良く言われます……「薔薇をやっている人は皆、お上品でいいですね!」
とんでもない!薔薇をやっている人間でイヤな奴だっています(笑)
優雅に薔薇を育てている風に見えて、とてもお上品とは言えない人もいます。
植物を育てているからって、皆、心優しい訳ではないし、
人を利用することに長けた狡賢い人もいます。
親切ふうを装って、実際は自分の利益最優先?お為ごかしの塊みたいな人もいます。
綺麗な花を売っているからって、花屋の皆が花が好きとは限らないじゃないですか。
お金持ちだからってお上品とは限らない……ですよね?



その日、親友とはお腹を抱えて笑いました。
僕、そんなに恨みがましく思ってはいないんですけどね……。

 「あたしシャンパン!」

この台詞は強烈でした。だったら自分で払えば?(笑)
第一、僕に小娘の媚で迫ってもダメじゃないですか。
小娘……大嫌いなんだからさ(爆)特に群れでもされたら一大事!
まぁ、異国でそうやって生き抜いて来たんでしょう。
そのやり方について兎や角言うつもりはありません。その人が目的を達成するための方法だから。
一夜の宿に困ることだってあったと聞きます。うら若き娘が男の所にタダで泊めて貰う……。
当然、そう言うことですよねぇ。少なくとも男はその気になる。
皆さんご存知の通り、ここは美しいことに関するブログなので、そこから先は書きません。
でも、僕はそれを一宿一飯の恩義と呼んでいますけど(笑)



さて、人品云々、お上品あれこれはいいけれど、ではオマエはどうなの?
と、問われると、甚だ、片腹痛い部分もありますが、
何せ、僕、生まれは共働きのごくごく普通の家庭だし、地位も名誉もお金もない(笑)
お育ちもここまで大きくなってしまった今となっては三つ子の魂どうにもならないし……。
今からお上品ぶってもメッキ剥がれちゃうし、取り澄ましても化けの皮剥がれちゃう……。
綺麗に取り繕ったって何れは繕いも解けちゃう。
まぁ、メッキは剥がれるもの、化けの皮も剥がれるものと相場は決まっているんですが(笑)
精々、人さまに後ろ指を指されないようにコツコツ真面目に、
清く正しく美しく……そう思います。

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今日の写真はフランスの地方都市、トロワの道具の博物館で撮った1枚。
ここ、一旦、入ったら2度と出て来れません……それぐらい充実の収蔵品を誇ります。
ディスプレイも抜群で、こんな田舎町って言ったら凄く失礼だけど、
素晴らしい感性は東京に持って来ても決して恥ずかしくないくらいでした。
これ、ファイン・シャンパーニュ……熱く熱して木箱にジュゥ〜……なんでしょうね。

 「あたしシャンパン!」

今度そんなこと言ったらこれでジュゥ〜です(笑)


草々

2012年7月27日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2012-07-27 00:00 | 向き向きの花束。