匂いのいい花束。ANNEXE。

言葉よりも映像よりも雄弁な音楽……ピアノ・レッスン。

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拝啓

段々春らしくなって来ましたね。Fさん、その後如何お過ごしですか。
東京は夕方から雨、一雨毎に暖かくなるようですね。
折角、午前中、薔薇に水を液肥をあげたのに……文句は止めましょう(笑)

さて、お尋ねは、僕が好きな映画のサントラ盤を知りたいとの事でしたが、
僕が特に好きなのは、ジェリー・ゴールドスミスの「風とライオン」と
今日が誕生日のマイケル・ナイマンの「ピアノ・レッスン」ですかね……。
「風とライオン」はジェリー・ゴールドスミスが一番脂が乗っていた頃の渾身の作。
悠久の大地に戦う男達のロマンと、敵味方、相互の尊敬を素晴しいメロディーと
オーケストレーションの醍醐味で表現。今、聴いても素晴しいの一言。
「ピアノ・レッスン」は衝撃的でしたね。残念ながら、
アカデミー賞のオリジナル音楽賞は受賞出来ませんでしたが、
このサウンド・トラック盤は、映画から一人歩きし、それ一枚を聴く事によって
19世紀のニュージーランドの情景が見事に脳裏に甦って来ます。
6歳の時に自ら喋る事を止めた主人公エイダ(ホリー・ハンター)と、
写真のみで結婚を決心した朴訥な男スチュアート(サム・ニール)、
子供の心の奥底に秘めた残酷と無心の恐さ、フローラ(アンナ・パキン)。
映画の感想はまた今度ゆっくりと。アレンジを変えて繰り返される幾つかのテーマ曲
何度聴いても飽きるどころか、新しい発見があるんです。
マイケル・ナイマンが用意したテーマ曲をいとも簡単に弾きこなし
演奏後「こんな簡単なのでいいの?」と作曲家を振りかえったホリー・ハンター。
慌てたマイケル・ナイマンがさらに難しいものを用意したエピソードは有名ですね。
映画の中でも殆どのシーンを分で弾きこなしたそう。
もし彼女がピアノの名手でなく、初見で弾きこなさなかったら
このサウンド・トラック盤は生まれていなかったかもしれませんね(笑)
このサウンド・トラック盤は全世界で300万枚以上売れたそうで、
後日、マイケル・ナイマン本人によって、4楽章からなる
「ピアノ協奏曲」に編曲されました。ピアノ独奏はキャスリン・ストット。
マイケル・ナイマンが日本で知られるようになったのは、何と言っても
ピーター・グリナウェイの「英国式庭園殺人事件」からでしょうか。
最近ではスッカリ映画音楽の大家として有名で、
元々は現代クラッシックの作曲家と言う事を忘れてしまいそう。
この頃ではコンスタントに映画の仕事をするようになりましたが、
当時は、何て変わった曲を書く人だろうと思ったものです。
そうそう、もしかしたら、あの名作「めぐりあう時間たち」の音楽を
マイケル・ナイマンが手掛けていたかもしれないそうです。

今日の写真は、14年くらい前に購入し僕が大事にしている写真。
映画公開当時、今は無くなってしまった、新宿の、とあるギャラリーで
「ピアノ・レッスン」の写真展がありました。
これは、映画のスチールの仕事をしたオーストラリアのカメラマンで、
ファッション写真などで活躍していたグラント・マシューズの作品を集めたもので、
モノクロばかりでしたが、波打ち際に打ち上げられたピアノの写真や
出演者のポートレートで構成された個展は素晴しいものがありました。
僕はこの写真が気に入ったけれど迷って帰宅、矢張り、どうしても欲しかったので
電話で聞いてみました。エディション50枚の内、個展に来ていたのはNo.5。
僕が頼んだ時にはNo.42まで売れていてギリギリ最後の何枚だったそうです。
一ヶ月待ち、プリントされて一度、空輸されて来ましたが、扱いが悪く
なんと搬送中にプリントの真ん中に大きな穴が開いてしまい、
再度、プリントし直し空輸して貰った一枚です。
額縁は、ありきたりな物ではなく、絶対に流木を使って作りたいと思っていました。
ある夏の午後、神奈川県の国府津の海岸で日光浴をしていると、
僕の頭の上1メートルくらいの所に緑色の流木が流れ着いているではありませんか。
多分、板塀かなにかに使ったものらしく、全長1.5メートルくらい、
額縁に加工するには短か過ぎましたが、当時、懇意にしていた額縁屋に持ち込んで、
厚みが4センチあったものを半分の薄さの2センチにスライスして貰い、
倍の3メートルにして額縁に加工して貰ったのがこの額縁です。

「ピアノ・レッスン」のサントラ盤を聴き、この写真を眺めていると
映画の中に描かれていた19世紀のニュージーランドの空気の匂い、波の音、
森の緑、荒れ狂う海、汗ばむ男女の肌、遠くを見詰める少女の冷たい瞳……、
様々なものを思い出してしまいます。傑作サウンド・トラックですね。


敬具

2006年3月23日


ブノワ。


[Michael Nyman (1944~ )]
[The Piano/ピアノ・レッスン (1993)]
[Holly Hunter (1958~ )]
[Sam Niell (1947~ )]
[Anna Paquin (1982~ )]
[The Piano Concerto/ピアノ協奏曲 (1993)]
[Kathryn Stott (1958~ )]
[Peter Greenaway (1942~ )]
[The Draughtsman's Contract/英国式庭園殺人事件 (1982)]
[Grant Matthews ()]
[The Wind and the Lion/風とライオン (1975)]
[Jerry Goldsmith (1929~2004)]
[めぐりあう時間たち/ The Hours (2002)]
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by raindropsonroses | 2006-03-23 00:00 | Sound of music。