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匂いのいい花束。ANNEXE。

今、何をすべきか……Lions for Lambs。

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  2004年9月11日早朝、マンハッタンの2つの超高層ビルが姿を消した……。

ビフォア&アフター……偶然にスイッチを入れたテレビに釘付けとなり、
朝の8時まで続けて目にした恐ろしい光景……この日以来、世界は全く変わってしまいました……。
粉塵が舞い瓦礫の山と化した街角で、インタビューに答えたビジネスマンが、

 「なぜ、我々アメリカ人がここまで嫌われるのかもう一度、考えてみる必要がある……。」

そう答えていたのが印象的でした。
恐ろしいほどに冷静に事態を分析する……彼は慄然としていたのだ。
あれから世界の様相は一変し、実際に被害にあった人々をはじめ、
我々、日本人の生活にも様々な影響がでています。

メリル・ストリープ演じるジャーナリスト、ベテランで良心的なジャニーン・ロスは言う、

 「我々アメリカが今までに徹底的に嫌われたことが5回ある……。」と。

そのことを踏まえてこの作品を観る時、様々な思いが胸に去来します。

ある秘密作戦を計画、それを利用して一気に大統領選の足掛かりにしたい若手上院議員と
スクープを餌に利用されようとしているベテラン・ジャーナリスト。
教え子2人を前線に送り出し、忸怩たる思いで教鞭をとる大学教授は
急に学業に身が入らなくなった学生に将来の道を諭す……。
アフガニスタンの最前線で「参加すること」をモットウに従軍した大学生2人が遭遇する悲劇、
それを操る上院議員、上官……「Lion for Lumbs」何れが羊で何れがライオンか……。
狐とタヌキの化かし合い……どちらが賢く、どちらが愚かなのか……。


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拝啓

楽しみにしていた桜も終わり、アッと言う間にゴールデン・ウィークですね。
連休が終わるといよいよ本格的な薔薇のシーズンの到来です。
MFさん、その後、お元気にしていらっしゃいますか。
そちらの気候は日本とは違いますからね……春の訪れ方も違うのでしょうね。
さて、僕は十年一日のごとき毎日、相変わらず進歩ゼロですが、
バルコニーの薔薇が夥しい数の蕾を付けていて開花間近……チョッと興奮状態です(笑)
この薔薇の満開のために一年を通して様々な作業に精を出している訳ですからね。
待ち遠しいとはこのことです。

さて、待ち遠しいと言えば、待ちに待った「大いなる陰謀」の初日に行って来ました。
大好きなメリル・ストリープと「愛と哀しみの果て」以来
23年ぶりの共演になるロバート・レッドフォード、そして、何かと話題のトム・クルーズが出演。
最近は日米同時公開なんて当たり前、下手をすると日本の方が公開が早かったりもするのですが、
この「大いなる陰謀」は日本の方が随分と遅い公開でした。
もう待ち遠しかったこと!しかも、この陳腐なタイトル!(笑)
レッドフォードの「大いなる勇者」と「大統領の陰謀」を足して2で割ったのでしょうか?(笑)

大スター3人の共演と言っても、実際にはメリル・ストリープとトム・クルーズが絡む以外は
レッドフォードはまるっきり別、つまり、レッドフォード演じる大学教授の教授室と、
メリル・ストリープがトム・クルーズ扮する上院議員の執務室で、
そして、マイケル・ペーニャ扮する全線部隊の3つのシーンが、ほぼ同時進行で展開して行きますね。
なかなか凝った作りになっていますが、映画ファンとしては、
メリル・ストリープとロバート・レッドフォードの絡みがあって欲しかったですよね。
出来ればラブ・ストーリーで……そんな気もします。
内容についてはMFさんもご覧になっていますから詳しく書きませんが、
僕はあれこれと関係のないことまで考えてしまいました。

 世界の警察を自認するアメリカ……。

確かにどこにでも首を突っ込み己の正しさと秩序を他の国に押しつける様は目に余る時があります。
学校で習ったモンロー主義って何でしたっけ……。
常に正義と自由と言う言葉を振りかざし、強引で傲慢、我儘勝手な外交のやり口を嫌う人も多いです。
「悪の枢軸」なんて言う言葉が流行ったのもついこの前のことですね……。
でも、果たしてアメリカだけでしょうか。どの国も自国の利益最優先は変わらない訳だし、
国を纏め強いリーダーシップを取るためには仮想敵国を作り国民を纏めるのが常套手段です。
映画のヒーローものもそう。悪役が手強く憎々しげであればあるほど正義のヒーローは輝くと言う訳。
人に悪のレッテルを貼れば自分は善になれると言う寸法です。
溺れる者は稿をも掴む、隣に浮かんでいる相手の頭を押さえ付ければ、
自分が水面から浮かび上がるのと同じ原理です。
なにもアメリカだけではない、そんなことはどの国もやっていること。
アジアの大陸の頑なな国々と大差ない。どの国も多かれ少なかれやっていること……。

僕が20才の頃、漠然とですけれど、
何が何でもニューヨークに住みたくてあれこれ奔走していたものです。
その情熱はいつさか醒め、今では全く興味のない国になってしまったのは何故でしょう……。
物心が付いた頃から映画等を通じて馴れ親しみ憧れたアメリカの文化。
パワーとエネルギー溢れる国の有り様は魅力的だけれど、
どこか自分の肌に合わないと感じたのでしょうか……。
トム・クルーズ演じるあまりにも己を疑わず自信満々の上院議員を見ていると、
大いなる疑問と嫌悪感を感じ、フと、若かりし頃のことに思いを馳せ、
朧げながらアメリカが僕の中から消えていった答えが見えたような気がしました。

結局、スクープを棒に振る方を選んだジャニーン。
彼女の選択にアメリカの、そして、人としての良心を見、
また、教授に諭され未来に向かう扉を見付けたトッドに
アメリカの明るい未来を見るのは安易だし簡単すぎる解釈だけれど、
僕はそこにレッドフォードが長年掛けて描いて来た作家としての良心と真面目な姿勢を感じました。
決して新しくない言い古された考えも、誰かが声に出して言わなければいけないし、
レッドフォードのような人が声に出して言うからこそ価値があるようにも思うのです。
監督デヴュー作品の「普通の人々」からしてそうですもんね。
奇をてらわずに、レッドフォードは常に普通のことを丁寧に描いてきた監督ですからね。
今の時期だからこそ一見の価値はあると見ました。

写真は去年の3月のニューヨークで撮りました。
到着したその晩、子供の頃から夢にまでみたエンパイヤ・ステート・ビルディングは
グリーンの照明で僕を迎えてくれました。手前のビルに星条旗がはためき……。
初めてのニューヨークで思ったのは、アメリカってそこら中に星条旗が掲げられていますね。
これほど国旗を飾る国も珍しいのではないでしょうか。
愛国心の表れ?誰かその精神構造を分析した人いるのでしょうか。
確かにデザインもいいし格好いいけれど、恐ろしいくらいに雑多な人種が集まるアメリカです、
こうして国旗を掲揚することで一つの国として纏まるように気持ちを鼓舞しているのか……。
初ニューヨークの寒空でそんな風に思えて仕方ありませんでした。

これからメリル・ストリープ主演の作品が目白押しです。本当に楽しみ!
段々、暖かくなって来ました。素晴らしい春がMFさんにも訪れますように。


敬具

2008年5月3日


ブノワ。


[Lions for Lambs/大いなる陰謀 (2007)]
[Robert Redford (1936~ )]
[Meryl Streep Online/Meryl Streep (1949~ )]
[Out of Africa/愛と哀しみの果て (1985)]
[All the President's Men /大統領の陰謀 (1976)]
[Jeremiah Johnson /大いなる勇者(1972)]
[Ordinary People/普通の人々 (1980)]
[Tom Cruise (1962~ )]
[Michael Penya (1976~ )]

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by raindropsonroses | 2008-05-03 00:00 | 映画館へ行こう。