匂いのいい花束。ANNEXE。

イングリッシュ・ローズの魅力と功績。

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拝啓

Mさま、その後お変わりありませんか。
梅雨も明け、暑いけれど夏らしい天気が続いています。
夏が苦手なMさんの事、可成りグロッキーなのでは?(笑)
しかし、梅雨明けと同時に秋の気配なのでしょうか、
我家のバルコニーにはトンボが乱舞しています……。

さて、Mさんはそろそろ薔薇の株を一休めしている事と思います。
思い返せば今年は例年に増して花の数が多かったですね。
この暑い時期、いつもはパッタリと途絶える薔薇も、
少し小さめとは言え、美しい花を沢山付け続けています。
中でも、成績がいいのはディヴィド・オースチン作出のイングリッシュ・ローズ。
それも近年に作出された物の成績が抜群にいいようです。

たまに真面目に考えちゃう事があるんですが、
もしも、もしもですよ、この世にイングリッシュ・ローズが存在しなかったら
薔薇の世界はどうなっていたでしょう。Mさんはどうなっていたと思いますか?
多分、ここまで薔薇のブームにはならなかったでしょうし、
僕自身もここまで薔薇に熱中していたかは自信がありません。
最近ではオールド・ローズの魅力が再認識されましたが、
それもイングリッシュ・ローズが存在してこその事ではないでしょうか。
世界的にはモダン・シュラブに分類されるイングリッシュ・ローズは、
花の性質的にはオールド・ローズとモダン・ローズの中間に位置するのでしょう。
元々、イングリッシュ・ローズとは、オールド・ローズの花の形と匂いに、
モダン・ローズの繰り返し咲き性と多彩な花色を取り入れようと作られた薔薇です。
一番の功績は、その新しい薔薇の一群に黄色い花を沢山作出した事。
これらの花の形で黄色いオールド・ローズは殆どありませんからね。
それに加え、その黄色い花のシリーズが素晴らしいと来ています。
他の色の薔薇に混ざり、庭や薔薇園、庭園にもたらす効果は絶大です。

ウチにもイングリッシュ・ローズの黄色が数種類あります。
「Jude the Obscure」「Charlotte」「Golden Celebration」
「The Pilgrim」「Charles Darwin」「Graham Thomas」
「Mary Webb」「Pegasus」「St-Alban」「Jayne Austin」……。
ざっと数えただけでこれだけあります。どの花も繰り返し咲き性に優れ強烈な匂い。
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先ず1番最初の写真、僕が驚いたのは「Jude the Obscure」の匂い。
蜂蜜に砂糖とレモンを漬けたような素晴らしくも強烈な匂いは、
僕が今まで経験した薔薇の匂いの中でも最高の匂いの一つです。
クリームのように滑らかでしっかりとした花弁質、最後まで決して反り返る事無く
綺麗にカップ咲きのまま終わります。樹勢も旺盛そのもの。
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2番目の写真は、今年、遅めの春にお迎えした「Charlotte」。
少し心配しましたが、見事に沢山の花を付けて楽しませてくれました。
2番花も沢山花をつけました。その数も半端じゃありません。
花の形で言えば、少し前の典型的なイングリッシュ・ローズの形。
だからと言って、それが少しもネックにならないほど愛らしい薔薇です。
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3番目の写真は、ウチお迎えして相当経つ「Golden Celebration」。
この卵黄色!豊かに波打つ花弁はタップリと中心部を包み込むよう。
そして、全ての薔薇好きの期待を決して裏切らない強烈な匂い。
紅茶を思わせる強烈な匂いがやがては白ワインを思わせる芳醇な匂いに変化。
黄色のイングリッシュ・ローズの一つのピークをなす薔薇ですね。
この薔薇の後ろに、最近の素晴しいイングリッシュ・ローズが繋がっています。
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4番目の写真は、日本橋三越屋上の「チェルシー・ガーデン」で購入。
ツルとしても扱える「The Pilgrim」です。屋上庭園に2本植えてあったんですが
他の品種も植えたいと言う理由で掘り上げられた物を譲って貰いました。
そんな訳で、最初から非常に大きな株で、花付きのいい年には
花の重さで枝が大きく枝垂れるほどビッシリと花が付きます。
匂いは強烈な紅茶(ティー)の匂い。花は開ききるとフラットになります。
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5番目の薔薇は、新しい時代のイングリッシュ・ローズを象徴する
「Charles Darwin」。一番の特徴はこの色でしょうか。
少しくすんだグレーがかったマスタード・イエローは唯一無二。
イングリッシュ・ローズに限らず、他の種類の薔薇にも類を見ません。
最後まで絶対にカップの形が崩れないのも非常に優れた点です。
匂いは強烈、紅茶、それも良質のダージリンの茶葉を思わせる匂い。
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6番目の写真は銘花中の銘花、「Graham Thomas」です。
ウチはそれほど大きくないんですが、かなり旺盛な伸長力を持つ薔薇。
花弁数は現在のイングリッシュ・ローズからするとやや少なめですが、
何と言っても、銘花「Mary Rose」と共に
現在のイングリッシュ・ローズの人気を決定付けた薔薇、
紅茶(ティー)の匂いも清々しい圧倒的な人気を誇る一本です。
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7番目の写真は、探しに探した「Mary Webb」。前に買った薔薇の本、
アメリカで出版された「100 English Roses for The American Garden」、
この本で見て以来一目惚れ。注文後、長年待って手に入れました。
かの、 ターシャ・テューダーの庭にも植えられている由緒正しき薔薇
赤味の少ない黄色はスグに退色してオフホワイトになります。
幹には殆ど棘がなく、真っ直ぐ直立型の育てやすい品種。
匂いはフルーツ……少しレモンがかった紅茶(ティー)の匂いがします。
既にカタログからは消え、知る人も少ないですが、
僕が最も好きなイングリッシュ・ローズの中の一本です。
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8番目の写真は、最近ようやく良さが分かって来た「Pegasus」。
デヴィッド・オースチンの苗に付いているタグの写真とは全然違います。
花色がもう少しアプリコット・イエローになり、葉が非常に明るめ。
匂いはそれほど強くないけれど心地よく、枝には殆ど棘がありません。
病気にとても強く育てやすい品種。ただ、春先以降全く伸びないのはなぜ?(笑)
これも既にカタログに載る事は少なくなって来ました。
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9番目の写真は、イングリッシュ・ローズの中でも最も最近の部類の黄色、
「St-Alban」です。申訳ないけれど、最も納得が行かない薔薇の一本。
どのカタログの写真を見ても、ウチの「St-Alban」とは全く違います。
先ず、花形と色、どちらもどの説明書きとも全く違います(笑)
カタログの写真が間違っているのではないかと思うくらいの差、
咲いた薔薇を見て、ネームプレートを確認しないと種類が分からないほど。
もしかして違う苗かも……でも、他に該当する薔薇はないのです。
匂いは中くらいの紅茶(ティー)の匂い。この花色にピッタリの匂い。
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10番目の写真は、既に薔薇の殿堂入りの感がある「Jayne Austin」
今日の手紙の1番最初の花の中心のアップに見られるように、
しっかりとしたカップに中に刻み込むような小さな花弁がギッシリ詰まリ、
中心には必ずと言っていいほどボタン・アイが覗きます。
花の外側が白っぽくなり、中心は目も醒めんばかりのアプリコット色。
樹形は直立性、非常に強健で育てやすく、強烈な紅茶(ティー)の匂い。
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11番目の写真は、オマケの一枚。
黄色ではありませんが、カッパー(銅色)が美しい「Pat Austin」。
この「Pat Austin」が作出された時にディヴィッド・オースチンが言った言葉、
「新しいイングリッシュ・ローズの時代の始まりの色」。
その新しい時代の薔薇の子孫がここに来て数々の素晴らしい成果を出して来ました。
これは僕の勝手な想像なんですが、この薔薇の血を引いた新種、
今年秋に日本で発売されるシリーズの「Lady Emma Hamilton」と
「Summer Song」、さらに、来年、日本発売の素晴らしくも
夢のような薔薇の数々に何らかの影響を与えているハズです。
100年200年の長い単位で考える時、イングリッシュ・ローズが
薔薇の歴史に与えた影響は計り知れない物があります。
さらに進化していくイングリッシュ・ローズから目が離せませんね。


敬具

2006年8月5日


ブノワ。


[Jude the Obscure (ER) Austin, 1995]
[Charlotte (ER) Austin, 1993]
[Golden Celebration (ER) Austin, 1992]
[The Pilgrim (ER) Austin, 1991]
[Charles Darwin (ER) Austin, 2003]
[Graham Thomas (ER) Austin, 1983]
[Mary Webb (ER) Austin, 1984]
[Pegasus (ER) Austin, 1995]
[St-Alban (ER) Austin, 2003]
[Jayne Austin (ER) Austin, 1990]
[Pat Austin (ER) Austin, 1995]
[Lady Emma Hamilton (ER) Austin, 2005]
[Summer Song (ER) Austin, 2005]
[David Austin Roses/David Austin (1926~ )]
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by raindropsonroses | 2006-08-05 00:00 | 薔薇の名前。